第66話 夏の思い出🌻4(お望みはどちら?)

「じゃあ玉佐間たまざま、次はこのアンドロイドを復活させるか……みんな手伝ってくれよ!」

 今回、鎌田かまださんはイキイキした目をしている。なぜか昔のセンセに戻ったみたいで嬉しいな……ただ、怒ると怖かったんだよな~。


総司そうじ、そこのドアを開けてくれ!」


 こんなところにドア?は無かったような気がする。いつの間に。確か、隣はベルの家なんだけど……


「わー、これで、ソージの家にすぐ行ける!」


 んー、これでベルが入り浸りになるのは確定だな。まあ、いいか。


「みんな、バスパをこっちの部屋に運んでくれ!」

 隣は、きれいに整えられたベルの部屋だった。リビングの横にベルの寝室があるが、普段はあまり使っていない。


 普段はどこで寝ているか?そんなことは、どうでもいいに決まっている?かな?


 その横の部屋へ黒焦くろこげさんを運んだ。

 中は、手術室のようになっていた。違うのは、周りの壁が計器だらけで、複雑なメーターやスイッチがいくつも付いていた。


「おいおい、いつの間にこんな部屋にしたんだ?」

「すっごいきれいだね~……私、ここでお昼寝ひるねしようかな~」


 ベルは、本当に呑気だけど………なんで昼寝なの?


「バスパをここへ」

 すべては、鎌田センセの指示で始まった。




「それじゃあ、始めるぞ!いいかな?バスパ?」



DOUZOどーぞ…OK≫



「よし、バスパ、自己回路じこかいろを閉じて、すべてのBi制御せいぎょシステムをボディーから切りなせ!」



RYOKAIりょうかいKAIROかいろSYADANNしゃだんDENNGENNでんげんDownだうん………プチッ!≫



「玉佐間は、Bi回路を取り出して、修復にかかれ……ベルは修復を手伝ってくれ」

「了解、おっちゃん!」


「さて、ジョンちゃんよ……新しいバスパは、どんな“人”がいいんだい?」

「どんな?……どんなって?」


※ジョンの挿絵

https://kakuyomu.jp/users/kurione200/news/16817330667710791210





「確かお前さんは、“ベルちゃんと仲良くなりたい”って言ってたろ?」

「ええ、そうなの……」

「じゃあ、ベルちゃんのような“お友達”を作ろうか?」

「そうね~、私のところは、女性は私だけだから、女友達がいると楽しいかも?……でも、“ベルちゃんは羨ましい”時もあるの!」


「そっか、じゃあ総司のような“めんこい男の子”でも作るか?」

「わああ、彼氏になってくれるかなあ……そうしたらベルちゃんのように大事にしてくれるかなあ…………うううんんん、ああ、決められないわよ!!どうしよー」


「まったく、かわいい女の子ってのは、欲張りだね~」

「センセどうするんだよ!」

 僕も、センセの顔とこのジョンというエルフの女の子の顔を見比べて、困ってしまった。





「じゃあ、わしに任せてくれ………総司はわしと一緒に来てくれ……ジョンと高背はこのバスパの横にストレッチャーを広げて待っていてくれ」


 鎌田センセは、僕を連れて、“要塞ようさいもどき”の格納庫かくのうこに行った。

 そこでセンセは、縦型で透明な液体が入ったカプセルに浮かんでいる1体の人形を指さした。

 髪の毛もなく、顔もぼんやりしていて、男女の区別もわからなかった。ただ、大人の体格であることには、間違いなかった。


「総司、この体を使うことにするぞ!……ちょうど今、培養が終わったところだ」

「センセ、培養って?何?」

「ん、ただの“イカ”と“タコ”の身を培養したものだ……どうだ、人間の皮膚感覚に似てるだろう?……固い部分は骨の代わりにもなるんだぞ!」


 総司は、不思議そうにカプセルの中を覗いて尋ねた。


「へー本当に、これがタコなんですか?」

「あーイカにも!」



「あーはいはい。センセ、まだその癖治ってないんですね!」

 総司は、ツッコミもせず、昔を思い出して力なく笑って済ませた。


 その後、本物の人に見えるような人形を抱えて、2人はアパートに戻ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る