「ケーキより甘い」甘藷食う母のもう忘れた庭の芋の無味の味(み)

 私の買う薩摩芋が最近お気に入りの母。実際、とても甘いのです。一個五十円位で有難いことに。

 終戦の日の番組の前で彼女が美味しい、美味しいと食しているのを見ると、祖母が芋を嫌ったことを思い出します。中学生の私が趣味でお芋を育てて持って行っても口にしない人でした。祖父が好きでしたから問題ないのですけれども。その祖父の為、戦争中、曽祖母が庭で芋を育て、それを手伝ったのが祖母の芋嫌いに関係していた模様。昔の私、空気読め、と今は思います。苦労して味もないお芋、という感覚らしいことを、たまに祖母が溢す一言を何年かかけて集め、感じとりました。

 私の直系は戦場に出ていないこともあり、余り戦争を語る人は近くにいません。食糧難も余り深刻ではなかったようですが、それでも食べ物に関する反射的な反応にはよく触れました。

 シベリア抑留された〇〇さん、××君と知らない縁者の名が時に当然のように語られた昭和の子供でもあります。親戚が満州鉄道の関係者らしく満州と抑留の話は比較的、身近でした。父方の祖母は満州で出産しています。早めに情報を掴み、引き上げる際、赤十字の旗を探し隣の船を選んだから同じ船団でも撃沈されない側になれたそうです。私が姑に似ている、と母に言われるのが昔は嫌だったのですが、今ならば、確かに似ているな、と思います。

 こんな背景もあり、大学で私がロシア語を第二外国語に選んでいることを明かせない相手もいました。周囲が勝手に気を遣い、予め隠しているパターンで、もし話したらご本人がどう思ったかは判りませんが。親も戦争を知らない世代の私もそういうところで何処か戦争を自分事として感じていました。

 同時に、それでもロシア語を学んでいるところに、戦争の過去にとらわれず生きられたことも痛感します。

 次世代に何を伝え、何を解放するかは難しいことですね。

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