クソガキと退学

王国主流の魔法である【右道】宗家【フォーチュン家】の娘である

『ダイアン・フォーチュン』、 12歳。

本来ならば【白右学園】に通える年齢でも力量レベルでもないのだが

何故か入学して来て何故かボクに絡んで来る。


ボクが入っているサークルでぐちゃぐちゃ言ってきたり

昼食に毒物を喰わせようとしてきたり、 授業中隣で延々と喋っている。

『【古式】なんて古臭い遺物よりも【右道】を習いなさい』

と言う常軌を逸した振舞をする。

お付きの護衛騎士や学校sideにも言ってみたが

護衛騎士は『御嬢様が正しい』と取り合わず

学校も『【フォーチュン家】には逆らえない、 本当に申し訳無い』と謝罪された。


幾ら子供とは言え度が過ぎている、 正直腹立たしい事この上無い。

子供じゃなかったらとっくに殴り飛ばしている所だが

所詮は子供だし、 卒業まで我慢しようと思っていた。


思っていた。




「は?」


学長室に呼び出されたボクは静かに激怒した。


「本当に申し訳無い・・・」


学長は汗を流しながら謝罪する。


「ダイアン嬢の無法が知れ渡り問題になり始めている・・・

しかし【右道】宗家【フォーチュン家】の娘を罰する事は出来ない」

「それでボクを退学に?」

「すまない・・・彼女は何故か君に執着している・・・

だから君を追い出すしかない・・・」

「・・・・・それが謝る態度ですか? せめて頭を下げましょうよ」

「それは出来ない」


きっぱりと言い切る学長。


「何故?」

「私は悪いとは思っている、 しかし頭は下げられない

例え私が大量殺戮を犯したとしても頭は下げられない」

「・・・何故?」

「頭を下げると言う行為は『頭を斬り落とされても文句は無い』

と言う意味だ、 故に出来ない、 私は頭を斬り落とされたくない」

「腰抜け」

「私にも家庭が有る、 守るべき者がある、 本当に申し訳無い」

「・・・ここは魔法使いが技や知識を学び習熟する場と聞いていましたが

ガキ一人も叱れない様なお遊びの場だったとは知りませんでしたよ

知っていれば来ませんでした」

「・・・・・私が君に退学を言っている時点で分からないのか?」


学長が歯軋りする。


「私が何の感慨も!! 何の怒りも持っていないと思っているのか!!

私だってこんな愚かな恥知らずな事はしたくない!!

だが仕方ないだろうが!! 連中に逆らったら一族みなごろしにされる!!」

「口先だけでは何とでも言えますな」

「・・・・・何を言いたい?」

「このガキの遊び場に払った金を返して頂きたい」

「学費・・・奨学金か・・・分かった返金しよう」


奨学金とは言え学費が帰って来た。


「では失礼します」


ボクは懐から生徒手帳を取り出し

パーンと学長の禿げ頭に叩きつけた。


「くたばれこのハゲ!!!!!!!」

「・・・・・出ていけこのガキ!!!!!!!」


互いに絶叫を上げてさっさと学長室から出て行った。

悪態を吐いて別れる位が丁度良い。




「あ、 あら? ぐ、 偶然ね?」


クソガキダイアンが話しかけてきたが無視。

護衛の騎士が止めようとするが顔面打ん殴って顔をストンピングしてさっさと帰る。



借りている部屋アパートに戻る。

寝て起きるだけの部屋である、 基本的にボクの生活は学校

バイト先、 サークルやバイトの飲み会、 図書館

買い出しである。


「・・・・・」


今までに貯めたバイト代と返して貰った学費。

この位あれば足りるだろうか?

そうだ、 部屋を引き払って敷金を返して貰えば足りるだろう。

亡き師が遺した【神との交信儀式】の素材。

特に神と交信して如何しようとかは無いが

学校も辞めてしまった事だし新生活の区切りとして

この儀式を行う事にしようと決めた。


儀式に必要な物は【猿の脳味噌を食べたいだけ】

【大蛇の酒を気持ち多めに】【白い鴉を2樽】

【紫のリンゴを両手一杯】【鹿肉1ジゴグラム】

【今いる場所の特産品】【見えざるピンクのユニコーンの角】

【銀の水】【黄金の蜂蜜酒】

そして【牝牛】。


牝牛が一番きつかった。

他はまぁまぁ手に入る物だったが牝牛を買うとなると

値が張るのだ、 真面目にバイトしていなければ買えなかっただろう。

ボクは貸し倉庫を借りて儀式を行う事にするのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


時間は少し前後して

ダイアン・フォーチュンはこの上なく困惑していた。

自分の恋人である(と彼女が思い込んでいる)ゲッシュが

自分の護衛のカラカロンを殴り倒してしまった。

カラカロンは幼馴染で自分に優しく

自分を守る為に女ながらに騎士になったのだ。

そんな彼女が恋人に倒された。

ダイアンはすぐさま人を呼んでカラカロンを病院に運ばせ

自身は家に戻り、 父の元に向かった。


「お父様!!」

「おぉ、 可愛い我が娘よ、 そんなに血相を変えて如何した?」


【フォーチュン家】宗家当主補佐であるダミアン・フォーチュンが

自身の丸ハゲの頭を撫でながら尋ねた。


「じ、 実はカラカロンが倒れてしまって・・・」

「ふむ・・・あい、 分かった、 彼女は今どこに?」

「びょ、 病院です」

「分かった、 直ぐに使者を送ろう、 何故こうなったのか

話して貰えるね?」

「は、 はい・・・」


ダミアンはダイアンの頭を撫でながら話を求めたのだった。

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