雑すぎる計画
レイズとカルマのデートをみんなで覗き見し、全員もれなくカルマの可愛さに脳を焼かれてから2日後。
俺は最後の試練に挑む準備を整えていた。
あぁ、マジで良かったな二人のデート。
あんなに初々しいデートを見せられた側としては、それはもう心穏やかニヤニヤである。
恥ずかしがりながらもちゃんとレイズに甘えるカルマ可愛すぎかよ。普段を知っているだけにギャップが凄すぎて萌えるし推せる。
アリカなんて、カルマの隣が欲しいとか言い始めてレイズを本気で毒殺しようか迷ってたしな。
ミルラなんて途中から鼻血を出してたし、レミヤはずっと録画を回してた。
その後レイズをハブって鑑賞会をしたが、甘々すぎてコーヒーが砂糖だったね(?)。
おい誰だよ俺のコーヒーに砂糖を大量に入れたのは。
早くくっついて欲しいと思う反面、もう少しこの心地の良い距離感を眺めていたいとも思う。
あーあの時間こそ真の平和。誰もが平和な時間を過ごせる素晴らしいコンテンツだ。
尚、みんな中身が腐っていることには目を背けておく。
人のデートを録画して、ポップコーンとコーラを用意しながら鑑賞会とか終わってるよ俺たち。
でも、カルマちゃんが可愛かったんでしょうがない。
俺もリィズとデートとかしたいな。今度誘うか。
「で、計画を立てたわけなんだが、ぶっちゃけ何も思いつかん。もう真正面から突っ込んでいいか?」
「いいんじゃね?俺も調べたが、それ以外に方法がない。情報が少なすぎるしな。仕方がない」
「グレイちゃんの言うことに間違いはないよ。それで行こう」
今日部屋に集まっているのは古参メンバーの3人。
俺とリィズとジルハードである。
何気にこの3人で過ごすのは久々な気がするな。リィズは随分と大人になってあっちこっちに引っ張りだこの人気者だから、夜以外はあまり一緒にいないのだ。
大体アリカに取られてしまう。薬の実験にはちょうどいいらしい。
イカれてるよウチのロリっ子。
「もん以外からの侵入は不可能。かつて空からの侵入を試みた奴らは行方不明になって消えたらしい。今じゃ南米の空を飛ぶのは禁止されている。俺達も下手に入るとやばそうだな」
「領空まで取ってくるダンジョンとか質が悪ぃな。世界樹だって空は中の元にあるんだぞ」
「そう考えると、このダンジョンはかなりの被害を生み出しているんだねぇ。で、門からしか入れないから門から行く。そう言う訳だね?」
五大ダンジョン、
色々と調べた結果、いつものように空から侵入するのはあまりにもリスクが高いという結論になった。
かつて、まだその特性が知られていない時に南米の空を飛んだ飛行機は尽くロスト。
門を通らずに侵入を試みたもの達は誰一人として帰ってくることも無く、地獄の口の中に放り込まれたのである。
どんなことが起こるか分からない以上、俺達が空から入るのはリスクが高すぎる。
結果、正面からピンポン押そうぜという結論に至ったのだ。
尚、その後は適当。とりあえずみんなで固まって動こうね。が、作戦である。
あまりにも雑すぎる作戦だ。だが、情報が少なすぎる以上、これよりも具体的な作戦を立てられる訳でもない。
ちなみに、門はパナマとコロンビアの国境線らしい。
本当にご丁寧に南米だけをダンジョンにしてくれた、世界最大のダンジョンである。
尚、門のあるパナマくんはほぼ死んでいる。
滅んでは無いのだが、五大ダンジョンが目と鼻の先にあるという事で逃げる人が多かったのと、第一次ダンジョン戦争の時の被害かそれなりに大きくてギリ国家として保つので精一杯なのだ。
パナマくん、何も悪いことしないのにあまりにも不憫。泣いてもええんやで。
おかげで治安はクソ悪いが、グダニスクに比べたらマシらしい。
世界の治安の悪い国家でもトップ10に入ってないんだから知れてる知れてる。ちなみに、いちばん治安が悪いのはグダニスクだ。
そのサイトによれば、毎日100人以上の死亡者が出ており、日によっては千人以上の死傷者が出るんだとか。
うーん。せやな。
もっと言えば、そこら辺に死体がころがっているし、店内のBGMの代わりに銃撃が聞こえてくるような街だ。
どっかのヒットマンの家族が死んだから葬式しようとしたら、その葬式を狙った組織が参列者を全員撃ち殺すとかあったし。
今思えば、よく俺あんな場所で呑気に生きて来れたな。
「パナマへの入国方法は?」
「既に終わってる。今や俺達は正式な国家なんだぞ?南米解放してあげるから、ちょっと寄らせてって言えば首を縦に振ってくれる。俺達が死んだ責任も問わないって言えば、バカが死ぬか英雄が帰ってくるかの二択で被害は無い」
「MEX(メキシコ)からの妨害は?」
「あると思うのか?今ヤツらや、テロリストが何故か持っていた装備について
本当に素晴らしいタイミングでMEX(メキシコ)の行動を封じてくれたな。
あの退屈な議会を速攻で終わらせてくれたし、実はあのテロリスト共いいヤツらなのでは?
