風景(堀辰雄)
みなさんには、好きな「風景」って、ありますか?
学校や職場からの帰り道、夕日の輝く橋の上、満点の星空や華やかなイルミネーションーー…きっと人それぞれ、癒される「風景」というものがあるはず。
ちなみに私は、日が沈んで夜の色が空を覆い尽くすまでの、橙とも紺とも言えないあの空を見るのが大好きです。人工的には作り出すことのできない、あの絶妙な色合いが、自分の心を染めてくれているような感じがしませんか。
ロマンチストの一意見です。ごめんよ。
さて。身の上話はこのくらいにして、今回は、主人公と「風景」のお話をいたしましょう。
この作品についてのネタバレはありませんので、安心してお読みください。後日公開する【感想】では、ネタバレありでお話ししようと思いますので、お楽しみに。
それでは、あらすじをちょっとだけどうぞ。
人混みから逃げるように、波止場をふらふらと歩いていた「僕」は、気がつくとへんてこな一区域に辿りついていました。
高い塀に囲まれた古い建物、はるか遠くに見える海と汽船、そして、硝子の欠片のような白い雲。
初めて「風景」というものを見たんじゃないか、というレベルで、「僕」はその景色に魅了されてしまうのでした。
これが、四コマ漫画でいう「起」です。ここからどう話が膨らんでいくのか、どういうオチになるのか、検討がつかない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私も、ここまで読んだとき、何が起きるのか分からず「これってただのエッセイなんじゃ」と思っていました。
でも、実はこのあと、かなり突飛な…というかぶっ飛んだオチを迎えます。「そんな飛躍した転結でいいの!?」と、急な方向転換に、思わず笑ってしまいました。
ヒントとしては、このあと「僕」がタバコを吸おうとすることで話が展開します。(これが「承」にあたります)
絶対初見だと意味がわからない。でもそこがおもしろい。
この作品を読む上で意識していてほしいのが、この風景がまるで「絵画のよう」であること。
都会の高級ホテルのロビーにかかってそうな(個人の感想)風景画が、目の前に実在している。遠くから微かに聞こえる波の音が、かえって「僕」を魅了して、まるで哲学のようにその景色で頭を一杯にしてしまう。
そんな「絵画」を前に、どのようなストーリーになるのか…というところが、一番大事です。
また、この作品を読むにあたって、とある画家の前知識を持っておくと楽しめるかと思います。
ネタバレになってしまうので、具体的な名前などはお話しできませんが、美術に精通している人はより没入できる作品なのではないかと感じました。
もし読んでみてピンとこなかったら、検索してwikiとか読んでみるといいかも。私は正直「うわ、知っときゃよかった…」と後悔しました。
お恥ずかしい話、高校芸術は書道を選択していたので、美術の予備知識はほぼ皆無です。なので、この小説に出てくる画家は名前しか知りませんでした。
そして気になる読破時間は、大体十分かからないくらい。共テ予想問題として読んだものなので、正確な時間は分かりませんが、かなり短い作品です。時間のない方でも、手軽に読めるボリュームではないでしょうか。
文体もとても読みやすく(さすが堀辰雄先生!!)、普段小説というものをあまり読まない人でも、手を出しやすいですよ。
この作品は、『青空文庫』で気軽に読むことができます。が、旧字旧仮名のみの公開なので、苦手な方はゆっくり一文ずつ咀嚼しながら読むことをオススメします!
ということで、長くなってしまいましたが、今回はこの辺で締めさせていただきます。
ここまでお読みいただきありがとうございます。またお会いしましょう!
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