第9話 上司だけど、マネージャー?or……… 1 (栄養管理)改訂
「めぐみ、時間は大丈夫か?」
「何とかもつと思うわ……それにしても、こんな時間にあいつらは……」
「あ!ベル、危ない、ここは屋上だ!気を付けろ!」
「わかってるよ、敵は……3体だ……すぐにやっつける」
校舎屋上に現れた悪の化身を追いかけてきた防衛隊3人組は、時間を気にしていた。
もうすぐ、12時になる。
普通なら給食の時間だ。
「本当に、大丈夫か?……」
岸川教頭は、腕時計とベルフィールを何度も見た。
「早く、止めを刺すんだ!ベル、電撃魔法を使え、屋上なら大丈夫だ!」
ベルは、両手を真っすぐ上にあげた。
≪……万物の精霊達よ!我に力を与え給え!
空の雷よ!悪しき者たちに降り注げーーーーー≫
一瞬にして上空の雲が渦を巻き、その中心から三体の化身に向けて強力な発光した光の矢が放射された……が……その雷の矢が……途中で力なく消えてしまった。
「ああーーやっぱり、ガス欠です。教頭先生」
めぐみは、いつものように、冷静に報告した。
「うーー、仕方がない。めぐみ、アレは持ってるか?」
「はい!10時のオヤツの分を……少し残してあります」
「よくやった、めぐみ!!」
「えへっ(後で、こっそり自分で食べようと思ってたけど……)」
照れ笑いをして、クッキーを3つ手に持った。
「めぐみ、準備はいいか?……ベルー、黙って口を開けろー……今だ、めぐみ、狙え―」
めぐみのアンダースローが、炸裂した。
敵の間を縫ってベルフィールの口の中に3つのクッキーが見事放り込まれた。
途端に、ベルフィールは、目を見開き、もう一度雷鳴を響かせて、3体の化身めがけて、上空から雷を直撃させた。
あっという間に、3体の化身は、木っ端微塵に消し飛んだ。
「よくやった、ベ…あ!」
ベルフィールは、力なくその場に転がっていた。
「少しぐらい残しておけよなあー、全部出し切るんだから…………どこまで面倒みなきゃいけないのやら……」
と言って、岸川教頭は、ベルフィールを担ぎ上げ、負ぶって職員室へ連れて帰った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はい、今日の給食よ!今日は、五目うどんね……」
めぐみが、戦闘から帰ってすぐに配膳に取り掛かり、転がっているベルフィールの前にお盆を持って来た。
出汁の利いた五目うどん。香しいお醤油と甘じょっばい麺つゆの匂い。
目を閉じたままでも、鼻だけは目覚めているベルフィール。
ぴくっ!ぴっく!
彼女のお腹も唸りをあげはじめた。
「………お………お…………おか………おかわり……は、ありますか?………」
目覚めて、すぐにベルフィールは、確認し、鍋いっぱいあることを知り、全力でうどんを掻っ込んだ。
あわてて、うどんが1本鼻から出たが、床に落とすことなく、もう一度口から食べた。
まったく気には、しなかった。
ベルフィール用のおかわりは、もちろん植野めぐみによって、特別に大鍋に作られてある。これは、職員室では、誰もが知っていることなので、間違っても他の人が食べることはない。
給食なので付け合わせがある。ツナとドレッシングで大根を混ぜたサラダ、それにオレンジゼリーのフルーツポンチが付く。
牛乳は毎日出るが、子どもは200CCだが、ベルフィールだけは1000CCパックが1本必ず付く。
ちなみに、給食費は、特別料金である。
「はああー、ごちそう様でした」
ベルフィールは、皆と同じ時間で、皆の10倍近い量の給食を食べて、満足したのか、穏やかな表情で、(気分だけは)休憩に入った。
「本当に、ベルちゃんて、よく食べるよのね……
こんなに食べても、こんなにスタイルがいいんだから、うらやましいわ」
その大量の給食を作っている張本人のめぐみが、しみじみとベルフィールを見てつぶやいた。
・ ・ ・ ・ ・
「………今日は、……4月月末……給料日です……明細を受けとって帰ってくださいね……」
事務職員から再度確認があった。今年度、最初の給料日だ。
「お、おい…何だ!この給料……多くないか?」
岸川教頭が、驚いて明細を何度も見ていた。
そこへ校長が来て
「おや?言ってなかったかい?ベルフィール君は、主幹ということにしたが、これはうちで任命したので、給料はうちで出すことになるんだ。
ただ、その財源は、本社からもらえるんだけど、君の給料に混ぜてもらっているんだ。
……だから、君の給料には、ベルフィール君の分も入っているから、ちゃんと渡してね。
なにせ君は、ベルフィール君の直属の上司だからね。
……あ、これこれ“特別召喚手当”ってやつ。
……それから、“特別燃料手当”っていうのは、ベルフィール君の朝ご飯と晩ご飯ね……よろしくね。
………後の面倒は、自腹でお願いしますよ」
「えええ!!……まあ、給料はいいとして……後の面倒って?……何???」
そこへ、ベルフィールがやって来て
「教頭、給料は、全部お前に預けておくから、私に渡さなくてもいいぞ
……ほしいものは、お前に買ってもらうから
……頼むな!」
そう言って、ニッコリ笑って、ベルフィールは、自分の席に戻ってしまった。
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