第12話 上司だけど、マネージャー?or… 4 (生活管理)

「ウギャ」

 この前と同じように岸川教頭は、担いできたベルフィールをソファーに投げた。

「おいおい総司、もう少し優しく扱ったらどうなんだ」

 鎌田技師は、心配して教頭に声を掛けた。

「ああ、おっちゃん、大丈夫よ。いつものことだから……ベルちゃんも慣れてるの!」

 もう、何度も岸川教頭のアパートに来ているめぐみは、この一連の動きを知っていた。


「とにかく、準備するから、少し待っていてください」

 岸川教頭は、いつものように冷蔵庫を開けて、何が作れるか食材をリサーチし、5秒でメニューを決めた。

「よっし!今日は、アレで行こう!」

 大きな寸胴鍋を用意し、ペットボトルに作りだめた出汁を注いだ。

もやし、椎茸、白菜、蒲鉾、鶏肉、を刻んで煮込みだした。

出汁に味噌を溶いてスープを完成させたので、野菜が柔らかくなれば、食べごろだ。

これに、ゆでたラーメンを大量に入れ、出汁で煮込んだゆで卵を50個ほど投入した。

最後に、特製チャーシューを適度の厚さに切って大量にぶち込んだ。

後は、蓋を中火にして煮立つのを待つ。


「さあ、みんな食卓について……」

 そうこうしているうちに、鍋が煮立ってきたので蓋をとると、おいしい湯気が部屋中を駆け巡る。

「……………ん!………お!…………あ!…………」

 ベルフィールが、ソファーの上にすっくと立ちあがり、周りをキョロキョロと見渡した。

「ここだ……」

 岸川教頭が声を掛けると

「おお!……」

と、言って、ソファーからジャンプして、そのまま食卓についた。

 そして、大きなどんぶりに、溢れんばかりのラーメンとスープ。

それをおいしそうに掻っ込むベルフィール。


「おふぉ、ふぉお、ちゅるううう、うううう………………」

 何度もお代わりをしていた。


「さあ、みんなも食べてください……」

「いっただきまーーーす」

 めぐみも、鎌田技師も、おいしそうに食べていた。


 しばらくして、鎌田技師が、

「ベルちゃん、あんな無茶しちゃいかなあ~、この総司なんかそんなに簡単にはやられんって!」

と、まるでベルフィールを孫娘のような目で見ていた。

「おっちゃん、そんなの決まってるって!なあベルちゃん!」

 めぐみは、ラーメンをすするベルフィールの方を見てから、教頭を指さしてニヤニヤ笑った。

 それを見た鎌田技師が

「なーんだ、それならそーと、早く言ってくれればいいのに…」

と、また嬉しそうな顔をした。


ベルフィールは、すっかりラーメンを平らげてようやく安堵の溜息をついた。

「はーあ。おいしかったなー。…………いやあ、教頭先生がやられちゃったら、こーんなおいしいものが、もう食べられなくなるから、必死だったもんねーー」

「へ?……ベルちゃん、あんなに頑張ったのは、ご飯のためなの?」

「うん、そうだよ。えへっ♡」

「「あはははははは……………」」


 鎌田技師とめぐみは大笑いだったが、岸川教頭はちょっと複雑な気持ちだった。


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