第1話
草原を5分ほど歩くと、町の門が見えてきた。門にはでかでかと「交易街 マリナへようこそ!」と書かれており、その下を自警団の人がたっていた。
自警団は、町の外からの脅威、魔物や犯罪者から町を守る役目を持つ人たちだ。
僕は顔なじみの自警団の人にあいさつをし、町の中へと進んでいく。
町の中は、朝早くということもあり、静寂に包まれていた。
普段は出店の売り手や町を歩く人の話し声で騒々しいくらいにぎやかなのだが、普段とは裏腹に静まり返った街並みにどこか落ち着きを感じつつ歩いていると、馬車乗り場が見えてきた。
馬車乗り場は、町の通りの一番端にあり、僕が入ってきた門の丁度反対側の門に位地している。
馬車乗り場では、御者が馬に餌をあげている最中だった。
御者はこちらに気が付いたようで、馬を撫でてからこちらに近づいてきた。
「おはよう。今日のお客さんのジズ君かな?」
御者手元の紙を確認しながらこちらを見てきた。
「おはようございます。今日乗せてもらうジズといいます。よろしくお願いします。」
「よろしく。今日のお客さんは、ジズ君だけだから、僕の準備ができ次第、すぐに出ることにするけどいいかい?」
どうやら、隣町へ行くのは僕だけのようだ。僕は少し早く町を出ることにした。
「大丈夫です。ありがとうございます。」
「じゃあ、あと5分ほどかかると思うから、もう少しだけ待ってね。あと、マリーにも挨拶をしといてね。君を運んでくれるんだから。」
馬の名前はマリーというらしい。かわいらしい名前だ。
「よろしくね。マリー。」
マリーは返事をするかのように「ふんすっ」と鼻息をし、皿に置かれている餌を食べ始めた。
馬車が出るまであと少しかかりそうなので、僕は振り返り、町の方を見ることにした。僕が歩いてきた大通りはまだまだ静けさが漂っており、寂しさと懐かしさを感じながら町を眺めていた。
「準備ができたよ。荷物は足元に置いておくと転がるかもしれないから、この箱に入れておいてね。箱は括り付けておくから、降りる時まで出せないよ。水とか、必要なものは出しといてね。」
僕は御者の言葉通り、水と途中で食べるために持ってきたパンを出して、リュックサックを箱に詰め、御者に箱を渡した。
「よし。じゃあ出発しようか。あ、あと、魔物が出たりしたら僕が戦うから気にしないでね。」
この御者は戦えるらしい。説明の仕方から、何度も魔物と戦っていそうだ。
僕は、そのことに安心感を覚えながら、馬車の中へと乗り込んだ。
「それじゃ、動くよ。少し揺れるから気を付けてね。」
「はい。お願いします。」
馬車が動き出した。馬車の中は、2人乗りを想定されているのか少し広かった。
左右の壁の真ん中には穴が開いており、日光をさえぎるために布が下ろされているが、上げることで外の景色を見ることが出来そうだ。
僕はさっそく布を上げ、外を見ることにした。すでに門をくぐり終え、眼前にはさわやかな草原が広がっていた。
草原の上には、ルーンおじさんの家があり、僕は心の中で、再度「行ってきます。」と唱えた。
~~
1時間ほど経過し、隣町へたどり着いた。
「お疲れ。スルドの町に着いたよ。もう動かないから、馬車をおりてね。」
僕は、馬車を降り、御者から荷物を受け取った。
「料金は、別の日にルーンって人からいただいてるから、お題は大丈夫だよ。」
ルーンおじさんが事前に馬車代を払ってくれていたらしい。帰ったらお礼を言わないと。
「この町を楽しんでね。いってらっしゃい。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
御者と別れ、学校を目指して歩くこととなった。
このスルドの町は、国の中でも有数の都市であり、どこからでも見えるほど大きな時計塔がある。
時計塔の周りには囲むように商店や施設、学校があり、外側に近くなるほど移住区が増えていく。
僕が入学する、「スルド学校」はこの町の2つ目の学校で、町と同じく大きな学校らしい。
らしいというのも、学校への入学関連の手続きはマリナの町で済ませているので、僕自身は学校を見たことがなく、それまでの道もわからなかった。
だが、時計塔の近くにあるということは知っていたので僕は、時計塔に向かって町を歩きだした。
この町の特徴は、建物と建物の間がないくらい密集していることにある。また、時計塔付近は2階建てが多く、1階を商店、2階を生活スペースとしている人が多いようだ。
街並みを見ながら時計塔へむかって歩いていると、僕と都市の近そうな人がちらほらと見えるようになってきた。中には、僕と同じく寮に入るのか、大きな荷物を持っている子もいる。
その子たちはみんな同じ方向に向かっていたので、流されるように僕もみんなが歩くほうへ向かった。
5分ほど歩いたところ、「スルド学校 入学者はこちらへ」と書かれた看板を発見した。
ひとまず、道はあっていたみたいで安堵した。
後は看板に従い、3分ほど歩いた。
すると、大きな門が見えてきた。門には「スルド学校」と書かれていた。
無事学校にたどり着けたようだ。
門の奥には石畳の道が広がっており、その奥には、3階建ての灰色を基調とした少し古そうなお城があった。
僕がこれから通う、「学校」だ。
僕は、期待と不安を胸に、門の前に立ち、普段より少しだけ大きく一歩を出し、門の中へと入った。
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