第50話 戦士の休息🍧2(秘める想い)

「カンパーイ!……そーじー~飲んでる~((´∀`*))~……」

 4人は、鎌田技師かまだぎしの部屋に集まって夕食を食べた。

 それなりの地元の夕食もおいしかったが、ベルとメグは、地元のビールやワインを次々に“味見”と称して、注文しては、平らげていた。


「おいおい、ベル、また乾杯なんかして、大丈夫か~?」

 岸川きしかわは、風呂上がりの浴衣姿で、酔いがまわっているベルフィールに見とれつつ、視線のやり場に困って、いらぬ心配をしていた。


「……え?~へ~きよ!……ベルちゃんは……強いのよ~―💪……エイッ!…あははははは……大丈夫だってばああああ………」


「なーんだ、メグちゃんも酔っぱらってんだね~………」

 校務技師の鎌田かまだだけは、飲んではいたが、年季が違った。

 まったく酔った姿がなかった。


「センセ!……もうお開きにしよ。こいつら、早く寝かせないと、明日の登山にひびくわ……」

「そうだな……総司そうじ、どうでもいいけど、“センセイ”は、やめろって、言ったべー……」

「え?……俺、そんな事、言ってないよ……センセぃ……さあ、運びましょ!!」

 本人は、酔っていないというのが、一番酔っているのが酔っ払いだといういい見本の岸川だった。


「(総司のやつも……だいぶ、酔ってるな!)……いいか、ベルちゃんを運んだら、お前も寝るんだぞ!いいか!」


「はい、わかってますよ、センセ……」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 鎌田は、みんなを寝かしつけてから、1人で旅館のバーに向かった。

 彼にとっては、まだまだ飲み足りなかった。


 7階の夜景が見える小さなカウンターだけの店。

 バーテンダーが1人、カクテルを作っていた。

 カウンターには、男性客が1人で、ブルーのカクテルを飲んでいた。


「同じものを……」


 椅子を1つ空けて、鎌田は座った。


 しばらくして、目の前にカクテルが置かれる。


「ブルーマウンテンです……」


 物静かなバーテンダーは、それだけを言うと、定位置に戻りグラスを磨き始めた。






「…………先輩、やっぱり来ると思いましたよ………」

 横も見ずに、玉佐間たまざま課長は、静かに言った。

「ああ……」

 

「……………………………」

 しばらくの間、沈黙の時間が流れた。



「あの、アンドロイドは、お前が作ったのか?………」

 鎌田は、ゆっくり尋ねた

「………さすがです、先輩……。よくわかりましたね?」

「海の家に、あそこまで精巧な働きをする店員がいたら………おかしいだろう?」

 アルコールのせいか、少し饒舌になっていた。


「そんなに……精巧にできていましたか?」

 玉佐間は、嬉しさを隠しきれなかった。

「お前、あれに……何を埋め込んだ?……知能回路は、普通の物じゃないだろう?……Ai以外に、何か開発したんだな?」


「…………私が、先輩と離れてから……どれだけ経つと思うんです……」

 窓の外を見ながら、カクテルを一口飲んだ。


「あの時は、仕方なかったんだ……お前まで巻き込みたくはなかったんだ!」

「わかっていますよ先輩……もう、あの時のことは忘れましょう」

 玉佐間は、首を横に振った。


「…………今は、お前も戦っているんだな…………」

「はい、先輩……」


「ふっ…………それじゃー……しばらくは…………だな!」

「はい、………でも、きっと追いつきますから、待っていてください」

「ああ、わかってるさ……」

 鎌田は、軽く微笑んだ後、バーテンダーに注文をした。


「……シルバームーンを2つ……」


 コト!


 すぐに、2人の目の前に、月の光が反射したような、淡い半透明な、それでいて引き締まった味のカクテルが置かれた。


 その夜、この7階のバー“ムーンテリトリー”には、2つの黒い背中だけが薄暗い月明かりに照らされていた。

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