獣への道 前編

日曜日の使者サンデー・モーニング達は

土竜ドレイクの素材を市場で買い取ってもらおうと査定を受けた。

他の冒険者が倒した物を奪い取った物なので戦闘跡から

自分達の戦い方では付かない傷を除いた部位のみなので

期待はしなかったが・・・


「はぁ!? 500G!? 土竜ドレイクの牙だぞ!?」

「うーん、 アンタ等あんまり丁寧に戦わなかったでしょ?

牙に罅やら砕けている所やらが多いんで値段が付かないんですよ」


商人がそろばん弾きながら答えた。


「ざっけんな!! 竜だぞ竜!!」

「もう良いわ、 他はどの位の値が付くの?」


サーフィスを窘めてリヘルタが尋ねる。


「あー、 そうじゃなくて牙と内蔵やらなにやら含めて500G」

「それはちょっとボリ過ぎじゃない?」

「最近優秀な冒険者が来て活躍してくれたから魔物の素材には

事欠かないからね、 文句が有るなら別の店に行きな」

「・・・・・いや、 良いわ、 この値段で」

「毎度」


日曜日の使者サンデー・モーニング達は素材を買い取って貰った。


「おい!! 良いのかよ!!」


帰りながらサーフィスがリヘルタに詰め寄る。


「良いのよ、 下手に動いて足は付けたくない・・・冷静になりなさい

今は金を集めて良い装備を集めるの

日曜日の使者サンデー・モーニング再起の為に」

「・・・ちぃ!!」


サーフィスが離れる。


「何処に行くの?」

「酒場!! 頭冷やしてくる!!」

「・・・・・じゃあ私は一人になりたいから」


白樺と黒檀の交差路も離れて行った。


「・・・・・」


リヘルタは一人宿に戻りベッドに身を預けた。


「絶対返り咲いてやる・・・」


そのまま微睡に落ちるリヘルタ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


3年前、 王都のとある酒場にて

日曜日の使者サンデー・モーニングの一同は集まり依頼達成を祝っていた。


リーダーの女戦士リヘルタ。

タンク役のサーフィス。

援護役の白樺と黒檀の交差路。

そして回復役の【右道】の魔法使いヘクソン。


「かんぱーい!! やったね皆!!

宝石龍ジュエリードラゴンを無事撃破出来て200万Gよ!! 200万!!

4人で割っても50万G!!」


リヘルタが爆笑した。


「だな!! これで暫く遊んで暮らせるな!! 高級馬車でも買うか!!」

「そうね、 ヘクソンは如何する?」

「・・・・・」


ヘクソンはしかめ面でいた。

酒には手を付けていない。


「おいおいヘクソン!! 相変わらず辛気臭いなぁ!!

日曜日の使者サンデー・モーニング始まって以来の快挙だぜ!!

もっと祝えよ!!」

「そうよそうよ!! これから大躍進を「辞めるわ」

「「「は?」」」


ヘクソンの言葉に三人は真顔になった。


「辞める? 辞めるって何を?」

「冒険者を」

「・・・・・はぁ? お前何言ってんだ? これからだろうが」


サーフィスが怪訝そうに言った。


「そ、 そうよ!! 私達はこれから「なぁ、 お前達何歳だよ」

「「「は?」」」


ヘクソンの言葉に困惑していた三人は真顔になった。


「年齢? 27だ」

「私は28、 アンタと同い年よ」

「・・・・・29」

「なぁ、 俺達30近いんだぜ

もう冒険者は辞めて真っ当な人生を送っても良いんじゃないか?

お前等も貯金は有るだろう、 今回の50万と合わせたら商売でも始められる」

「い、 いやいやいや!! 何だよ真っ当な人生って!?

冒険者は真っ当な人生じゃないって言いたいのかよ!!」

「そ、 そうよ!! そもそも貯金なんて無いわ!!

白黒白樺と黒檀の交差路もそうでしょ!?」

「いや、 そこそこ貯金はしてるけど・・・

でもヘクソン、 商人になったら色々と面倒事が有るし

生活にも制限がかかるでしょ?

自由が無くなっちゃうわ」

「でも死ぬ事は無くなるだろ、 30超えたら体の身体機能はどんどん衰える

リスクはどんどん高くなる」

「いやいや!! お前は魔法使いだろう!!」

「魔法使いだからこそ体の衰えは気にしないとだろう

前衛戦闘職とは違って体を動かす機会は少ないんだから

体がどんどん衰える、 そうなるとこれ以上は無いだろう」

「いや・・・しかし!!」

「・・・・・良いわよ、 辞めても」


リヘルタが遮って言った。


「リヘルタ!? 良いのかよお前の幼馴染だろう!?」

「良いわよ、 でもヘクソン、 商売が失敗したら何時でも戻って来なさい」

「・・・ありがとうリヘルタ」


ヘクソンは立ち上がって去っていった。


「おいおい!! 良いのかよ!!」

「良いのよ、 冷静に考えると

ヘクソンはとっつきにくい性格をしている

商売なんて上手くいかないわ、 きっと直ぐに戻って来る」

「・・・・・そう上手く行くかな」


白樺と黒檀の交差路が呟いた。


「白黒、 何でそう思うの?」

「ヘクソンは慎重派だ、 奴は勝機が無いと動かないでしょ」

「考え過ぎよ、 アイツは私が引っ張ってやらないといけないんだから

商売なんて上手くいかないわ、 実質夫婦よ」

「へっ、 惚気るねぇ」


後日、 ヘクソンは結婚し商会を立ち上げて経営を軌道に乗せたのだった。

リヘルタがヘクソンが商売が上手く行かず夫婦みたいな物と思っていたのは

単なる気のせいだったのだ。


「な、 なぁ、 リヘルタ、 そろそろ【右道】の魔法使い入れた方が・・・

ウチにも加入申請が結構来てるぜ?」

「黙れ!! どうせヘクソンの結婚生活は破綻する!! 全部断って!!」


【右道】の魔法使いを入れない事で回復役が居なくなり冒険も出来ない始末。

1年程経ってリヘルタが諦めた頃に募集をかけても


日曜日の使者サンデー・モーニング? もう居なくなったと思ってた』

『引退したんじゃないんですか?』

『以前日曜日の使者サンデー・モーニングさんに

応募したんですが断られたんで別の冒険者パーティに入ってます』


と、 新しい【右道】の魔法使いが加入する事は無かったのだった。

止む無く日曜日の使者サンデー・モーニングの3人は

回復役無しで赤虎レッドタイガーと呼ばれる通常の3倍のスピードで

動き回る虎の魔物討伐に向かったの。

熟練の冒険者ならば勝てる相手だったが

1年のブランクと回復役の不在により

リヘルタとサーフィスは全治半年の大怪我を負ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る