まぁ、その大半は今頃地獄で悪魔にケツをファックされているだろうが。
「突入した後の事を除けば完璧だな」
「全くだ。その後が重要なのに、そこに関しては何も分からないんだから困るぜ」
「大丈夫、私が守ってあげるから」
「エンシェントドラゴンの力を持つやつが言うと説得力があるね。残念なのはおつむぐらいか?」
「ジルハード?殺すよ?そんなに奥さんに会いたいなら言ってくれればいいのに」
「待て待て流石に冗談だ。俺が悪かったからその手を下ろしてくれ。ボスもなんとか言ってくれ」
「
「俺はトニー・スタークじゃないし、それ違う方のアイアンマ─────ぐはっ!!」
こうして、俺達の準備は進む。
さて、最後のダンジョンはどんなダンジョンなのだろうか?
全然楽しみじゃないけど、このクソッタレた試練が終わるということに関しては嬉しいねぇ。
そろそろ、神様への願い事でも考えておくか?もう決まってるけども。
【パナマ】
パナマ共和国。通称パナマは、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の境に位置する共和制国家である。北西にコスタリカ、南東にコロンビアに接し、北はカリブ海、南は太平洋に面する。首都はパナマ市(パナマシティ)。
の存在する場所は南北アメリカと太平洋、大西洋の結節点に当たる。
この地理的重要性からスペイン人の到達以来、貿易の他に人の移動や国際政治において大きな役割を果たす要衝となっており、その役割の重要性のため中米地峡を貫くパナマ運河が通っている。
この世界では割と死にかけ国家。五大ダンジョンの出現とダンジョン戦争、さらには麻薬カルテルやマフィアの抗争なのでボロボロになりギリギリ国家としての体裁を保っている不憫な子。
ハロー!!パナマ!!
という訳でやってきましたはパナマ。
昔は綺麗なビーチがあったりしたそうだが、今となってはゴミが蔓延したスラムよりもヒデェ場所になっている不憫な国である。
一応、五大ダンジョンの攻略は世界的に犯罪。というわけで、俺達は非公式の場としてここに訪れていた。
パナマの大統領、めっちゃ話の分かるやつで助かる。電話をかけて“そっち行っていい?”って聞いたら二つ返事て“ええよ”って帰ってくるとは思ってなかった。
友達の家に行っていい?みたいな感覚だよ。
おかげで面倒が少なくて助かるけどさ。
「ここがパナマか。グダニスクに比べりゃ、まだ空気は綺麗だな。麻薬臭いが」
「いい匂いじゃないか。私は好きだぞ」
「そりゃ植物ならどんなものでも発情できるような変態ならな?俺は至って普通なんだ。お前と一緒にしちゃいけねぇよアリカ」
今日はみんなビシッと黒スーツを決めて、仕事用の姿で来ている。
こうして黒スーツで揃えると、結構様になるのがうちの組織だ。特にローズなんかは普段の馬鹿みたいな格好から変わりすぎててビビる。
誰だよこのクソ渋いオッサンは。
尚、1番似合ってないのはアリカだ。12歳の子供に黒スーツが似合うはずもない。後、俺も似合ってない。スーツを着るというか、スーツに着られている。
「で、向こうは完全にこちらには干渉しない体裁のようだな。死にかけの国家を頑張って生かしているだけあって、頭が回る」
「責任逃れのために、俺たちは知りませんよーって顔をするのか。下手に暴れたら困った顔をしそうだな」
「やめてくださいね?また麻薬カルテルとドンパチは勘弁です」
「俺も勘弁願いたいよ。というか、俺から喧嘩は売ってねぇ」
どうやらパナマは俺達が来たことを知らないと言う体でやり過ごすらしい。
実に賢い。下手に接触るよりかは、言い訳ができそうだしな。
「さて、パナマシティの観光でもしたら国境に行くとするか。車の手配ができないか聞いたら、してくれるみたいだし」
「至れり尽くせりだな。しかも足がつかないようにしてくれるんだろう?」
「おかげで行きは楽だぜ?帰りは知らんが」
帰りの便とか用意してくれてんのかな?出来ればして欲しいんだけど。
パナマとしても、この目と鼻の先にある五大ダンジョンは消したいのだ。しかも、上手く行けば領土が増える。
国としてやり直せるチャンスでもあり、軽い気分で買った宝くじなのだ。
俺達が日本領土以外の興味が無いのも分かってそうだし、ご好意には甘えておくべきか。
こうして、俺達の最後のダンジョン攻略が始まる。
でもその前に首都の観光だな。なんか美味そうなものでも売ってないかな?
物価がクソ高そうだけど。
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