第11話 上司だけど、マネージャー?or… 3 (新しい仲間2人目)

「ベルちゃああああーーーーーーーん!」

 1人残されためぐみが、渾身の力を込めて叫んでも、ベルフィールはピクリとも動かなかった。

「ああ、もうダメーーー………」

 めぐみが、頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

 

 その時、

「メグ!これを使えーー」

と、電動タッカ―がめぐみの手元に転がって来た。

迷わず、めぐみは両手で固定して構え、トリガーを引いた。

瞬時に金属ピンが連続で発射され、周りにいた悪の化身に命中した。


悪の化身は、1本のピンで1体が、呆気なく消し飛んだ。


「わーお!さすが、おっちゃんの武器はすごいわ!」

 めぐみは、電動タッカーを抱えて、うっとりしていた。

「こらっ!メグ、武器って言うな。これは、俺の商売道具なの、まあ、ちょっと改造はしてるけどな」

 そこに現れたのは、校務技師の鎌田剛だった。鎌田は、職務柄めぐみとよく仕事をしていて、知り合いだった。

「大丈夫か?………なんか変な奴がいると思ってな……」

「もう……おっちゃん、遅いよ」

 口では怒っていても、目は嬉しそうだった。

「いやあ、すまんな。なにせ、歳な上に、この体格だからなあ、走るのは苦手なんだよ」

「それより、ベルちゃんと教頭先生が……」

「ああ、教頭は大丈夫だ。あれは、ちょっと体が電気でしびれているだけだ、すぐ直る。それより、ベルちゃんは……」

 めぐみと鎌田は、ベルフィールに走り寄り、助け起こした。

「メグちゃんはね……教頭先生を助けようとして……敵に一人で突っ込んだの……危険も顧みずに……」

 めぐみは、半べそをかきながらベルフィールを抱きしめた。

「なんて娘だ……」

 鎌田は、倒れている教頭を引きずってベルフィールの傍に来た。

「ベ、ベル……」

 必死にベルを呼んで起こそうとする教頭だったが、まだ体がしびれていた。

「起きて!ベル!起きて!!!」

 めぐみは、もう一度そう呼びかけながら、ベルフィールにすがった………………が、

「………………ん?……………あれ?……………ベルちゃん?」

 涙が、止まった。静かに、めぐみは、ベルフィールの顔に近づいた。


「寝てる………ガス欠だったんだ………(ホッ)」

 何だか、力が抜け、その場に座り込んでしまった。

 鎌田も、しびれが残る教頭も、座り込み、4人が廊下の隅でへたり込んでしまったのである。


★ ★ ★ ★ ★


「お前は、まったく情けないなあ……」

 鎌田は、教頭の体を支えながら、小さくつぶやいた。そして、顔を覗き込んだ。

「あ!先生!……」

 岸川教頭がそう呼ぶと同時に、鎌田はニヤッと笑って

「ようやく気がついたか……もう、動けるか?」

「は、はい、もう大丈夫です、先生」

「何?先生って?」

 めぐみが、ニヤニヤしながら教頭に詰め寄った。

「い、いや……鎌田校務技師は、僕の小学校の卒業担任だったんだ」

 教頭は、顔を赤くして、照れながら話した。

「おや?それは、それは。……昔の話が聞けますね……」

 めぐみは、ますます嬉しそうに言った。

「よしてくれよ、もう20年以上前の話だろう……”先生”って呼ぶのは無しだぞ」

「……………じゃあ、もう呼びませんから、僕たちの仲間になってください。お願いします」

「仲間って………メグやベルちゃんと一緒に戦えってことか?」

「はい!…………技師長として、その技術力を貸してください。お願いします。

一緒に悪の化身をやっつけましょう」


「…………まあ…………こんな仲間もいいかもな…………世話になるぞ…………総司!

ところで、お前、ベルちゃんを放っておいていいのか?

ベルちゃんは、お前のことをあんなに心配して、敵に突っ込んだそうじゃないか?」


「……いや、それは、まあ……」

 モジモジしながらも、ちょっと嬉しそうな教頭だった。

「それにさあ、教頭先生だって、自分がやられたのに、あんなにベルちゃんのことを心配してたじゃない…………『すまない』とか言ってさ……」


「うるさいなあ……いいから……さあ、家に行くぞ……作戦会議だ!」

 岸川教頭が、ベルフィーナを担ぎあげたところで、携帯が鳴った。



『あーモシモシ、岸川教頭先生』

『あ、南部校長先生、何かありました?』

『お疲れ様……これから作戦会議だって?……みんなね……年休でお願いね』

『…………へ?』

『それから、壁に刺さった釘ね、抜いてから帰ってね』


 後始末の確認だった。

電動タッカ―はバッテリー駆動の自動釘打ち機。

鎌田技師の改造で、1秒当たり10本の釘(ホチキス型の鋲)を連射し、1パック500本を収納し、めぐみはすべて使い切った。

 ちなみに悪の化身は、15体ほどしかいなかった。


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