131話 決着! バフォメットの最後
バフォメットのブレス乱射は収まらなかった。
「これは予想以上じゃな」
「ファム。竜神の盾は魔法を無効化できるのに、どうしてバフォメットの神聖ブレスに効果がないの?」
「それはわたしから」
サラが説明する。
「神聖ブレスは魔法ではありません。神聖魔力をそのまま燃焼させているので、魔法の無効化が効かないのです」
魔法は神聖魔力と闇魔力が反応するときに起きる現象だ。それを竜体や竜神の盾はコントロールできる。しかし、魔力そのものを燃焼させる神聖ブレスには効果がない。
「なるほど、これじゃ打つ手がないね」
「いや、ある! ブレスは大量の神聖魔力を消費する。多くは撃てないはずじゃ」
「そうです、魔力補給のため必ず休みます。そのときがチャンスです!」
「とは言うものの、それまでナラフが耐えられればよいが」
ファムがナラフを見やれば、彼はすでに意識がなかったのだ!
「ナラフ!」
「目を覚ましてください!」
ファムとイフリータが呼びかけるが、彼は返事をしない。そして、盾を構えたまま前のめりに倒れたのだ!
それを見たバフォメットは、ブレスを止め不気味に笑った。
「ククク、やっと倒れたか。その忍耐力は称賛に値するぞ。しかし、これでお前たちは最後だ!」
そう言いつつ、再びブレスを放とうと口を開けたときだ。輝く軌跡がバフォメットの胸を貫いた!
「な、何だと! これは神聖ブレス? 竜神は俺を攻撃できないはずだが」
「それは竜神さまのブレスではありません!」
サラがバフォメットをにらみつけた!
「ピーちゃん! 一気に焼き尽くしなさい!!」
ブレスを放ったのはピーだ! 彼はナラフの持つ竜神の盾の裏に張りつき、反撃のチャンスを待っていたのである。
ピーのブレスが威力を上げる!
「グオォォ―――ォォオオッ!!」
バフォメットは断末魔の咆哮をあげた。体は原型を留めないくらい崩壊し、あと数秒あれば行動不能にできただろう。
だが彼は体勢を立て直し、ピー目がけてブレスを放ったのだ!
「ピーちゃん! よけて!!」
サラが叫ぶが遅かった!
ドオオオォォンン!!
ブレス同士の干渉で爆発が起き、周囲にいた者を吹き飛ばした!
最後尾にいたサラは無事だったが、ナラフに続いて、ピー、ファム、ハリル、そしてイフリータまでもが倒れている。
「ハァ、ハァ……滅んだかと思ったぞ。こんな奥の手を隠していたとは」
バフォメットは、床で気絶しているピーを憎悪の目で見た! とっさにサラがおおいかぶさり、彼をかばう!
バフォメットはよろけながらも立ち上がり、残った力でブレスを放とうとする。
「俺の勝ちだ! 滅びろ!!」
サラは死を覚悟して目を閉じた!
しかし、いつまで経っても衝撃が来ない。彼女が顔を上げ周囲を見渡すと、そこにはマリが立っていたのだ!
「お姉さま!」
「よく頑張りましたね、サラ」
マリはバフォメットを見やる。
「もう神聖ブレスは撃てません」
「バカな! 魔法を無効化してもブレスだけは撃てるはずだ」
「無効化は魔力の反応を抑えるもの。コマリは、この部屋から魔力そのものを消し去ったのです」
マリがコマリに命じたのは魔法無効化ではなかった。空間から魔力をなくしてしまう魔力消去だ。
「竜神はそんなことまでできるのか!?」
バフォメットは驚きつつも周囲を見渡した。ナラフをはじめ多くの者が床に転がったままで、立っているのはマリとサラだけだ。
「聖女よ。やはり俺の勝ちだ。もうここには戦える者が残っていない」
「いいえ、すぐにやって来ます。あなたを倒す者たちが」
マリの言葉が終わると同時に、マリナカリーンに率いられた兵士が部屋へ突入して来た!
「お祖母さま、ちょうどよいタイミングで来られましたね。これで作戦は成功したも同じです」
「マリアンヌ、無駄話はあとじゃ! バフォメットが復活してしまうぞ」
バフォメットを見れば、ピーから受けた傷が回復し元の姿に戻っている。
「フハハハ、もう遅い! この部屋に魔力がなくても、俺の体の竜元素は新たな魔力を生み出し体を再生する。ブレスを撃てるだけの魔力はないが、この手でお前たちを切り裂くことはできる!!」
そして、マリに襲いかかろうとしたときだ!
「撃て―――っ!!」
号令と共に小銃が軽快なリズムを刻みだした!
タタタタタタタタ、タタタタタタタタ。
命令したのは秋山三佐で、銃を撃っているのは自衛隊の隊員たちだ!
タタタタタタタタ、タタタタタタタタ。
小気味いい銃声に合わせてバフォメットの体が踊り狂う。黄金の肉体は四散し、最後に赤黒い肉塊だけが残った。
「凄まじいのぉ、これが銃という日本の武器か」
「そうです。魔力のある空間で銃は使えませんが、なくなればこうして使うことができます」
マリの作戦は部屋から魔力を消去し、銃を使ってバフォメットを行動不能にすることだ。自衛隊と交渉し協力を得たが、問題が一つあった。
「未知の軍隊が押し寄せればバフォメットは用心します。彼が逃げだしたらコマリでは足止めできません。この部屋に足止めする工夫が必要でした」
「どんな工夫じゃ?」
「ナラフにファム、それにハリルくんです。バフォメットは、この三人に煮え湯を飲まされ恨んでいました。逃げるより報復しようと考えるでしょう」
「なるほどの。絶対とは言えぬがそうなる確率は高いじゃろう。マリアンヌの思惑通りにバフォメットは戦う選択をしたし、そのあいだに自衛隊を近づけることにも成功した。見事な作戦じゃ」
マリナカリーンは納得したのか、マリを見てうなずいたのだ。
それからマリは、サラと一緒にナラフたちの治療をした。ファム、ハリル、イフリータ、ピーは軽傷だったもののナラフは重体で、担架に乗せられ運ばれて行ったのである。
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