第3話 ワシの若いころはな

俺は池の方に目をやった。


その池の中から巨大なゴーストが出現する。


水をかき分けながら出現したのはありえないくらい大きなゴースト。



名前:ヒュージゴースト

レベル:198


「れ、レベル198?!」


それを見て驚いている女の子に言った。


「何を驚いている?」

「レベル198ですよ?!驚きますよ!」


右往左往という言葉が似合うような行動をとる。

とにかく、何をしたらいいか分からないようなそんな感じだ。


「レベル198なんて高すぎる!ここは応援を!要請しなくては!」


そうして応援を頼み始めた女の子の横で俺はウルフに乗ったまま命令した。


「ウルフ。くらい尽くせ」

「ウォォォォォォ(頷く)」


ダッ!

池の中に飛び込んだ。


ジャバジャバ!


底に足が届くので水に濡れるのも関わらず進んでいく。


そして池の中からは


「手が出てきていますよ?!避けて!それに掴まれては池の中に引きずり込まれます!」


女の子が注意してきたがウルフに触れた瞬間逆にウルフに取り込まれた。


【ウルフ(魔獣)がゴーストを吸収しました】

【ウルフの知力が上がりました】

【ウルフの魔法耐性が上がりました】


そのままウルフはヒュージゴーストに向かっていき。


「ガァッ!」


ブチッ!

グチュッ!


ヒュージゴーストの腹を食い破っていく。


「そ、そんなゴーストには物理攻撃が効かないのに!」


女の子が叫んでくる。

俺はそれを聞きながら呟いた。


「【ウィンドスラッシュ】」


風の刃を作り出して俺は横一文字にヒュージゴーストを切り裂いた!


物理無効と呼ばれていたゴーストの体は簡単に裂かれた。


そして


「オォォォォォォォォォォ……」


断末魔を上げて光となって消えていくヒュージゴースト。


池の水も引いていく。


それから


「けほっ……」


残ったのは金色の髪の女の子だった。


俺はウルフから降りてその子を抱えると赤髪の女のところに戻った。

そして女の子を預けた。


「この子でいいんだよね?」

「は、はい!ありがとうございます!」


そう言って頭を下げた赤髪。

だったが顔色が悪い。


「あ、あれ」


自分の腕の中で眠る女の子を見て口を開く。


「こ、呼吸が止まっています」

「ふむ」


俺はそう言って【心眼】を開いた。



状態:呪いEX



「なるほど、呪いEX状態にあるのか」

「の、呪い?!」


叫んだ女の子に答える。


「俺なら癒せるがどうする?」


俺はありとあらゆる魔法を極めた。

その過程で治癒魔法と呼ばれるものももちろん極めた。


だからこの呪いであれば解除できる。

というより俺にできないことは無い。


魔法は元より不可能を可能にする技術である。


だからその魔法を極めたのであれば。






「さて、どうする?」

「そ、それではお願いしますか?今はあなたしか頼れる人がいません」


俺は令嬢の額に手を当てると呟いた。


【呪い解除】


ポォォォォォォォォッ。


俺の手から淡い緑色の光が放たれる。

そして……


パチリ。


令嬢の目が開いた。


「あ、あれ?ここは」


キョロキョロ見てから俺を見ている。

どうやら目を覚ました理由がよく分からないらしい。


「ゴーストに捕まっていた。それで助けたんだよ」


俺がそう言うと赤髪の女はより詳しく令嬢に説明を始めた。


最後まで聞く必要もないので俺はふたりにこう言った。


「ではな。先を急いでいる」


俺はウルフに首輪をつけ直した。

魔獣化させていると魔力の減りが半端ない。


重要な場面で魔獣化できなくても困るから。

今は抑えさせようと思う。


カチッ。首輪をつけて俺はふたりに言った。


「ではな、またどこかで会えたらいいな」


俺はそのままウルフに乗って森を抜けていく。

その道中現れたゴーストはバッサバッサと切り裂いて進んでいく。


「物理が効かない、か」


さっきの女はそう言っていたが。


「最近の若者は……ワシが若い頃は気合いで攻撃できるようになれと言われたのにな」


おっとまた老害になろうとしてしまった。

反省反省。



森を抜けると草原に入った。


「ウルフ」

「ガルっ!」


俺は駆けていくウルフに捕まって一気に草原エリアも抜けた。


そうして、王都にたどり着いた。


「ふむ、無事に辿り着けたようじゃな」


だが、


「えらく、雰囲気が変わったな。数十年前はもっと華々しいような感じだった気がするのだが」


今はなんというか禍々しい気配に包まれているようだった。


「数十年もあれば王都の雰囲気くらい変わるか」


俺はそう呟いて門のところに歩いた。

何はともあれ、とりあえず入国許可を貰わないといけないな。


各王都の門には入国者を制限する機能がある。


そしてその門の警備をしている警備兵に入国許可を貰ってやっと入国できる、というのがこの世界のシステムだ。


俺はそうして門のところまで進んだ。


大きな門のそばには槍を構えた男。


「何者だ?」


そう聞かれて答える。


「ルーク」


こんな名前はどこにでもあるような名前だ。

ありふれた名前だから本名を名乗った。


当たり前だが俺の本名を聞いても顔を変化させない兵士。


「入国検査を行う。こちらへ」


俺はそう言われて兵士に近寄ると入国審査を受けて言った。


そして最後にこう言われた。


「貢ぎ物を」


どこの国もそうだが入るのに貢ぎ物が必要というシステムがある。


俺たちは王の敷地内に入る、という立場の人間だからだ。


それに対するお礼という意味合いがある。


原作でもあったことだし数十年前も似たようなことをやらされたので戸惑うことは無い。


「これで、すまないが今手持ちが少なくてな」



名前:魔王石



俺は数十年に入手した鉱石を取り出してそれを渡した。


当時ありふれた鉱石だったが、こんなもので通るだろうか?


そう思っていたら兵士は目を見開いた。


「しょ、少々お待ちくださいませ!お客様!」


(あきらかに対応が変わったな)


そうして待っていたら今度はモノクルを付けた老人が出てきた。


「お客様。詳しいお話をお聞きしたいので、詰所まで来てはいただけませんか?」

「え?う、うん?」


やばい。

何かヤバいものでも渡したか?!俺!


(盗品とかって思われてる?!もしかして?!)


もしかして入国前にピンチ?!

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