第49話 戦士の休息🍧1(戦湯?再び!)

「それじゃあ、後は頼むぞ……めぐみ……」

「頼むって?……ここで別れて女湯に行くだけでしょ?」

「いや……ベルはなあー……」


「あーー、まさかキッシー、ベルちゃんの体まで洗ってあげてる訳じゃないでしょうね~」

「ば、ば、ばか!……だれが、そんな事……

 こいつはな~あちこちに脱ぎちらかして、そのまんまなんだよ~

 ……あれも👕……あれも👖……あれも👙……」


「え!もー😲」

「総司も、ええお母さんになったものよのおー……」


「何?……総司?……何か言った?……楽しい風呂だよ、早く行こうよ!……」

「だから、一緒には、行けないの!……お前はこっち。……俺はこっちなの!」


「え???……メグちゃん……どうして???」

「ベルちゃん、今日は我慢してね!……はい、女湯は、こっちだからね~

 ………じゃあ、後でね………」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「わーーー広いお風呂だあーーーーーー………」


「ベルちゃんーー、泳いじゃダメよーーー」


 やっぱり初めての温泉でベルフィールは、大はしゃぎだった。

 タオルなど持たずに、そのままの格好で、大浴場の真ん中で仁王立ちになってから一気にお湯に沈んで行った。



「ぎゃあああああーーー」



「だから、泳いじゃダメって、言ったのよーベルちゃん………すぐ慣れるから、我慢しなさい」

 メグは、ゆっくりとお湯に浸かりながら、それでも顔を少ししかめていた。


「メグ……メグ……背中……背中……ひ、ひ、ヒリヒリするーーー」

 ベルは、泣きながらメグにしがみついて来た。


「いてててて………、ダメダメ………それも、ヤメテ……イタイイタイ……離れて離れて……」

 メグも泣きそうになってしまった。



 そんな2人の会話を湯船の向こうで聞いていた、女が棘のある言葉で揶揄してきた。


「まったく、煩いわね!

……浜辺に来て、日焼け止めも塗らないから、そんなことになるのよ!!

カッコ悪いわよ……ベルちゃん!!」


 すっくと立ちあがったその女性は、まるで自慢の体を見せつけるように、どこも隠さず真っすぐにベルに近づいて来た。


「あ!あなたは……ホタテで、負けたホタテガール!」

 メグが気づいて、名前を叫んだ。幸い、大浴場には、他にお客がいなかったので、今は貸し切り状態だった。


「だれが、ホタテガールじゃ、あほ!

私は、ジョセフィーヌっていう名前があるんじゃ……ボケ

……みんなは、ジョンって呼んでくれるんだ、

……どうだ、うらやましいだろう?」


「あああ、思い出した、泣き虫ジョンだ!……こんなところで、何してんだ?ジョン?」


「うっさいわい、ベルちゃん!……風呂に入っているに決まっとろうが……」


「あ、そうか!そうだよね」

 ベルは、背中の痛みも忘れたように、ジョンとの再会を楽しんで?いた。


「……フン!泣いていたのは、ベルちゃん、お前だろうが!……」

 そう言って、ジョンは、ベルの背中の方にまわって行った。


「ちょっと、こっちへ来い……」

 ジョンは、ベルの手を引っ張って、洗い場の方へ連れて行った。


「あ!ベルちゃんをどうしようっていうの……」

 メグが、慌てて後を追った。


「フン!……何なら、お前も一緒にやってやるから、ここに座れ!!」


「「 え? え? 」」


 ベルとメグは、並んで洗い場に座った。

 後ろに回ったジョンは、いきなり背中に何かローションのようなものをかけ始めた。

 最初は、冷たくて少し浸みたけど、だんだんと背中の痛みも引き、腫れぼったさも消えて行くのがわかった。

 ジョンは、自分の手のひらで、ローションの上から優しくベルとメグの背中を押し始めた。

 満遍なく日焼けの後を手入れした後、水道のシャワーをぬるま湯に調節し、体全体を流し始めた。


「よし、これで、10分間だけ、サウナに行ってこい!

 ……その後は、好きに風呂でも何でも入ればいいさ」


 それだけ言うと、また自分は湯船に浸かりに行ってしまった。


「メグちゃん、背中が痛くなくなったぞ……」

「そうね……とりあえず、サウナに行きましょう……」


 2人がサウナから出た時には、もうジョンがいなくなっていた。


「ベルちゃんごめんね……

 すっかり日焼け止め塗るの忘れてたわ!

 ……しばらくぶりの海だったもんだから

 ……すぐ遊んじゃってさー

 …………でも、ベルちゃんの幼馴染って、いい奴じゃない!」


「………んん……それがさ……

 あんまり、覚えてないんだよね

 ……“泣き虫ジョン”っていうあだ名が付いていたぐらいしか………」


「そーなんだ………」


 その後、2人は日焼けの後も痛まず、大浴場で気持ちよく過ごしすぎ、1時間以上も男達を廊下で待たせたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る