19 恋愛遍歴

「俺の話ばっかじゃつまんないじゃん!佑と拓馬は居ないの?」

「俺は高校までかな。他の人のキューピッド役はあったけど大学は何もなーい!部活もずっとサッカー部だから男所帯だしさ。マネージャーには手を出さないっていう暗黙のルールもあったから出逢いがないんだよね。なぁ佑!俺も恋人欲しいよ!」


佑も中学校に上がった辺りから拓馬の恋愛話は聞いた事が無い。

恋人を作ってこなかった自分に気を遣って居るのだろうかとも思うが、高校では彼女が居たらしい噂を聞く限り、全く困っている、という訳でも無さそうだ。

好きな人、か。

佑は1ヶ月前に別れた彼女を思い出し、暫くは恋人という存在を作ることも無いだろうと思った。


「俺に言われても、ちょっと困るかなあ。俺は4月初めに彼女と別れたばっかりでさ。1ヶ月お試しでって言われて付き合ったけど、やっぱり上手くいかなかったから、今は恋人を作ることは考えてないかな」

「そういやあれから彼女とは会ってないわけ?」

「うん、連絡も取ってない。多分かなり傷つけちゃったからちょっと気まずくて…。元気だといいんだけど」

「この間講義室のとこで会ったけど元気そうだったよ?佑にありがとうって言っててくれって言われた。まあ無理しなくていいんじゃねーの」


本当にこいつは他人の幸せばかりだ、と、佑は改めて拓馬のことを思う。

面倒見が良くて、首を突っ込んだと思えばギリギリ届かない範囲で見守っていたりもする彼に、これまでどれだけ助けられてきただろうか。

でも、拓馬の幸せはどうなのだろうかと気にかかる。


「なぁ歩、どうやったら恋人出来るかな?カズでも良いよ、お前モテそうじゃんかー」

「カズはモテるよ、結構昔から」

「やっぱり!?」


不意に話を振られた和樹は、うーん、と困った表情で頭を搔いた。


「恋愛とかそういうの、あんまり興味ないんだよな」

「はぇ?そうなの?」

「んー、告白されて付き合った事はあるけどな。自分から好きになったことはまだ無いかな。前の大学でも恋人いなかったし」


和樹はモテるんだろうな。

佑は、ふとそんな事を考えてしまっているのに気付く。

和樹は恋愛に疎い男の自分から見ても格好いい、というよりも美形で綺麗、と言った方が良いだろうか。

普段からその片鱗は感じてはいたが、やはり大学でもモテるのだろうなと思う。

今は恋愛には興味がないような話をしているけれど、もし好きな人ができた時にはすぐに彼女ができてしまったりするのだろうか。

そうすれば4人で遊ぶ時間は減るだろう…それは少し寂しいと思ってしまうのだった。

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