近現代文学の作品について紹介文・感想文を書いている作品。
取り上げられる作品は掌編〜短編の小説が主だが詩歌も含まれている。
カクヨムの「創作論・評論」カテゴリーはどちらかというと「創作論」の方が多く
こういった純粋に読者として他人の作品を鑑賞するだけの文章は意外と少ない。
鑑賞の対象にするのが近現代の文学作品なのだからなおさら稀である。
取り上げられる作品には「青空文庫」で読めるものもあれば三島由紀夫のように本を買う(または借りる)必要があるものも含まれている。
しかし一応評価が確定しているような「名作」が主である以上、
どうやっても「読書メーター」などの感想投稿サイトに書き込まれる数百数千の感想たちに対してオリジナリティを出すのが難しい。
素人が読んで感想を綴ってみたところで斬新な文章が生まれることはかなり珍しいようだ。
本の感想投稿サイトでは結局皆似たような事ばかり書いている。
そうした中で本作「文学はいいぞ」は奮闘している。
ちょっとした「つぶやき」程度のレビューと比べて長大であるのみならず懸命に作品の良さを具体的に説明しようと試みている。
また個人的な思い入れや嗜好を重視して選出された作品はメジャーなものから比較的マイナーなものまで揃っており目次を読むだけでも面白い。
また、デスマス調のいわゆる敬体で書かれた読者への「語りかけ」の文章には特異なバランス感覚があり面白い。
読者に近すぎず遠すぎず、
また作品に離れすぎず、
かろやかに文学を逍遥してゆくその足どり。
これこそ本作に相応しい文体ではないか。