スプラッター

ゴハリは支払いの多さに戦々恐々する毎日だったが

今日は真の意味で血の気が引いた。


「おぇえええ!!!」


道端で嘔吐するゴハリ。

壁には皮が剥がされた女の死体が5体張り付けられていた。


「ご、 ごごごごごごごゴハリさん!!」


手下達も動揺している。

今までこんな猟奇殺人なんて起きた事は無かったのだ。


「・・・・・これは酷いですね」


デリシャスが護衛の沙羅双樹と共にやって来た。


「お、 おい関係者以外立ち入り禁止」

「この街で起こった事件が私に関係が無いと?

そもそもこれは一大事件ですよ」

「・・・・・確かに猟奇殺人なんて大事件だ、 だが」

「違う」


沙羅双樹が割って入る。


「どうも、 沙羅双樹沙羅と沙羅の密約です

この死体はただの猟奇殺人ではない」

「猟奇殺人の時点でただ事ではないと思うが・・・」

「そうじゃないですよ、 この死体見て下さい」

「見たくない」

「見なさい、 この死体は皮が無い事を除けば一切の傷が無い」

「皮が無い時点で大怪我だよ!!」

「そうじゃない・・・あー・・・」


頭を抱える沙羅双樹。


「要するにこういう事か? リンゴの皮むきで

皮むきが下手な奴はリンゴの身ごとむいてしまい

リンゴに傷が着く、 そしてこの人間の身には傷が無い

と言う事は人間の皮むきが得意な奴がやった、 と言う事か」

「その通り」


デリシャスの解説に指を鳴らして答える沙羅双樹。


「・・・・・人間の皮むきが得意な奴って何!?」


当然ながら絶叫するゴハリ。


「人間の皮むきが得意な殺人鬼と言う事だろう」

「想像したくもねぇー」

「いや、 想像して貰おう、 人間の皮をむこうなんて事を考える奴は

どんな奴だ?」

「・・・・・頭がイカレている?」


デリシャスの問いに答えるゴハリ。


「変質者だ」

「随分と程度が下がったなぁ!!」

「こんな可笑しい殺し方をする奴は変質者に違いない!!」

「気が触れているが程度が違うだろうが!!

殺人鬼と変質者は違うだろ!!」

「いやゴハリさん、 違うぞ、 殺人鬼では無く猟奇殺人鬼

こんな殺し方をする奴はおかしい

自制が効かないと言う時点で変質者だ」

「・・・まぁ子供の前で【検閲済み】出す奴なんてそうだな」


ジト目になるデリシャスと沙羅双樹。


「・・・そして人の皮むきを熟練する程やっている奴が

今まで人を殺していない訳がない・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・何が言いたい?」


恐らく答えを分かっていてデリシャスに尋ねているゴハリ。


「分かっているでしょう、 最近来たよそ者の仕業ですよ」

顔の無い使用人フェイスレスを疑っているのか?」

「可能性としてはあるでしょう」

「偏見に満ちた意見ですね」

「「「!!?」」」


現れたのは顔の無い使用人フェイスレス【金の淵】支部長と

副支部長のライム。


「よそ者だからと警戒されるのは心外です」

「いやいやどの街でも警戒されるでしょう

貴方達には信頼が無い」

「それは心外ですね」

「心外ですね、 じゃなくて信頼出来ないんですよ

貴方達には積み重ねが無い、 例えば開業20年の医者と

3日の医者なら前者の方が信頼出来ますよね?

唐突にやって来て信頼しろ、 と言うのは普通に考えて無理です」

「ますます心外、 とは言え私にも考えが有ります」

「考え? 何時もの騒いで解決するって事ですか?」

「いやいや、 この被害者達を調べましょう

顔の無い使用人フェイスレスには入団時に健康診断を受けて貰います

その中には歯型もあります」

「この死体の歯型も調べよう、 と?」

「その通りです、 ゴハリさん、 出来ますよね」


ゴハリを見る支部長。


「あ、 あぁ勿論だとも!!」

「それは良かった、 ではこれで失礼します」


ライムと共に帰る支部長。


――――――――――――――――――――――――――――――


「あんなんで良いんですか? もっと牽制しても」


支部への帰路でライムが支部長に愚痴る。


「構いませんよ、 今はあれで良いんです」

「しかし」

「良いですって・・・ん?」


向こう側から荷物を抱えた二人のカップルが歩いて来た。


「アーケアスさん、 今日は如何します?」

「タンが手に入りましたしタンシチューにしよう」

「あー、 良いかもですねー」


和気あいあいと話しながらカップルと擦れ違う支部長とライム。


「全くカップルは本当に嫌ね、 人の迷惑考えなさいよ」

「・・・・・」


ライムは愚痴り支部長は黙っていた。


「如何しました?」

「・・・・・さっきすれ違ったカップルに見張りを付けなさい」

「え、 何故?」

「いや、 良いです」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


支部長は支部に帰ると自分の信頼する部下達を集めた。


司祭殿・・・、 何の御用ですかな?」

「我々の出番はまだ先では?」

「少々気になった者が居る、 監視をして下さい」

「監視、 ですか」

「殺しておきましょう」

「殺せなかった場合に足が付く恐れがある」

「慎重ですね」

「えぇ、 成功すればこの街を落とせる・・・・・・・

慎重になって損はない」

「分かりました、 では私と神父レチエルが見張りを行います」

「頼みましたよ」

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