第17話 新作試食会

お風呂から上がった時緒と山吹は嵐志達4人と入れ替わるように食堂室に入った


「お兄ちゃん達なんか様子がおかしくなかった?」


山吹が気にしながら席に着く


事情を察した時緒は呆れたようで気にしないように言いながら席に着く


遅めの夕食を食べていると柳がやって来た


「時緒〜飯食ってからで良いから話できないか?」


「良いけど何?」


「ビジネスの話だよ!時緒にとって良い話だ」


食事を終えて柳と時緒はビジネスの話をし始めた


サンプルをいくつか渡された時緒はどうやら早速試作品を作るようだ


「使ってみないとわからないからサンプル貰えたのは大きいわ」


そう言いながら閉店したあとむやの厨房で作業を始めた


香ばしい香りと甘い香りが漂ってくる


2階にいた家族と南條と紫堂が匂いに誘われて降りて来た


「お?良い匂いだなぁ…試作品作ってたのか」


「勝手に厨房借りてごめんなさい…どうしても試してみたくなって…」


「流石〜そこが時緒の良い所だよ。思い立ったが吉日で行動出来る所がね」


嵐志は嬉しそうに時緒を眺めた


父である東吾も納得しているようで使える道具は好きに使って良いと言ってくれた


「お前が良ければ少しなら店の材料を使っても良いぞ…色々試したいんだろ?」


父の言葉は正に渡に船だった


真剣な表情で菓子を作る時緒の姿を熱い目で見つめる南條と紫堂は惚れ直したようだった


「美しい姿だな…正にパティシエになる為に産まれてきた子だよな〜」


「同感だ…見ろよ…洗練された動きの妙よ…」



南條と紫堂の会話を聞いた時緒の家族はアイコンタクトをする


「どっちがお姉ちゃんの心を掴むんだろうね」


「そうだな…変な奴よりあいつらが時緒と上手くくっついてくれたら良いよな」


「同感だな…どちらも決め手に欠けてるようだけど…」


そんな家族の会話を知ってか知らずか時緒は嵐志に声をかけた


「お兄ちゃんそこの網取って〜」


「わかった!冷ますんだな?」


「誰かこれ混ぜてくれない?」


「これって艶出し用のジャムだね?」


嵐志と山吹も手伝って試作品の菓子が完成したようだ


「さぁお待ちかねの試食タイムだよ〜」


時緒が作ったのは美味しそうなフルーツのタルトだった


「わぁ〜綺麗♡」


山吹が思わず声を上げた


フォークを入れるとさっくりとしたタルトがほろりとしていて本当に美味しそうだ


一口頬張ると上に乗ったフルーツとナッツのフィリングが口いっぱいに広がって何とも言えぬ幸福感に満たされた


「美味い!絶妙なバランスが良いよ」


「ナッツの香ばしさとフルーツの瑞々しさがマッチして美味しい!」


しかし時緒は何やら考え込んでいる


「何か一味足りないわ…」


「え?そんな事無いんじゃない?充分美味しいよ!」


「それなら何かスパイスを加えるのはどうだ?」


東吾があっさり解決策を提示した


「それよ!流石お父さんだわ」


それを聞いた柳はいくつかスパイスの小袋を差し出した


「こっちがクローブでこっちがピンクペッパーでこっちがシナモンでブラックペッパーとクミンもあるぞ!他にもリクエストあれば今度持ってくるぜ!」


「ありがとう柳叔父さん!助かるわ!もう一度ここにあるスパイスを加えていくつか作ってみるわ」


「お姉ちゃん私も手伝う!」


「僕も…」


「俺も手伝わせてくれ」


こうして4兄弟で試作品を作り続けた


南條と紫堂もいくつも試作品を食べてお腹いっぱいになった様子で今夜は泊まる事にしたようだ



時緒は新作のケーキを完成させる事が出来るのだろうか?





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