装備頼りの連中

女商会会長デリシャスの配下の

【耳長】の魔法使い、 沙羅双樹沙羅と沙羅の密約は憂鬱だった。

【金の鵞鳥】まで出向かわなくてはならない。

魔法使いとは言え【耳長】の魔法には

弓とセットとなって初めて効果が有る魔法も多く含まれるので

【耳長】の魔法使いは基本的には身体能力も高い。

彼女は【耳長】の魔法使いの集落で暮らしていたが。

目上の者と喧嘩になり殺害してしまった為

追放されてしまった所をデリシャスに拾われた。


「マジかったるい・・・」


とは言え面倒な仕事は面倒なのだ。

早い所、 稼ぎの良い男と結婚して主婦になりたい

と思っていた。

今回の仕事は【ゲッシュ】とアーケアスの監視。

彼等の力量を見る事が目的、 なのだが・・・


「・・・・・」


2人を付けている3人組が居る。

恐らくはギルドの報告であった日曜日の使者サンデー・モーニングだろう。


「これは・・・・・」


助けても良いが実力を見るのならば人間同士の戦いの方が良いだろうと

沙羅双樹はスルーする事にした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


ボクとアーケアスは実力の偽装をしながら

水辺に居た大鵞鳥を倒した。

アーケアスは普段は使わない剣を使って戦ったが

そもそもが強いので偽装になっているかは不安だったが・・・


「普通に釣れたね」

「だね」


恐らく【耳長】の交差路クロスロードによる矢の雨を防ぎながら

アーケアスと話すボク。

ボクは元々持っている【古式】魔法の矢避けくぬけ

アーケアスは普通に剣で全て矢を弾き落としながら周囲を見た。


「木の後ろに二人、 遠くに離れた箇所に一人ずつ、 か」

「ふ、 良く分かったな」


二人の男女が現れた。


「気配は消したつもりなんだけどな」


男が笑いながら言った。


「じゃあこっち任せても良い?」

「良いよ」

「おい、 無視すんなよ、 つーかこっち二人なのに一人で大丈夫か、 よ?」


アーケアスが飛び跳ねながら遠くに向かった。


「・・・・・」

「や、 ヤバくない? 黒白狙われたらっ!?」


そっぽ向いた女の方を指差しカースで打ち抜く。

【古式】の魔法使いなら流派関係無く使える基礎的な魔法で

人類最古の魔法とも言われている。

そして【古式】魔法最強議論において度々登場して来る。

何しろ人差し指で指差すだけで相手を攻撃する魔法である。

詠唱も儀式も無く人を指差すだけという手軽さ。

威力は魔法使いの力量で変わるがボクの場合は

人の頭部を吹き飛ばせるくらいの事は出来る。


因みに指差しカースは王国の法律で禁止されている。

理由はオンオフが一切できないから、 つまり人差し指で指差したら

本人の意志とは一切関係無く発動してしまい、 日常生活が困難になる。


「リヘルタ!?」


男が叫ぶがボクは構わず指差しカースで攻撃する。


「っ!? てめぇ!!」


鎧に当たったが砕けない、 対魔法用の鎧だろうか?

ハンマーを振り下ろしてくるが回避して尚も指差しカースを続ける。

特に頭に向かって。


「っ~~~!!」


彼も防御するが顔の端が削れている。

溜まらず木の影に隠れる。


「畜生!! 何だその魔法は!!」


男は叫びボクは木の上に登った。

男は懐から何かを取り出した、 見た目から推測するに

炸裂の魔法薬の瓶、 投げて激突すると爆発する。

恐らくは切り札のつもりだろう。


「・・・・・え?」


男は木の影からのぞき込むが当然誰もいない。


「何処に行った!?」


彼の頭上から頭を打ちぬいて木から飛び降り、 無い。

ぶん、 と木が真っ二つに斬られて、 別の木に飛び移った。


「・・・・・魔剣か」


首の無い女が持っている剣が怪しく蠢いていた。

魔剣は剣の形をした魔物で普段は剣として大人しくしているが

持ち主が死ぬと持ち主を操って体を得て暴れまわる魔物である。

魔剣も王国の法律で所持が禁止されている。

指差しカースで体を撃ったが効果が薄い。


「魔力での防御か・・・厄介な」


魔剣は持ち主を交代するにつれて経験を蓄積する。

持ち主の癖や技、 持ち主が魔法を使える剣士の場合は

魔法すら使える様になる

とは言え魔法が使える剣士は近年では稀であり

魔法を使えるにしても現在目の前の魔剣がやっている様な

魔力による防御位しか使えないだろう。

更に魔剣は造形デザインからどの位前から生きているかが分かる。

恐らくは作られてまだ20年は経っていない。

魔力が繰れるのは恵まれているが経験不足で実践不足。


「とは言えダメージは通っている」


命中した指差しカースは女の服を破き

上半身が半分ほど露出している。

怪我は無いが・・・


「・・・・・」


女の肌には傷跡。

猫科の強い魔物との戦闘により深手を負ったが

能力が低い【右道】の魔法使いに治癒されて重い後遺症を負ったのだろう。

恐らくは元々凄腕の冒険者だったが今では賊に堕ちたと言った所か。

いずれにせよ


魔剣には同情するよ」


言葉と同時にボクが居る木を斬り倒す。

ボクは木と共に地面に降りて魔剣と向き合う。

魔剣が構えて剣技を放つ。

恐らくは名の有る剣士の技なのだろうが

悲しいかな、 この女の体では全力は発揮出来ない。

後遺症なのか何なのかは知らないがこの女は実力不足。

魔剣に頼って戦ってきたのだろう。

鍛えているとはいえ魔法使いのボクにすらかわせる剣技をかわし

女の腕に零距離指差しカースを放つ。


女の腕は魔剣と共に吹き飛んだ。

魔剣が離れた女の体は地面に伏し

魔剣を掴んでいた女の腕はぐにゃぐにゃと動いた後

ぱたりと魔剣から離れた。


「さてと、 アーケアスの方は如何かな」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る