第9話

日本の領空に入った。

俺は今、領空侵犯をしている。


ソ連では、領空侵犯機は撃墜するきまりだ。

しかし、日本の自衛隊はそんなことはしてこないと聞いている。

無線で警告したり、威嚇射撃をしたりするのが関の山だ。

それを無視し続ければ、強制着陸させるための誘導を行うはず。



で、自衛隊機はどこにいるんだ?

まったく姿が見えない。



無線機を切っているので、自衛隊機が警告を出しているのかどうかも分からない。

俺はそのまま、日本の領空を飛行する。



まずい。燃料がない……

超低空飛行は予想以上に燃料を消費していた。


雲がかかっており、どこが千歳空港なのかも分からない。

自衛隊機、早く俺を見つけて、強制着陸のための誘導をしてくれ……


* * * * *


雲の下に街が見えた。

函館はこだてだ。


コックピットでは燃料切れの警告灯が点灯している。

もはや、千歳まで飛行することは不可能だ。

函館に着陸するしかない。


俺は市街地を旋回し、着陸できそうな場所を探した。


!!


あった!!


函館空港だ。



ビーーーーー!!!



燃料切れの警告音が鳴り響く。

俺は函館空港に強行着陸した。


機体後方からパラシュートを出して減速する。

それでも止まらない。

オーバーランだ!!



俺は滑走路上では止まることができず、草地へと突入した。

フェンスぎりぎりの場所で、ようやく機体は停止した。

燃料の残りは、あと30秒であった。


何はともあれ、俺は生きて日本の地に着陸することができたのだった。


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