再会6

「ねぇ、志気、さっきも言ったけれど、本当にファボット君大丈夫なの?」


 「俺を信頼してないのか?」


 ここは、寮長の部屋。

 寮長と副寮長は一人部屋になるらしいけれど、志気君はいつも寮長の部屋に来ているらしい。


「しているけど・・・・・」


 「さっきも言っただろ?前にも同じ事があったと」


 前にも今日と同じ事があった。

 あれはパーティーの翌日だったと思う。

 数日前から母には黙っていたけれど、体調を崩していて、志気君のいるホテルの部屋に遊びに来ているときに、いきなり倒れてしまった。

 その前に、僕の体の事を聞いていたので、志気君は僕をベッドに連れて行ってくれて、母が向かえに来るまで僕の介抱をしてくれた。

 入院することはなかったけれど、母が迎えに来るまでには常備薬を持っていたため、それを飲んで落ち着いてはいたけれど、後々母に起こられた記憶がある。


 「そういうことがあったんだ。だから、病院は必要ないって言ったんだね」


 「そうだ。それよりも、雄姿、俺、コーヒーが飲みたい。インスタントじゃなく、ドリップされたやつ」


 この寮長の部屋には色々置いてあるみたいだ。

 二人部屋と違って、一人部屋は収納スペースも多い。

 本が多いみたいだけど、ベッドにはクマのぬいぐるみが置かれている。


 「分かったよ。今から入れるから、少し時間掛かるけど、いい?」


 「もちろんだけど、ブルマンにしてくれよ」


 棚の中には何種類かのコーヒー豆が常備されているみたいだ。

 その事を知っている志気君は自分の飲みたいコーヒーを頼むらしい。


 「はいはい。わがままなんだから」


 わがままな志気君。きっと寮長さんの前にしか出さない姿なんだろう。

 僕が知っている志気君は、優しいけれど、頼りになるお兄さんというぐらいしか知らない。


 「そういえば、言い忘れたけど、ファボット君がこの学園というか、この寮に慣れるまでの間、色々とお願いしてもいい?僕より顔を知っている志気のほうが安心できると思うし、部屋のことも気になるから・・・・」


 「俺は別に構わないが、いいのか?」


 「体の事もあるし、知っている人が側にいるほうがいいんじゃないかな」


 「分かった。お前が言うなら、そうさせていただくよ」


 「ありがと、志気」


 こうして二人の夜が更けていった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る