第2話
思い立ったが吉日。
とりあえず小屋を出て俺は小屋に目を向けて呟いた。
【ミニマム】
【アイテムポーチへ】
こうすることで小屋を小型化して持ち運ぶことが出来る。
小屋はアイテムポーチに入ったので俺は村の方に歩くことにした。
実に数十年ぶりになる。
村のみんなはどんな反応をするだろうか。
『お前、生きてたのか?!』
『しかも若返ってる?!』
とか言われるんだろうなぁ、とか思いながら降りたら
「んなっ?!」
「グルっ?!」
村は消えてた。
「おかしい!数十年前まではここにあったのに!なっ?!お前も見たよな?!ウルフ!」
「グルゥ(頷く)」
「おいおい、勘弁してくれよ」
別れの挨拶でもしてやろうと思ったのに。
奴らは俺に別れの合図もせずに消えやがった。
「最近の若いもんは礼儀がなっとらん!はぁ」
思わずそんなことを呟いていた。
それで気づく。
おっと、これではまるで老害というやつではないか。
老害にはなりたくないよなぁ。
「はぁ、とりあえず王都の方でも目指してみるか」
王都の方に行くのももう40年振りだ。
色々変わっているかもしれん。
ナウなヤングがパリピなのかもしれんが、クソジジイも頑張ってナウなヤングでパリピになります。
てわけで王都目指すけど
「どっちだっけ?王都」
「クゥン(首を横に振る)」
「お前も覚えてないか」
いやぁ、困ったな。
なんせ40年も引きこもっていたから過去のことなんて忘れちまったよ。
ワシはの方角から来たのかここはどこなのかも忘れてしまった。
だが、ウルフは一つの方向を向いて吠えた。
こいつはなにか思い出したのかもしれん。
「なんだ?西か。まぁいい。行ってみよう」
◇
道を歩いてたら薄暗い森に辿り着いた。
「幽霊とか出そうだなぁ」
俺がそう呟くとウルフはスキルを発動させた。
「キャウン!」
【気配察知(嗅覚)】
「グルグル」
前足で地面に絵を描いてどこになにがいるかを教えてくれたウルフ。
「やるじゃないかウルフ。えー、なになにゴーストタイプのゴーストが出る、か」
「(頷く)」
そのままウルフはしゃがみ込んだ。
前足だけを立てて後ろ足は曲げた。
これは
「乗れということなのか」
「クゥン(頷く)」
俺はウルフに乗った。
「お前の方が走るの早いもんな」
ウルフは俺を載せた状態でもスピードを落とさずに移動することができる。
なので今回はその脚力に頼ることにする。
「グルっ」
タッ!
ウルフが走り出す。
森の中に入っていく。
鬱蒼とした森の中は光が届かない。
木々の間から少しだけ太陽の光は届くがそれだけだ。
薄暗い部屋の中でスマホのライト機能を使った方がまだ明るいようなそんなレベルの暗さ。
「これはゴーストが好むタイプの森だな」
あいつらはこういうジメジメした環境を好む。
まるでゴキブリのように。
そのとき、バシャッ!
ウルフが水溜まりを踏んだ。
ニュオッ!
水溜まりから手が生えてきた。
「キャウン!」
それに足を取られそうになったウルフ。
そして俺は投げ出された。
だが、なんとか空中で態勢を立て直す。
ウルフは水溜まりから生えてきた手に拘束されていた。
なんとか振りほどこうとしていたが。
スカッ!スカッ!
ウルフの手足は手をすり抜ける。
「ふん」
俺は水溜まりに向かって魔法を使った。
【ファイアボール】
ドッ!
放たれた火の玉が水溜まりに向かっていく。
バシャン!
地面がえぐれた。
一瞬にして水分は蒸発。
トッ。
俺の横に着地するウルフ。
どうやらゴーストから逃れることが出来たようだ。
「行くよウルフ」
俺はもう一度ウルフに乗ろうとしたが、そのとき
「けほっ……けほっ……」
咳が聞こえた。
さっきゴーストを倒した方向からだ。
地面が抉れた場所。
そこに向かってみると
「あれ?」
さっきは見えなかったけどえぐれた地面の底に女の子がペタっと座り込んでた。
俺の声に気付いたのか顔を上げる少女。
「た、助けですか?」
聞いてきたその瞬間だった。
ニュっ!
今度は穴の底から横から手が伸びてくる。
「やだ!離して!」
その手から逃れようとしている少女だが、無理なようだった。
【
俺は呟いた。
その瞬間手は蒸発するように消えていった。
光となって消えていく。
【ゴーストを撃破しました】
【ゴーストを撃破しました】
【ゴーストを撃破しました】
ゲーム世界特有の戦闘ログがなにが起きたかを説明してくれる。
どうやらゴーストを完全に消滅させることができたらしい。
それを見届けてから穴の底にいる少女に手を差し伸べた。
「あ、ありがとうございます」
手を掴んで引き上げる。
俺はそのままウルフに向かっていくがそのとき女の子に声をかけられた。
「あ、あの助けてくれませんか?」
「もう助けたじゃろ?」
「違うんです。ご令嬢が。ゴーストに連れ去られたのです」
「あんた一人が犠牲者じゃないってこと?」
こくっと頷く女の子。
「ウルフ(場所は分かるか?)」
【気配察知(嗅覚)】
前足でビシッ!と方向を示したウルフ。
ウルフはそのまま体をデカくした。
それを見て女の子が口を開いた。
「さ、サイズ変更?!モンスターですか?!それは!」
叫んでた。
「そうだけど」
そう言いながら俺はウルフの背中に飛び乗る。
女の子を見下ろして聞く。
「乗らないの?置いてくよ。この森暗くて怖いけどいいの?」
そう聞くと女の子は走って飛び乗ってきた。
「恩に着ます。申し訳ないのですが急いでください。ご令嬢は私よりも先に誘拐されております」
俺はそれを聞いてウルフに言った。
「久しぶりの獲物だ。ウルフ」
「グル(頷く)」
俺はウルフの首につけていたリミッターを解除してやることにした。
「さっきは無能を晒させてすまなかったな。食い荒らしていいぞ」
「グォォォォォォオォォ!!!!」
ウルフの毛並みが変わる。
白い毛並みはどす黒い毛並みへと変貌を遂げる。
それはまるで、血に飢えた獣のようだった。
それを見て女の子は叫んだ。
「ま、魔獣?!」
「魔獣化さ」
俺はそう言ってウルフに言った。
「行け!」
「グルっ!(時速10000キロで走る)」
「きゃっ!」
女の子が吹き飛ばされそうになったので腕を掴む。
まるで飛行機から放り出された乗客のような顔をしている。
「し、死ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「最近の若……」
そう言いかけながら俺は【風圧無効】のスキルを付与してやった。
だがあまり意味は無かった。
ピタッ!
ウルフが一瞬で目的地についたからだ。
そして、そこには
めちゃくちゃ広い池が広がっていた。
例に漏れず薄気味悪い池。
Tips
この世界ではモンスターと魔獣は区別されている。
モンスターとはいわゆる動物とは違う生命体であり、魔獣はモンスターをより強力にした個体のことである。
そして意図的にモンスターを魔獣にすることを魔獣化とされる(なお、ほとんど失敗する高難易度技術である)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます