第8話 ヒーローは、再び? 2 (ベルの弱点)改訂
「前っていっても1回だけよ……」
めぐみは、柄にもなく遠い目をした。
今年の4月に他の学校から転勤してきた。
「おい!ひょとして、前の学校でベルと一緒だったのか?」
教頭は、めぐみの両肩に手を置き揺さぶりながら迫った。
「痛!痛!………もう、話すから……」
「あ、すまん、すまん……それで?」
岸川教頭は、興味深々だった。
彼は、ベルフィールの方をチラッと見た。彼女は、満腹状態なので、今は気持ちも飽和状態で、心地よく休眠中だった。
「それが、前の学校でも、ベルちゃんは召喚されていたのよね~
それは、良かったんだけど……防衛担当者の腕が悪くてね………」
「あああ……弱くて、すぐにやられたんだね!」
「いやいや、悪の化身なんか、ベルちゃん1人で十分なんだよね………でもね、担当者が……へたくそでね………」
「へたくそ?……武器が扱えなかったのか?」
「いや、だから、ベルちゃんがいれば、武器なんかいらないの!…………ほんと、音痴でさ……」
「え?音痴?……戦いの最中に歌でも歌うのか?……こっちでは、歌なんか歌わないぞ?」
「教頭先生!歌なんか、関係ないの!……味音痴なの!!」
「へ?味音痴?」
「そ!おはぎを作ったら、しょっぱいし。塩ラーメン作ったら、甘ったるいし。カレーライスは、酸っぱかったし。何でもかんでもマヨネーズを掛けてたわね。
かき氷にもマヨネーズを掛けてたのにはびっくりしたけど。
あと、お味噌汁の味がしないの。
減塩だとか言ってたけど、悪と戦う人が減塩しちゃダメよね。
ほんとに困った味音痴だっわ」
「へ?へ?へ?何、それ?」
「私は、新卒1年目で、ちょっとだけお手伝いしたけど、私も嫌になって、ベルちゃんに内緒でオヤツを作ってたら、バレちゃって速攻飛ばされたという訳
…………ベルちゃんなんか、あんまりおなかが減り過ぎて、いつも死んだようにしてるもんだから、途中で本社に呼び戻されちゃって、ね!」
「それで、召喚したとはいえ、こっちの世界にあんなに詳しいのか……」
教頭は、今までのベルフィールの不思議な行動にようやく納得したようだったが、
「……え?……ということは、じゃあ、自由にもとの世界に帰れるということなのか?」
と、再び驚きの声をあげた。
すると、澄ましたきれいな声で解説する声が入った。
「いいえ、普通は帰れません。私達は、1年という区切りで、召喚さえる特別エルフなんです。
通称“出向エルフ”って言われてます。改めてよろしくね。召喚主様💛」
ベルフィールは、目も冴えて、ご機嫌な状態に戻っていた。
「だから、出向期間中は、召喚主様が衣食住の面倒をしっかりみる約束になっているんです。
その代わり、私は、悪の化身をやっつけるということにしていますので……」
「本当に、今回は、ベルちゃん嬉しそうで、良かったわ……、ついでだけど、私もおいしそうな物が食べられそうで嬉しわ」
上機嫌で嬉しそうに笑うベルフィールとめぐみの目の前で、何となく府に落ちない、一人だけ損をしたような顔の岸川教頭だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます