第3話 新たな試み

時緒は帰国してからと言うもの父に頼み込んで厨房で試作品を作っていた



この前の曽祖父の法要の際にも手作りのフランス菓子を持っていって試食してもらっていたのだ



「これなんと言ったかしら?美味しいわね!」



「『ガレット・デ・ロワ』と言って本来は1月6日にキリスト教のお祝いに食べられる神聖なお菓子なの。中に小さな陶器のお人形が入っていて当たった人は王様もしくは女王様になってお願いを聞いてもらえるのよ」



「へぇ〜じゃあ誰がその陶器人形が当たるか楽しみだな」



そして陶器人形が当たったのは時緒だった



そして時緒はこの時お願いしたのは自分の作る洋菓子をあとむやの店頭に置いて欲しいと言う事だったのだ



「私が自分のお店を持つにはまだ経験と知識が足りないわ…お店を作る軍資金も必要だわ…他の洋菓子店に修行をし直すのはフランスに留学した意味が無くなってしまうわ…だから早く軍資金を集めて経験を積む為にはあとむやの店頭で私の作ったお菓子を売る事なの」



父東吾は悩んだ末に試験的に店の一部を改装して時緒の作った洋菓子を置くスペースを確保するのだった



祖父亜都夢は昔から時緒の味方で子供の頃から時緒の作ったお菓子を食べて評価してくれていたのだ



「本当に亜乱の元へ修行に行かせて正解だったのう…」



時緒はフランスに居る亜都夢の弟である亜乱の経営する洋菓子店で修行していたのだ



頭角をメキメキ発揮させ周りのパティシエの卵達を圧巻させていた



「時緒は元々才能があったからのう…兄の頼みで引き受けたが結果的に良かったようじゃ」



と当時の亜乱は言っていたという



時緒は試作品を完成させて父や店の菓子職人達に食べて貰った


時緒が作ったのは『ピティヴィエ』と呼ばれるガレット・デ・ロワとよく似たフランス菓子であった


違いはガレット・デ・ロワが1月だけ提供されるのに比べ『ピティヴィエ』は1年中提供されるのだ


味は好評であとむやで新作として数量限定で店頭で売られる事になった



1週間の限定で店頭に置かれるようになった時緒の『ピティヴィエ』はお客様に受け入れられるのだろうか?

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