不動産屋の場合
私のような不動産業って、職業柄なのかは分からないんですけど.......たまに、変な物件に巡り合うことがあるんですよね。
例えば、事故物件もそのうちの一つです。
ただ......個人的にあの物件、いや、あの物件に関する出来事は、未だに忘れられないんですよ。
というよりかは...........本能的に、忘れたくないんでしょうね。
あれは、今から数十年前、私がまだ新人だったの頃の話です。
当時、私はとある不動産屋で働いていたんですよ。
その職場には、三島さんという人が働いていて............若い時の私は、三島さんにお世話になりっぱなしで、逆に申し訳ない気分になったのはいい思い出ですけどね。
そんな時、とある物件が売られることになったんです。
えぇ...........お察しの通り、いわゆる、事故物件と呼ばれるものです。
一般的に、事故物件のイメージは良くありません。
ですので、そういった物件は、基本的には安売りされるのがオチです。
ですが.....どういうわけか、三島さんがその物件を担当することになりましてね、私は三島さんと一緒に、その物件に行くことになったんです。
その物件は、二階建てのごくごく普通の一軒家で、三島さんによれば............何でも、ここに暮らしていた一家は、発狂した父親によって、双子の娘を除く家族全員を殺し、その父親自身も自分の首を切って死んだらしく、その物件に入った途端、妙な寒気を感じた時、私はこう思ったんです。
あぁ、ここは本物だと............
それで、物件の中に入った私と三島さんは、しばらく物件内を調べていたんですが............その時、変な音が聞こえたので、振り向いてみると......そこには、青い飴が落ちていたんです。
その飴は、ただの何の変哲のない飴だったんですが............どういうわけか、三島さんはそれを拾って、そのまま職場に持って帰って、そのまま食べてしまったんですよ。
当然ながら、私は心配しましたが................当の三島さん本人がピンピンしてたので、大丈夫だと思っていたんです。
でも.....それから数日経った頃から、三島さんはおかしくなり始めたんですよ。
急に、水をたくさん飲むようになったかと思えば、食事を一切取らなくなって、仮に固形物を食べたとしても、すぐに吐き出す............という感じで、食べることも出来ない状態になっていたんです。
それはまるで、飲んでも飲んでも喉の渇きが満たされない............と言う感じでしたよ。
だからなのか、三島さんは徐々に痩せていって、とうとう皮と骨だけの状態になってしまったからか、病院に入院したんです。
........その時の彼の様子はどうだったか、ですか?
そうですね...........私が覚えている限りだと、変な歌を歌っていました。
......歌の歌詞は覚えてるか?
もちろん!!
確か......
『アノコドコノコダレノコ、アノコドコノコシラヌコ、アカイアメハチノアジ、アオイアメハミズノアジ、アノコハダァレ?アノコハダァレ?』
という感じの歌を、延々と歌っていたんですよ。
しかも、三島さんがその歌を歌っている時だけは、何故か満面の笑みを浮かべていたので、ひょっとしたら、三島さんは呪われてしまったんじゃないかって、思ってしまったんです。
だって............それしか説明のしようがなかったんですから。
.................結局、病院に入院しても、三島さんの体調が良くなることはなかったんですけどね。
それどころか、三島さんは病院を脱走して............入水自殺をしたんです。
警察によれば、病院から数十キロ離れたダムで発見されたそうなんですが.........その時の三島さんは、ミイラと言っても過言ではない程に痩せ衰えていたので、あそこまでの距離を移動できるとは到底思えないんですよ。
.........私が思うに、あの青い飴には、食べた者を飢え渇かし、水に対する異常な執着心を見せるように変化させる力があると思うんです。
恐らく.................三島さんは、水を求めて病院を脱走した末に、ダムに辿り着き、そこで思う存分、水を飲むつもりだったんだと思うんです。
.....何でそう思うのかって?
警察の方曰く......発見された時の三島さんの顔は、とても安らかな顔だったそうなんです。
..............水に飢えた末に、水の中に入って死に至る。
まるで、皮肉のような話だと思いませんか?
え?例の物件に赤い飴は落ちていたか?
.............そういえば、その物件で、赤い包み紙を発見したという話を聞いたような?
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