第10話

空港の作業員が、驚いた表情で俺の機体に近づいてきた。

その男は、カメラを構えると、MiG-25の機体を撮影しようとした。


まずい!!


この機体は国家機密。

俺はこの機体をアメリカ軍に差し出して移住するのだ。

先に民間人に機体の秘密を漏らすわけにはいかない。



俺は拳銃を取り出すと、空に向けて一発、発砲した。

日本の空港作業員は慌てて逃げていった。


空港のフェンスにも人影があった。

おそらく、民間人だろう。

この機体は秘密の塊だ。

下手に撮影されては、俺が提供する情報がなくなってしまう。


機体を見るな!!


俺は再度、拳銃を空に向けて発砲した。

日本人は慌てて逃げていく。


空港は騒然となった。


日本の警察と思われる人物が近づいてきた。

俺は抵抗の意志がないことを示し、英語で書いておいたメモを手渡した。


手紙にはアメリカへの移住を希望する旨を記しておいた。

俺の英語が通じるといいのだが……


機体を隠してほしい。

俺は強く要求した。

アメリカにも作れないマッハ3の戦闘機の機密を守るためだ。

この機密と引き換えに、俺はアメリカに渡るのだから。


俺の要求は呑んでくれた。

機体にはすぐ、カバーがかけられた。


拳銃は没収され、取調室に連行された。

日本の警察は、俺に食べ物を出してくれた。


oyakodon という食べ物らしい。


初めて食べた日本の食事。

とても美味であった。


函館空港は警察によって封鎖された。

自衛隊もやってきていたが、中に入れないようだった。


自衛隊と警察とで、縄張り争いが起きているとのことだった。


俺が乗ってきた機体は分解され、徹底的に調べられた。


電子機器には自爆装置が複数付けられていたが、アメリカ人の技師はそれをすべて解除していた。

アメリカ人の技術には舌を巻いた。


コンピュータの構造も調べられた。

後日、「ソ連の最新鋭機のコンピュータには半導体は使われておらず、時代遅れの真空管が使われていた」と報道され、ソ連の技術力の低さが世界中に報道された。

また、MiG-25は、速度は世界一だが、運動性能は低いということも報道された。


コンピュータに真空管が使われていたため、ソ連の戦闘機は時代遅れだと世界中からバカにされた。

しかし、最先端の半導体を使っていないのには理由がある。

核爆発で生じる電磁パルスは、半導体に不具合を生じさせるのだ。


アメリカとの核戦争に備え、この戦闘機のコンピュータには原始的な真空管を使っている。


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