第3話

ケリン先生の元へ向かうと、すでに20人ほどの生徒がおり、全員大きな荷物を持っていた。

「入寮者を確認するから今いる全員名前を順番に言ってくれ。」

そう言われ、ケリン先生から近い子から順に名前を言っていく。

僕の順番が来たので僕も名前を言う。

「入寮者のジズです。」

「OK。ちゃんと全員いるな。」

どうやら僕が最後に来たらしい。

「それじゃ、寮の方に向かうぞ。」

寮は学校の敷地内にあり、少し歩いただけで3階建ての建物が見えてきた。

「ここが1年間あんたらが暮らす家だ。食事は毎日7時と19時に作られる。風呂は共同の浴場に入るように。」

「それじゃ、各々の部屋鍵を渡すから、あとは自由に過ごしてくれ。」

そういい、ケリン先生は鍵を生徒に渡して回った。

「ジズは、205室だ。鍵はなくすなよ。なくしたらしっかりお説教だからな。」

僕はもらったカギをひとまず財布の中へ入れ、ケリン先生へ「はい。大切にします。」と返事をした。

「よし。全員渡したな。くれぐれも変なことはするなよ。それじゃ、あとは自由に過ごしてくれ。解散!」

ケリン先生はそう言い、学校の方へ帰っていった。生徒のみんなは、まず荷物を置くために部屋に入るようだ。

「入学式でもわかったけど、この学校は放任的なんだな。個人の行動を気にかけないような雰囲気がする。」と心の中で思った。

僕も他の生徒と同じように肩の荷物を下ろしたいので、寮に入り靴を脱ぎ部屋を探す。

この寮は3階建てで、各層に部屋が10近くあるみたいだ。

305号室は、3階にある5号室という意味らしい。3階の真ん中付近にあった。

部屋の中は、まず窓があり、外の景観を眺めれる。3階の特権だ。あとは、机とベッドがあり、壁に時計がかけられている。

そこまで広くはないが、生活に不便はないような、そんな部屋だ。

荷物を下ろした僕は、昼ご飯を食べていないことに気が付き、時計を確認し昼過ぎなことを確認した。

窓から町を見てみると、時計塔近くの広場では多くの人でにぎわっていた。よくよく見ると出店もありそうだ。

おなかをすかせた僕は、昼ご飯を食べるために町へ出ることにした。

寮を出て、町の広場へ向かう。広場はマリナでは考えられないほどの人々でにぎわっていた。中には、魔物退治から帰ってきたのか、剣や盾を持っている人もいる。

時計塔付近は、商店や出店のほかに、町の困りごとの解決などを行う「ギルド」もあるようだ。

マリナの町には存在しなかったので物珍く興味はあったが、さすがに学生なので入ることはやめておいた。

次に、時計塔公園というのがあり、時計塔の正面くらいに少し大きめな公園があった。

たくさんの木々が生い茂っており、道のは時にはきれいな花の植木鉢が並べておいてある。程よく手入れがされているのか、整っている木がほとんどだ。

この公園は広場と近く、広場では食べ物から雑貨など、出店の幅は広く出店されているが、公園内の出店は食事や時計塔にちなんだグッズなど、観光客を意識しているようだ。

公園では雨の日以外は出店をやっており、僕が今通った出店では、野菜を油で揚げて、串に刺したものを販売しているようだ。

ほかには、「ドルド」という小麦粉を練って薄くして焼いた生地に肉と野菜をはさんだ料理。

「アルド」という、真ん中がへこんだ丸いパンにクリームやアイスクリーム、フルーツなどを盛りつける料理など、様々な屋台があった。

甘いものの気分ではなかったので、僕はドルドを食べることにした。

どうやらドルドはこの町では定番の料理なのか、ほかにもドルドを販売している屋台がちらほり、どの出店に行くかとても迷ったが、

やっぱり初めに目に入った店でドルドを食べてみることにした。

「すみません。ドルドを一つください。」

「あいよ。200エリーね。」

僕は財布から小銭を出した。

「はい。ちょうど200エリーです。」

「はい。どうぞ。熱いから気を付けなよ。」

渡された紙袋を開け、食欲をそそる香ばしいにおいが鼻を刺激する。

においにワクワクしながら最初の一口を食べる。

肉とみずみずしい野菜が、甘みと酸味のある牛乳を加工したような風味のソースとマッチし、小麦の生地が味を調え、とてもおいしかった。

ドルドはほかにも屋台があるので、屋台ごとに個性があるかもしれない。

僕は、次もドルドを買いに来ることを決意し、食べながら公園を後にして町へ歩き出した。

公園は観光客が多く、みんな時計塔を見に来ているようだった。

時計塔へは公園から向かうことができ、広場とは反対側の道へ行くと時計塔だ。

そのため、時計塔へ向かう観光客とすれ違いながら町まで向かった。

観光客は目を輝かせながら歩いており、僕もなんだか楽しくなってきた。

公園も観光客が多いが、広場は住民も観光客も交じり、たくさんの人がいる。

時計塔も十分大きくてすごいのだが、僕は時計塔よりも活気のあふれる広場や、黑寄りの茶色を基調としたレンガでできた家や店を眺めるほうが好きなようだ。

少し止まって風景を眺めると、にぎわってはいるが、暗めな色の建物が並んでおり、神秘的な雰囲気を出していた。僕は歩いているだけでも十分楽しかった。

道を覚えつつ、町を歩いていると日が沈みかけており、時計塔から大きな鐘の音が鳴りだし、ふと時計塔を見ると、18になっており、晩御飯まであと1時間だった。

楽しくて時間を考えずに歩いていたが、とてつもない時間がたってしまったようだ。」

僕は寮に戻ることにした。

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神秘のアルカナ 回転 @eupujxet001

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