顔の無い使用人

ダイアン・フォーチュンの近況

王都【白右学園】にてダイアン・フォーチュンは授業を受けていた。

必死になってノートを書いており鬼気迫っている。

そして隣で護衛のナキリがボーっとしていた。


「はい、 これで授業は終わりです、 御疲れ様でした」


講師が挨拶をして解散する。


「ダイアン様、 この後お茶でもいかがですか?」


【右道】の分家の子女達がお茶会に誘う。


「そんな暇は無い!!」


ダイアンは言い捨てるとその場を去っていった。


「・・・お忙しいのね」

「無理も無いわ

暫く休学していてその分の遅れを取り戻さなきゃらならないみたいだし」

「そこら辺融通利かないの? 【右道】宗家の御息女よ?」


子女達が話している。


「いやいや、 御嬢さん達、 宗家だからこそ決まりには従わないといけない」

「「「ロウ様!!」」」


【右道】分家の中でも古参の部類に入る

【フォビドォン家】の子息ロウが現れる。

彼は前髪を抑えながらにこやかに話す。


「宗家だからこそルールには従わないといけない

一番偉い家がルールに従わなければ下に示しがつかないだろう?

だからこそダイアン様は無理をおしてもルールに従っているんだ」

「そうでしたか・・・」

「なんて素晴らしいの、 ダイアン様・・・」

「まだ小さいのに誇り高い方だ、 お茶会に誘って邪魔するのは悪いわね」

「そうだね、 じゃあ御嬢さん達、 代わりに私とお茶でもしないかい?」

「え、 良いんですかー?」


黄色い声援を受けながらロウは子女達とのお茶を楽しんだ。





「何で私がこんなに忙しくしないといけないんだッ・・・」


悪態を吐きながら次の授業が行われる教室に向かうダイアン。


「しゃあないでしょ、 ちゃんと授業出ないと単位貰えないんだし

自分で決めて入学したんでしょ

ちゃんと卒業するのが筋ってモンですよ」


ナキリがやれやれと言った様子で返す。


「・・・・・」


ダイアンが苛立ちながら廊下を歩いていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――


時間は少し遡る。

ナキリがダイアンを王都に連れて帰り

ダイアンの父であるダミアンの前に連れて来た時の話である。


「父上!! 何故バックブリードを殺す様に命令したんですか!!

そもそもこのナキリとか言う奴は誰なんですか!!」


ダイアンが叫んだ。


「事情が変わってね・・・君を如何しても連れ戻さないとならなかった

バックブリードを殺したのは『君が勝手に何処かに行った』

と言うのは体裁が悪かったからだ」

「体裁が悪いからで人を殺すんですか!?」

「君を守る為だ、 仕方ない事なんだよ」

「仕方ない!? 如何言う事ですか!? 説明して下さい!!」

「分かった、 まずは私の部下の1人が行方不明になってしまった

この事件に対して私達は各地に散らばっている【右道】の精鋭達を

王都に呼び集めたんだ

『君が勉学を投げ出して遊び惚けている』

なんて姿を見せる訳にはいかないんだ

だから君が誘拐された、 と言う事にしたんだ」

「・・・・・」


ダイアンは呆気にとられた。


「・・・何ですか、 それ・・・

そんな理由でバックブリードを殺したんですか!?」

「仕方ないんだよ・・・

私だって部下を好き好んで殺したくはないが君を守る為だよ」

「そんな事って・・・ッ!!」


涙を流すダイアン。


「ダイアン、 君は学校をサボっている様だが

これからは全部出席してちゃんと卒業して貰おう」

「勉強なんてしてる暇無いです!!」

「それは駄目だ

もしも留年したらダイダル兄様が君を座敷牢に閉じ込めると言った」

「・・・ダイダル叔父様が、 あの遊び人が?」

「遊び人だけども兄様はやる事やっているからね・・・

それから兄様はへらへらしている様に見えるけども

やると言ったら必ずやるからね

私も君に甘過ぎた、 だからナキリを雇った」

「・・・・・この男、 何なんですか?」

「【古式】魔法の【九十九】の魔法使いだよ

君の卒業までの護衛をしてくれる」

「護衛って・・・カラカロンは如何したんですか?」

「彼女も行方不明だよ」


絶句するダイアン。


「いずれにせよダイアン、 卒業出来る様にこれからは少し厳しくする

もしも勉強を怠ける様だったらナキリに色々と命令してある」

「命・・・令・・・?」


ダイアンが不安そうな眼でナキリを見る。


「そんな泣きそうな顔でこっちを見ないでくれ

アンタが学校に通いたいって言ったんだろ?

自業自得じゃないか

オレがこの世で一番嫌いなものは『自業自得なのに被害者ぶる奴』だよ」


バッ、 とダミアンを見るダイアン。


「悪いけどもナキリには

後を引かないなら・・・・・・・・何をしても良いと言ってある

これ位追い込まないと君は勉強しないって言うのは分かり切っているからね」

「~~~~~~~ッ!!」


ダイアンは真っ赤になりながら部屋を出た。


「甘やかしすぎて我儘に育ってしまったが・・・よろしく頼むよ」

「御心配無く

後を引かない程度にボコボコにする程度ならば朝飯前ですよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る