駅員の場合

僕達のような駅員って、たまに不思議な体験をするんですよ。


例えば、幽霊を見たり.........とか。


まぁ、僕の働いている駅では、人身事故があるにはあるので、そうなるのも無理はないですね.....


え?僕が人身事故に遭遇したことはないか?ですか?


..........もちろん、ありますよ。


ただ......彼女達の死に方がだったので、忘れようにも忘れられないんです。


というよりかは、本当に死んだかどうかも分からない...........正しいのかもしれませんね。


彼女達が死ぬ光景を見たのは、今から数十年前の話で、当時の私は、新人駅員として、ガムシャラに頑張っていました。


だからなんでしょうね、彼女達が電車に飛び込んだ時は、言葉では表せない程のショックを受けました。


まぁ、何せ、人の死ぬところなんて、今の今まで見たことがなかったので、当たり前ですけどね。


..........その人達とは知り合いなのかって?


いえ、彼女達は知り合いというか、駅でよく見かけるお客様だったんです。


しかも、彼女達は双子だったので、遠目から見ても、仲が良かったのは覚えています。


二人は、今時の高校生らしく、元気があったんですが..........どこか、大人っぽかったんですよね。


あと、たまに、たわいもない話をすることもありましたけどね。


例えば、今日は寒いですね.....とか。


そういえば、彼女達が電車に飛び込んだ日も、少しだけ話をしましたね。


確か....進路についての話とかをしたと思います。


そんな話をした後に、彼女達は電車に飛び込んだんです。


その瞬間、何が起こったと思いますか?


.............線路上に、大量の飴が飛び散ったんですよ。


まるで、血が飛び散るように、彼女達の体は、赤い飴と青い飴へと変化したんです。


当然ながら、その場は大パニックになって、警察が駆けつける事態にもなりました。


.........結局、彼女達は見つからずじまいでしたけどね。


それから数週間が経った頃、僕は、夜の駅のホームで、ある少女を見たんです。


.....そう!!セーラー服を着た少女です!!


その少女を見かけた時..........彼女は、ホームのベンチに座っていて、時間帯が夜中だったので、不審に思った僕は、その少女に話しかけたんです。


その時、少女は僕の方を向くと


「飴食べる?」


と聞いてきて、飴を差し出してきました。


もちろん、勤務時間中だったので、断ったんですが.................その途端に、少女のスカートの中から、たくさんの飴が出てきたんですよ。


えぇ、お察しの通り、赤い飴と青い飴です。


「要らないの?」


彼女は、そう言いながら立ち上がると、僕に向けて、ジリジリと近づいて行ったんです。


その瞬間、僕は、彼女が人ではないことを悟りました。


でも..........人間という生き物は、恐怖を感じると力が抜けることがあるみたいで、僕は、逃げようにも体に力が入らなくて、逃げることが出来なかったんです。


ちょうどその時、駅の構内に人が居たので、僕は、藁にもすがる思いで助けを求めたんです。


すると、その人......少年は僕に気づいたかと思えば、彼女に向けて


「その人は君の襲うべき相手ではないよ」


と、一言だけ言ったんです。


そうしたら、少女は首を少年の方向に向けると


「本当だ。この人、男だ。男男男男男.......」


と呟いていて、そのまま、影の中に消えていったんです。


今のは何だったんだろう。


そう思いながら、呆然としている私に対し


「アノコは、探し物をしにこの駅に来たんです」


と言っていたんです。


それで、その言葉が気になった僕は


「探し物は見つかったんですか?」


少年に向けて、そう尋ねると


「はい、見つかりました。アノコの探し物なら、駅の中のロッカーにありますよ」


そう言った後、少年は電車に乗り込み、駅を後にしたんです。


で、少年の言葉の通り、駅のロッカーを調べていたら...........居たんですよ。


まだ息のあるが。


それを見た時、僕はこう思いました。


あぁ、アノコは赤ちゃんを助けようとしていたのだと。


.......その赤ちゃんはどうなったのかって?


先輩が警察に連絡して、その子を保護してもらったんです。


警察の方曰く、もう少し発見が遅れていたら、その子の命は亡くなっていたと。


僕は、安堵するのと同時に、どうしてアノコは、この駅に赤ちゃんがいると分かったのだろうと思ったんです。


それで、思い切って、例の少年に聞くことにしたんです。


どうして、アノコは赤ちゃんのことを知っていたのかと。


その言葉を聞いた少年はただ一言


「赤ちゃんの母親はね、本当は赤ちゃんを育てるつもりだったんだよ」


と言ったんです。


......その後、少年の言葉を裏付けるように、駅の近くで、赤ちゃんの母親らしき女子学生の遺体が見つかった時、何故、アノコが赤ちゃんを探そうとしていたのかが、何となく分かったです。


犯人はどうなったか、ですか?


.......遺体が発見された後、とある団地の貯水タンクの中で、溺死体として見つかったらしいんです。


何でも.......その犯人の体は、何故かミイラみたいに干からびていたとか。


しかも、貯水タンクの近くに、青い包み紙が落ちていたと聞いた時は、ゾッとしましたね。


あの時、アノコは......逃げたのではなく、赤ちゃんの母親を殺した犯人に、罰を与えに行ったんだって。


..........霧島さん、彼女は間違いなく、人ではない何かです。


でも.....これだけは言えます。


アノコは......子供に対して何かを抱いている、僕は、そう思ってならないのです。

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