第8話 盗聴器

時緒は貰ったブローチを持って大恩寺に来ていた


「それだね?例のストーカー男からもらったブローチは」



大恩寺静が難しい顔をしてブローチを受け取った



「貴女はこっちでお茶でもどうかしら?」



伯母の新が手招きした



「これってうちの店の和菓子?」



「そうよ〜静が昔から好きでね〜特別に仕入されてもらってるの」



見た目は素朴な蕎麦ぼうろ


味はクッキーに似た風味があるものだった



「これって店頭で置いてないもの?」



「流石ね〜特別に静の為に作って貰ってるのよ。お茶にも珈琲にも紅茶にも合うのよ」



「じゃあお得意様なんだね!」



「これを東吾は大恩寺御用達の名目で売り出したいって言ってるんだけどどう思う?」



「良いんじゃ無い?うちも儲かるし大恩寺に来る人も増えるから一石二鳥だと思うわ。お父様だったらお寺で売る少量のものも作ると思うし」



「時緒ってばそう言う所…東吾に似て来たわね」



「親子なんだから当然じゃ無い」



「新伯母さんと静伯父さんの馴れ初め聞きたいなぁ」



「そ…それはまた今度ね?」



「やっぱりあったぞ…見つけるのに苦労したよ」



静がテーブルに徐に置いたのは小さな部品だった


「これは?」


「高性能な超小型の盗聴器だよ」


「これが盗聴器?」



「奴はこれで時緒の行動を監視するつもりだったようだな。おそらくネットに繋がっていてライブで受信する仕組みのようだ」



その場に居た全員がゾッとした



「これって犯罪じゃ…」



「ああ…個人情報保護法に触れるだろうな」



「どうしよう…対策練らないと」



「しかし今までも犯罪紛いの事でも金の力で揉み消されたのだろう?一筋縄では行かないだろうな」



静まり返る部屋の中



「失礼致します。時緒さんにお客様が…」



「私に客?どんな人物?」



「警視庁の警察官らしくて…」



「今行くわ」



客間に通されていたのは意外な人物だった



「え?南條くん?」


そこに居たのは幼馴染の南條公彦だった



「やぁ久しぶりだね時緒ちゃん…」


「どうしたのよ?」


「君がストーカー被害にあってると聞いてね」


「紫堂くんに聞いたの?」


「ああ…相手はジャン・ポール・デマジオだって?」


「そうだけど…」



「実はなあいつには麻薬絡みの事件に関与している疑惑があってな…過去に女性を薬漬けにして廃人にしたと言う話もあるんだ」


「ええっ?!そんなヤバい奴だったの?」


「今日は注意喚起に来たんだ…事が事のだけに捜査員に見回りさせる事にするよ」


「ありがとう…」


「くれぐれも気をつけるんだよ。帰りは元より仕事に行く時も送迎してもらう事だね」


「俺は奴の事を詳しく調べてみるよ」


「南條くんも気をつけてね」



「どうやら時緒はとんでもない奴に目をつけられたみたいね…これは亜梨沙叔母さんに相談しないとね」


「亜梨沙…おばあちゃん?」



「ええ…今ではイタリアに居てね…裏社会の事に詳しいのよ」



「そうなんだ…」

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