地獄への門


 パナマシティの観光は、正直くっそつまらなかった。


 経済的にかなり苦しい国家であり、見栄を張る余裕すらないこの国はちょっとした田舎町が大都会となる。


 そんな田舎町(大都会)で楽しめる場所があるのかと言われれば、楽しめる場所は少ないだろう。


 色々な料理を食べるのはまぁ、それなりに楽しかったがそれ以外に楽しめる要素がなかった。


 うーん。星3ってところだな。


 命の危険を感じなかったという点と料理がそこそこ美味しかったから、そこだけは評価してやろう。


 そんな訳で一日過ごした後、俺達は手配されていた車に乗って五大ダンジョンへと向かう。


 徐々に徐々に景色が変わって行き、やがて人の数が凄まじく少なくなっていた。


 真のド田舎。ここには、本当に生きる手段を失ったもの達しかいない。


 麻薬カルテルやマフィアですら、こんなヤツらを使いたくないと吐き捨てるようなゴミ溜め。


 そんな中を車で走る。


「首都から少し離れれば、随分と何も無い景色になるもんだ。退屈だな」

「網皆さん外の景色なんて飽きてゲームを始めてますしね。ボスもやりますか?」

「いや、対戦系のゲームは俺が強すぎるからね。偶にはみんなでいい勝負でもして欲しいよ。俺はその間に一狩り行く」

「140を1人で........?ちなみに、どの程度で一周できるんですか?」

「ん?いや、そっちじゃなくて護石集めをするつもりだけど」

「炭鉱夫だ。炭鉱夫になろうとしている人がいる」


 炭鉱夫(リーゼント狩り)。


 某、モンスターをハントするゲームにおいて、護石救済クエストとして存在する炭鉱夫クエスト。


 このクエストのサブクエを達成することで、沢山の護石が手に入るのだ。


 まぁ、大体はゴミなんだけどさ。


 いい感じの護石が欲しいのだ。具体的には、痛撃6攻撃12スロ3とか(強欲)。


 最近、4gの方は団員達も飽きてきて、スタイリッシュな狩りができるダブルな方が流行りとなりつつある。


 樹海に幽閉された悲しき怪物である俺は、ソロでやっててもいいのだが、みんなが楽しく遊んでいる中で1人だけ樹海でゴリラと戯れるのも悲しいのでこうして五関を集めているのだ。


 何気に買ってちょこっとだけど遊んで樹海に戻ってたから、具現化できると思ってなかった。


 と言うか、これ遊んだの中学生の頃じゃね?


 少しだけ能力が成長し、具現化できなかったはずの玩具も具現化できているということに驚いたのだが、残念ながら、具現化できるのは所詮おもちゃ。


 ゲームの種類が増えたこと以外に、喜べる点が無い。


 本当に喜べる点がそこしかない。中学生になれば、そりゃ食べ物は食べ物と認識するから具現化できないし、ゲームの幅が増えただけ。


 マジで賑やかし要因なんだよね。未だに最強がワイヤーってまじ?


「わたしも御一緒してもよろしいでしょうか?」


 俺が炭鉱夫になろうとしていると、ミルラも一緒にやりたいと言い始める。


 ミルラ、実はこの手のゲームがあまり上手では無い。


 ジルハードよりは上手いが、それでもかなり下手な部類だ。ストーリークリアも俺がキャリーしたしな。


 なんなら、カマキリ一式まで手伝ってあげた。


「いいけど、ちゃんとテンプレ装備は組んできたの?」

「コルムダオラテンプレなら。あのクソ犬っころ、強すぎませんかね?普通に勝てないんですけど」

「超帯電状態の時とか強いよなぁ。動きが早すぎて途中からボコられるだろ?」

「いやほんとに辛いです。獰猛化個体が特に。後、弱点が殴りにくくて........」

「大剣持って、軸合わせのタイミングで頭にぶち込むだけだろ?」

「それが出来たら苦労しないんですよボス。私、この手のゲームは脳筋思考が働くみたいで、相手の攻撃とか全く見ずに殴る癖があるんですよね」

「大問題だな。このゲームに限って言えば、大問題だ。ゴッドイーターの方が合ってるよ多分」

「私もそう思います。あっちは脳死バレット撃ってたら勝てますからね。強いです」


 同じ狩りゲーだが、難しさで言えば圧倒的にモンハンの方が難しい。


 まぁ、ゴッドイーターはそもそもNPCをお供として連れて行けるってのが強いよな。


 完全にソロで攻略する前提の難易度をしてる。


 対するモンハンは、村は余裕でも集会場がきつい。特に、Worldになる前までの作品では集会場はマルチ想定の体力だから、時間もかかるし時間がかかれば被弾も増えるしできついのだ。


