第100話 バレンタインの願い💝3(遠回り)

「オジャマしまーーーす!」


「あ、いらっしゃい……ん?おや、ジョンとアンディスも一緒なのかい?」


「やあーキッシー、ごめんね……今回のこと話したらさ、是非一緒に教えて欲しいって言うんだよ」


 メグミの後ろで、ジョンとアンディスが、恥ずかしそうに頭を下げた。




「ああ、構わないよ……材料は多めに用意してあるからね」



「良かった!……嬉しいです!……私もあげたい人が……」


 ジョンとアンディスは、モジモジしながら何か言っていたが、聞き取れなった。




「わあーーい!こんなにたくさんの人で、一緒に料理ができるなんて、最高だね!」


「べるぅ~お前は大丈夫なのか~

食べることならともかく、作ることはまったくダメだったじゃないか……なぁ~」


「あの時は、難しかったのよ!……今度は、大丈夫!」


「難しいと言っても“卵かけご飯”だぞ。

 すごかったよな。

 べるぅの作った“卵かけご飯”は、真っ黒だったもんな…………醤油の掛け過ぎだったなあ」


「やーねー、そんなことは忘れてよ、もうそぅじは~」


 ベルの料理音痴には、驚かされるんだ!


 美味しくないだけならまだいいんだけど、危険な匂いがするから、手伝いもお願いできな。

 運動会のお弁当作りは、大変だったんだよ。


「もう、そぅじは、余計な事思い出さなくていいから……さあ、はじめましょう」





「今日は、簡単な手作りチョコレートだったよな……この板チョコを溶かして、自分の好きな形に整形し直すだけだからね」



「そっか、それならあたしにも出来るね!」

 ベルは、嬉しそーにガッツポーズをとった。


「じゃあ、私達はそのチョコレートにデコレーションでもしようかしら?」

「そうだな、メグミやジョンちゃん達だったら、そのくらいはできるだろう」


「えーーーそぅじ~、じゃあたしも、デコレーションするーー!」


 ベルはすぐ張り合おうとするんだから……。





 

 メグミは、慣れたもので溶けたチョコレートを入れる型を自分の家から持って来ていた。


 ジョンとアンディスは、無難なハートの型を貸してあげた。小さな一口程度の大きさのハートがたくさんできた。

 彼女達は、そのチョコをクッキーの上に置いて、少し溶かしてクッキーとチョコを融合させて、上にカラフルなチョコチップを振りかけてデコレーションしていた。




 ベルは……………


「あれ?溶けないよ?

 ………あああ、なんか焦げ臭いよ!

 …………わあああ~型から零れたよ

 ……………わあ!固まってないよ~

 …………………そぅじ~~~ぐちゃぐちゃだ~」



「何というか、よくそこ迄下手にできるもんだなあ~…………これも才能かもな」


 顔といい、腕といい、服までもチョコレートまみれになっていた。しまいには、このまま食べて!と、言い出した。


「うえぇぇぇぇ~ん……うえぇぇぇぇ~ん……あたしのチョコが、チョコが……」


 とうとうベルが泣き出してしまった。メグミ達が心配して慰めても、泣き止まなかった。




 僕は、自分の作ったチョコレートを泣いているベルの口に含ませてから、頭を撫でた。

「べるぅ~大丈夫だよ、べるぅの好きなチョコレートは僕が作ってあげるから、それをお食べ」



 すると、ベルは涙を啜りながら小さな声で僕に訴えた。

「だって、だってね……自分の作ったチョコじゃないと……願いが届かないって

 ……うぇええ~ん………食べるのは、あたしじゃなくて…………そぅじ~なんだもん!

 うぇぇぇぇ~~ん………」



 そうか、ベルはそのために………………



「べるぅ~大丈夫だよ……

 べるぅが、僕のチョコを食べてくれたんだから、きっと僕の願いが叶うさ

 ……心配しないで……ね」


「……う、うん。じゃあ、お返しのお菓子は、必ずあたしがあげるからね…………」


「ああ、待ってるよ…………」




 3月14日か………ベルは、その時まで………………

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