第65話 夏の思い出🌻3(新たな敵を)

 腹ごしらえのつもりで、素麺そうめんで、めんつゆを作りながらレジャーランドでの話を聞いた。


 ベルはいつものように喜んで素麺を食べていたが、麺つゆに浮かせた卵焼きの千切りに興味を引かれたようだった。

「ソウジ、これ何?……いつものとは、違う味がするよ!」


「お!ベル、よくわかったな。素麺の味を引き出すように、少しうめを練りこんでみたんだ」


「さすがソージだね……やっぱりソージのゴハンが最高だよ!!」


 まったく、僕は、ベルのお母さんじゃないんだけどなあ~。まあ、いいけどね!




「ところで鎌田かまださん、話は分かりました。

 ……だから、僕達の卒業式の時、“自分も卒業だ”なんて言っていなくなっちゃたんですね。

 ……あの時、みんなで……あちこちの学校を……探したんだよ。

 ……でも……どこに転勤したかも

 ……どこに居るかも

 ……誰も教えて……くれなかったんだよ~」


「あーあ、すまんかったなー……泣くなよ総司そうじよ~」

 

 あの時のことを思い出すと今でも涙が込み上げてくる。



「あ、本当に、申し訳ないことをした。

 あの後、私と先輩は、○○省のAi開発からは手を引いたんだ」


 僕が今まで悪の組織だと思っていた人達も、実は同じ相手を敵として戦っていたとは、本当に驚いた。特に、この玉佐間さんは、センセと同じ考え方だと言う。


「それでも、○○省は、私達がいなくなってしばらくしたら、このAiの開発をやめたんだ。

 だって、このAi回路は、“無限むげん良心回路りょうしんかいろウェイブ”を放出して、当時学校で問題になっていた子どもの“いじめ”を無くそうって考えていたんだけど、上手くいかないことが分かったんだ」


 鎌田センセは、真面目な顔で、玉佐間さんの話を引き継いだ。


「この“無限良心回路ウェイブ”を浴びた子どもは、確かに大人しくなるんだ。

 でも、それは

 “元気が無くなる”

 “気力が無くなる”

 “やる気が薄れる”

と、いったマイナスの効果しかなかったんだなあー」


 そんな子どもばかりになったら、きっと社会は終わりになってしまうだろうなあ。


「そこで、僕らは“悪の組織”を名乗って、各学校の“無限良心回路ウェイブ”発生Aiを破壊し始めたんだ

 ………日本中に似たことをやってくれている人はいるが、人数はそんなにいない。

 ……だから…………」


 玉佐間たまざまさんは、センセの方に視線を移した。センセは、仕方ないなあという顔をして……


「総司、これは……極秘だからな!……絶対だぞ!

 …………効果を高めるために、全国校長会ぜんこくこうちょうかいがバックアップを計ったんだ。

 ………“悪の組織”が出現したらなあ、

 これをやっつけるという名目で、各地区で防衛隊を組織するんだ。

 その防衛隊ぼうえいたいが、戦うフリをして、

 学校に設置されてしまった“無限良心回路ウェイブ”発生Aiを“悪の組織”と一緒に破壊していくんだなあ。

 …………これが、ミッションなんだ」


「うわああーーー、回りくどー――い!」


「総司、そんなこと言ったって、仕方無いだろう!……○○省だって、内緒で“悪の組織”に予算付けしているしな~」


 本当に大人の世界は、面倒くさいなあ~。まあ、これで、上手くいっているんだから、これも仕方ないのかなあ~。





JYAじゃあMOUもうSOROSOROそろそろBOKUMOぼくのNAOSITEYONEなおしてよね…😭≫



 ん?何だ?そう言えば?この黒焦くろこげさんは、何なの?どうするの?


素麺そうめん、食べる?」


 ベルが、左手にめんつゆを持ち、右手の割りばしで素麺そうめんをつゆからすくい上げ、正面で(あーん)をしていた。

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