 未だに忘れてないからなウラガンキン。お前マジで嫌い。絶滅しろ。


「んじゃちょっと護石集めしたら、超特殊とか行くか?」

「あ、わたしミラルーツに行ってみたいです。なんかめっちゃかっこいいんですよね?」


 ほな、ミラルーツ行くか。


 過去作のモンスターがほぼ全て出てくるこのゲームは、一種のお祭りゲー。数も多いからコンプは難しく、その分やりごたえがある。


 俺は樹海の老害なのでギルクエの方が好きなんだけど。


 でも、ハブられるのは寂しいのでこっちでもキャリーできるように頑張ります。


 尚、その後、俺がルーツ行くと言ってたのに装備選択ミスってカマキリで行き、二乙してた後ミルラが1乙してクエスト失敗となった。


 いやごめん。普通に耐性のこと忘れてたわ。


 後、このゲームは三乙目をしたやつが戦犯だから。よってミルラが戦犯です。


 ちょっとプリプリと怒りながら俺の足を踏むミルラは、不覚にも可愛かった。




【モンスターハンターダブルクロス】

 2017年3月18日に『MHX』の内容強化版として、ニンテンドー3DS用ソフト『モンスターハンターダブルクロス』が発売された。

 World以降の作品は最早別ゲーなので、古き良きモンハンはこの代で最後。集会場個体の体力をソロで狩るのは苦行だろ普通に。

 尚、ゲームとしてはかなり面白い。大体理不尽すぎる判定にキレる事になるが、それを乗り越えた先に達成感がある。難易度で言えば(World、ライズ系統、gのないタイトルを除く)多分1番簡単だと思われる。少なくとも4gよりは簡単で、私でもクリア出来たので気になったらやってみるといい。




 怒ってるミルラは可愛いことが判明したり、普通にモンスターに轢き殺されたりしながら移動すること2日。


 俺達は地獄への門の入口へとやってきていた。


 パナマとコロンビアの国境線に沿って、黒い壁とドデカイ門が置かれている。


 ここが最後の五大ダンジョン“地獄への門ヘルゲート”。世界最大のダンジョンにして、人類が500年もの間攻略できなかった攻略不可能ダンジョンだ。


「これが五大ダンジョン“地獄への門ヘルゲート”。黒けりゃ良いってもんじゃねぇぞ?」

「ジルハードの言う通りだ。なんでも黒くすればそれっぽく見えるわけじゃない。だいぶだせぇな」

「もっと、こう、なんかいい感じの配色とかなかったのかな?ピギーみたいに恐怖を覚える色とか」

「そんな色があったら今頃全人類が発狂してる。さすがにそれは勘弁願いたいな。それで?門を開けて堂々と入るのか?」

「もちろん。それ以外に選択肢は無いからね」


 色合いが真っ黒すぎて逆に怖くないと言うとんでもないクレームを入れられた地獄への門。


 まさかこのダンジョンもセンスがないと言われるとは思ってなかっただろう。


 なんというか、厨二病が治りきらなかった可哀想な高校生みたいな感じがする。ミルラ、お友達だぞ。


 黒けりゃ良いってもんじゃないんだよ。もっと赤黒い感じとか、あえて白い部分も出すとか工夫しなきゃ。


 そんなことを思いながら、もんに近づく。


 そして時分の10倍ぐらいありそうな門を見上げていると、何やら文字らしきものを見つけた。


「汝、一切の希望を捨てよ........?おい、なんか書いてあるぞ」

主人マスター、あの文字が読めるのですか?」

「え?」


 俺がサラッとそこに書いてあることを読むが、レミヤが首を傾げた。


 確かにその言語は俺たちが知っているどの言語にも該当しなさそうな見た目をしている。


 1番近いのはアラビア語かな?でも、アラビア語よりもなんかうねうねしているから違いそう。


 ........あー。ここでも悪さをするのか神様翻訳。


 言語を正確に理解できないは、本能的にその言葉がなんと書いてあるのかわかる。そして、この世界に存在しないはずの言語ですら、この力を使えば読めてしまう。


 エルフの言葉を初めて聞いた時と同じか。神のギフトが完全に悪さをしているな。


「まぁ、読める。で、汝、一切の希望を捨てよって書いてある」

「ちょっと待っててください。今調べますから........ありました。分かりましたよ主人マスター。このダンジョンが何をモデルとしているのか」


 今のでわかるんだ。それだけ特徴的な情報なのかな?


 地獄はこの世界にごまんとある。その地獄のどれを参考にしているのか。気になるね。


「おそらく、ダンテ神曲:地獄篇をモデルにしているかと」

「ダンテ神曲?また?」

「おそらくは。門に書かれた“汝、一切の希望を捨てよ”の言う一場面は、地獄篇に登場します。また、蜂と蛇が出てくるのもこのお話です」

「可能性は高そうだな。まさか2回連続でダンテ神曲か。この調子だと、どこかに煉獄もありそうだな?」


 またしても出てきましたダンテ神曲。


 ベアトリーチェスコスコおじさんが書いたその小説の中には、三つの大きな章で分かれている。


 地獄篇、煉獄篇、天国篇。


 ローマに存在した天国はこの天国篇がモデルとなっていた。


 今までおなじ話を使っていたことなどなかったから選択肢から外していたが、なるほど。こういうパターンもあるんだな。


「どうしますかボス?一旦作戦を建て直しますか?」

「作戦もクソもないだろ。みんな頭の中に地獄篇がどんなものかは入ってるな?」

「もちろん。くっそ調べたしねぇ」

「一応は。基礎だけは知ってる」

「詳しい話は分かりませんが、同じく基礎だけは」

「フォッフォッフォ。しらんでも全部切ればええわい」

「殴ればそれでいいのよん」

「そうだな。どうせ殴れば解決だ」

「問題ないです」


 みんな問題無さそうなので、ほな行きますか。


 作戦?その時考えればいいんだよ。いつもそうだったしな。


 こうして、最後のダンジョン攻略が始まった。


 クソ神よ。これでバックれたら殺すからな。ピギーを持って。






 後書き。

 この話を書いてたらモンハンやりたくなってワールド開いたよね。尚、ゲーミングノートしか持ってない上に、ファンの音が煩いから30fpsでやっている模様。

 最低限ゲームが動けば私は文句ないよ。それよりも騒音をなんとかしてくれ。

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