戦争の準備は密かに行われ戦争は急に始まる

トリニティア宮殿。

宮廷魔法使い会議室【幸兆の間】。

普段は【フォーチュン家】の物しか立ち入れない場所だが

今日は【始まりの12分家】の家長全員が集められている。


【始まりの12分家】は【右道】設立時に賛同した12の家であり

【右道】分家の中でも高い権力を持つ。

とは言え、 現在6分家が取り潰しになっており

現在6つしか存在しない。


「と、 言う訳だ」

「「「「・・・・・」」」」


【フォーチュン家】分家総括、 当主兄弟四男ナイ・フォーチュンの説明に

【始まりの12分家】の家長全員は黙るしか無かった。


「・・・・・マジですか?」


【フォビドォン家】家長、 コンパス・フォビドォンは震えながら尋ねた。


「黙っていて申し訳無いと思っている、 しかしながら

最早既に事態は一刻を争うんだ

計測により魔王側の魔力臨界点は近い・・・・・・・・

故に・・魔王は殺さなきゃならん」

「別に良いんじゃないですか」


【オードリー家】家長、 アヴェニュー・オードリーが同調した。


「オードリー殿、 正気ですかな?

情報共有が遅すぎるのではないのですかな?

これは我々に対する裏切りではないのですかな?」


【スワン家】家長、 タバコ・スワンがパイプを曇らせながら言う。


「い、 いや、 裏切りではないでしょう

御屋形様が我々を裏切るなんてそんな・・・」


【シャーク家】家長、 オクトパス・シャークがおどおどしながら言った。


「別に言わなくても問題無いだろう」


分家筆頭【ファウンテン家】家長、 チョコレート・ファウンテンは

ガジガジと板をかじりながら言った。


「ファウンテン殿、 正気で「はい!! じゃあ何が問題なのか言って下さい!!」

我々を信頼していないと捉えられても可笑しく「信頼していても

言う必要のない事は言う必要が無いだろう

じゃあ君に言ったら問題は解決するのか?」・・・・・

解決はしないが相談は出来る「それなら問題は無い相談はして貰った」

は?「私が相談を受けて話さない、 と決めたんだ、 何も問題は無い」


ざわつく分家達。


「ファウンテン殿、 貴方知っていたのですか? この事を・・・・

「そりゃあ私は分家筆頭だからな、 君達よりも立場は上だから

相談を受ける事は往々にしてあるよ

だがしかし別に言わなくても良いだろうとなった」

「何故そう思ったのですか?」

「そうだ!! 此方にも準備が!!」

準備・・? 何だ、 準備してなかったのかよ」


チョコレートが齧っていた板から口を離した。


「当然でしょう!! だって聞いてません「じゃあお前何で

【右道】の分家継いだんだよ、 戦争するのが俺達の仕事だろうが」


チョコレートは淡々と述べながらオクトパスに詰め寄った。


「戦争するのが仕事って・・・そんな事「【右道】分家は

有事の際に国家に協力するべし、 これは一般常識の筈だが?

有事には当然戦争も含まれる、 まさかこの条項を忘れたとは言うまいな?」

「だからと言って唐突過「唐突じゃない戦争なんて有る訳無いだろうが

位置についてよーいドンで始まる戦争なんて有る訳が無い」

「しかしこちらにも」


チョコレートは板を思い切りオクトパスにぶん投げて目に命中させる。


「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!?」

「今まで特権を享受しておいてなんだその言い草は!!

そんな認識なら魔法使いなんか辞めてしまえ!!」

「そんな言い方は!!」

「ストップ、 そこまで」


口論が始まる前に割って入るナイ。

彼がオクトパスの潰れた目玉に手を触れると目玉はたちまち再生した。


「何も言わないのは我々が攻勢をかける事を

魔王側に気取られない為です、 今まで攻勢は殆ど無かったですが

戦争は継続中ですので法的にも倫理的にも何ら問題はありません

油断していた向こうが悪いんです

そもそも相手は魔物なので人間の倫理や条約は気にしないで下さい」

「し、 しかし!!」

「止めましょうよ、 皆さん、 リスクばかりに目を向けるのは」


アヴェニューが止めた。


「ナイ様、 先程仰いましたが魔物には人間の倫理や条約は無いと言いましたね?」

「えぇ、 その通りです」

「つまり魔物達が支配する地域では略奪は自由、 と考えて宜しいので?」

「「「「!!!!!」」」」


分家達は途端に色めき立った。


「寧ろこれは開墾に近い物と考えて頂きたい

落ちてる金貨を拾う作業の様な物です

とは言え、 皆さんの足の引っ張り合いはしない様に

そして一番重要なのは開戦発表までに情報を漏らさない事です

もしも情報を漏らした場合は言うまでも有りませんね」

「「「「「はい!!!」」」」」


先程迄の狼狽えは無かったように一致団結する一同。

会議は終わり解散となった。




ナイは帰路に着いていた。


「あぁ~、 しんど~・・・うん?」


家に何故かダイアンとその護衛ナキリが帰って来ていた。


「おや? 学校は如何したんだい?」

「ナイ叔父様? 何故ココに?」

「私が家に帰って来ては不味いかね?」

「普段は泊まり込みなので」

「まぁ色々有ってね、 それで? 学校は如何したんだい?」

「いや、 ちょっと問題が有ったので帰って来たんです

お父様に報告に行きます」

「ふむ、 分かった、 私も同行しよう」

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