気になるアイツ

【金の淵】の若き女商会会長デリシャスは

自らの商会の執務室にて冒険者ギルドの使者を応対していた。


「ギルドさんどうも、 本日の依頼はどの程度達成出来ましたか?」


デリシャスは若干18歳ながらも商会を運営し

儚げとも言える美しさから人気が有った。


「朗報です、 黄金獅子ゴールデンレオの鬣、 確保出来ました」

「!!」


デリシャスもこれには驚いた。

まさかこんなにも早く入手できるとは思いもしなかった。

黄金獅子ゴールデンレオの鬣は買い手が多い商品なので

とりあえず依頼したが数か月は待つだろうなと覚悟していた。


「・・・仕事が早いですね」

「えぇ、 最近凄い二人がこの街に来たので

色々と仕事してくれて助かってます」

「二人? それは存じ上げませんでしたね

それでその二人とは?」

「【ゲッシュ】とアーケアスと言う二人組です」

「二人? てっきり強い冒険者二人が

それぞれパーティを組んでいると思っていましたが・・・

二人で黄金獅子ゴールデンレオが倒せるんですか?」

「どうでしょう、 裏で仲間がいるかもしれませんが

此方としては詮索はしていないので」

「なるほど、 実に興味深いですね、 その二人の事もっと教えて下さい」

「正直に言いますと強い流れ者の冒険者と言う印象しかなかったのですが・・・」

「ですか? 何です?」


使者は黄金獅子ゴールデンレオの鬣を取り出した。

1つ、 2つ、 3つ、 4つ。


「!!!?」


デリシャスは目を見開き瞳を揺らし困惑した。


「4つ!?」

「はい、 4つです」

「この短期間に4つ!?」


あり得ない所の騒ぎではない、 荒唐無稽の領域である。

偽物? 否、 デリシャスの観察眼をもってすれば

真偽を確かめるのは屋外で今が夜か昼かを判別するよりも容易い。

ならば回復か? 鬣だけ刈り取って回復させて再度刈り取る・・・

否、 回復しての素材回収は素材を著しく劣化させる。

ならば一体どうやって? 普通の人間では不可能だ。


「あのー・・・デリシャスさん?」

「あ?」

「依頼料として先に貰っていた分は鬣1つ分なので

追加で3つ分のお金を支払って頂きたいのですが」

「あ、 あぁ、 はいはい、 分かりました、 お金を持って来ますので

少々お待ちを」


デリシャスは執務室の脇に有る金庫室に入る。

金庫室はデリシャス以外を通さない仕組みになっている。

そして完全防音である。


「しゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


デリシャスは金貨が山積みになった金庫の中で

ハイヒールとドレスを脱いで踊り出した。

室内だった為、 下着は履いていないのでストッキングのみの全裸である。

最早言語化出来ない程の歓喜の声を挙げて踊り狂うデリシャス。


「はぁ・・・はぁ・・・」


踊り過ぎて息を切らし始めている。


「是非ともその二人の事を調べないとねェ」


笑いながらドレスを着て金を持ってデリシャスは執務室に戻った。


「お待たせしましたー」

「いえいえ・・・靴は如何なされました?」

「あ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


ギルド内に併設されている酒場で呑んでいるサーフィス。


「・・・・・」


ひとしきり呑んだ後、 ボーっとしている。

最近考える事がある。

何で自分は冒険者をやってたんだろうか?


「子供の頃から俺は冒険者として有名になりたかった

俺には才能が有った、 そして実際有名になった

だがニクソンが裏切って去っていった・・・

クソッ!! ニクソンがいてくれたら・・・」

「御客さん」


屈強なウェイターがサーフィスの元にやって来る。


「あ”? 何だよ」

「もう看板閉店ですんで・・・」

「んだとぉ!?」

「あ、 もう閉店時間なんで・・・」

「看板の意味が分かんねぇって言ってんじゃねぇよ!!

まだ呑み始めたばっかりだろうが!!」


サーフィスが起き上がるも直ぐに倒れる。


「あ? ・・・あ?」


周囲を見ると客が一人もいない。


「うそ・・・そんなに呑んでた?」

「はい、 一人で延々と愚痴を言いながら呑んでました」

「・・・・・マジかよ・・・・・悪いが酔いを醒まさせてくれ・・・」

「一泊2000Gです」

「ぼったくりじゃねぇか!!」


起き上がろうとするも起き上がれない。


「・・・・・畜生・・・足元見やがって・・・」


画して2000Gも払える余裕がない。

無理矢理帰る事にしたサーフィス。


「畜生・・・はぁはぁ・・・」


ギルドの外までへの道が恐ろしく遠く感じる。


「ただいまー」


ギルド職員が帰って来た。

全く持って鬱陶しい・・・


黄金獅子ゴールデンレオの鬣だけどまだまだ欲しいってさ」


ギルド職員の言葉を聞いて止まった。


「おい、 黄金獅子ゴールデンレオの鬣、 って?」


サーフィスが振り返った。


「あ、 依頼ですよ」

「それは知ってる

黄金獅子ゴールデンレオの鬣を取る依頼を受けた奴を見た

だけどガキと女の二人組だったじゃないか」

「その二人が4つも手に入れたんですよー」

「!!」


サーフィスは眼を見開き、 ギルドを後にしたのだった。

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