第64話 夏の思い出🌻2(帰還す!)改

総司そうじ、ようやく目が覚めたようだな!』

 ヘッドセットから鎌田かまださんの声が聞こえて、僕は我を取り戻した。


僕はあの観覧車の中で、恐怖と戦ったんだ。

「ベル!すべてを思い出したよ……ありがとう」


『ううん、ソージはカッコ良かったよ!……だから、私、最後までガンバレたよ!』

 ベルの笑顔は最高だった。

 でも、瞳には、うっすらと涙が浮かんでいるから、僕はやっぱり何かヘマをしたかもしれない……でも、今は気にしない。

 きっと、挽回するチャンスはあるはずだ。



「ところで鎌田さん、後ろのお客さんは?……あの女の人は、どこかで見たことがあるような……?」



『……すみませんでした!……あのキャンプ場ではごめんなさい!……』


 そう言えば、キャンプ場の管理棟に居た事務員さんに似ているなと思ったが、急に謝られても訳がわからない。


『まあ、総司よ……詳しい話は、お前の家に着いてからにしよう』


「そうですね、鎌田さん……いやここでは、機関長と言った方がいいかな?」


 ニヤッと笑った鎌田さんの顔を見たら、この艦載機のことも、ブレスレットのこともすべて思い出した。


 はじめて鎌田さんに会った時に乗せられたのが、あのどデカい“要塞もどき”だった。でも、燃料を食いすぎるからって、校長に使用禁止にされたんだ。

 その後、仕方なしにこの小さい艦載機に乗らなければならなかったんだけど、操縦が難しくて苦労したんだよな~。


 何度やってもうまくいかないから、最後の手段でベルの魔法に頼ったんだ。

 操縦スキルをこの銀のブレスレットに組み込んでもらって、腕にはめたらようやく操縦できるようになったんだった。


「ベルのお陰だよな……」


『そんなことないよ

 ………本当は私の魔法で操縦できればいいんだけど、一人じゃ動かせないし、

 それに、私の魔法はこっちの機械を自由には動かせないんだ

 ………エルフだから自然のものなら自由に動かせるんだけどね……』


「そうだったな!

 ………まあ、その分、俺達も楽しませてもらっているから、いいじゃないか!」



『キッシー艦長!目標接近!』


 よし、見えて来た。

 僕のアパートにまだ刺さったままになっている“要塞ようさいもどき”に着艦させよう。

 僕の部屋のとこだけ、飛び出た3階に見えるんだけど、あのアパートは2階建てなんだよね。

 まあ、仕方ないか……。


「了解メグ!……エンジン出力ダウン、50%……ホバーリング準備」


『了~解!垂直エアー回転……動力伝達!』

 そうそう、そうやって機体を立ててお尻から着艦っと。いいよ、機関長!


「ベル、行くぞ!目標は、アパート最西部さいせいぶの三階屋上……ドッキングハッチオープン!」


『オープンレバー……オン!』

 んー、ベルも一人前の操縦士だもんね。


「よし、機体反転90度……室内平行を保て……メグ!ドッキング秒読み開始!」


『了解……5・・・4・・・3・・・2・・・1 着艦ちゃっかん!……機体以上なし』

 このメグの秒読みは、癖になってしまうなあー。最高だよねー。


『動力異常なし……圧力ダウン……ゼロ!……停止……補助エンジン停止!』

 機関長、最後の点検もぬかり無し。


「さあ、着いたぞ!

 ……………狭い所ですが、どうぞ皆様どうぞこちらへ。

 ゆっくりお話を聞かせてもらいますよ……」

 

 不気味に笑った岸川総司は、3人のお客さんと1体の黒焦げのアンドロイドをアパートの茶の間に案内した。


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