本物
動画配信者兼大統領というとんでもない肩書きを持つアーリに出迎えられ、ホテルでのんびりすること2日。
俺達は遂に国際の場に顔を出すこととなった。
この世界に来た時には想像もつかなかった光景だ。
ただの一般高校生がいつの間にかテロリスト扱いされ、グダニスクとかいうとんでもない国で殺し合いをし続けトップになり、五大ダンジョンと呼ばれる攻略不可能ダンジョンを攻略しで日本を再建したらトップになり、気がつけば国際連合に顔を出すことになっているのだから。
一体どんな人生を歩めば、こんな滅茶苦茶な人生を歩めるのだろうか。
俺以上に頭のイカれた人生を歩んでいるやつがいるなら出てきて欲しい。世界の敵となって命をおわれたかと思えば、邪神を殺した英雄となり、挙句の果てには今こうして国際の場に出ざるをせない人間が何人いる?
あぁ。政治も正直よく分かってないのに、各国の代表たちと話さなきゃならんのか。
「すごく嫌そうな顔をしてるね。大丈夫、ぼくが守ってあげるよ」
「トラブルが起きた方がまだマシだ。アーサー、お前分かってて言ってるだろ」
「あはは!!ただの一般人だったはずの君がいつの間にか世界の代表たんだからね。そりゃ嫌な顔の一つや二つするか」
「けっ、英雄王様は気楽でいいね。ケツをファックされればいいのに」
今回護衛として着いてきているアーサーは、この国際の場でも俺の隣にいるつもりらしい。
多分、ブリテンは俺達と仲がいいと言うアピールをしたいのだろう。
俺としても、アーサーと交友があることを周囲に知らしめるのは、悪くないと思っている。
英雄王の威を借る一般人。
アーサーがジャイアンで俺がスネ夫だな。
ちなみに、他にも護衛はいる。
何かと交渉事には長けている上に能力が優秀なレイズ。そして解説役にレミヤを連れてきているのだ。
更には影の中にナーちゃん、俺の中にピギー、服の下にスーちゃんもいる。
ピギーは昨日ぐっすり寝たらしく元気満々なので、大抵の事はピギーで対処できるだろう。
爆睡しているピギーは可愛い。偶に寝息が聞こえて“ピギー........ピギー”と言っているのだから。
と言うか、寝ている時も“ピギー”って言うんだな。可愛すぎる。
そんなことを思いながら国連本部の中を歩いていると、俺の前に立ち塞がる人物が1人。
こうして会うのは初めてだが、俺は彼を知っている。
第二次世界大戦からやってきたのかと言わんばかりにかの有名な首相にそっくりな男。
ブリテンの首相ウィンステン・チャールだ。
誰に似てるかって?そりゃ“鉄のカーテン”で有名なウィンストン・チャーチルさ。
随分と歳が行っているようで、その見た目はかつて教科書で見たものとほぼ同じ。
違う点があるとするならば、若干白髪が残っていることぐらいだろうか。
昔はイケメンだったのかな?チャーチル昔は“誰だよこいつ”ってレベルでイケメンだったのだが。
「こうしてお会いするのは初めてだなミスターグレイ。私はウィンステン・チャールだ。よく“鉄のカーテン”を作ったやつに似ていると言われている」
「今の地球で鉄のカーテンを物理的に作った日には、翌日あたりに魔物に壊されてる。はじめましてミスターチャール。本来ならばこちらから挨拶に伺うべきなのですが、如何せん最近は忙しくて時間が取れませんでした」
「ハッハッハ!!君ほど忙しなく世界を動いている者もいないだろう。おかげでこちらも色々とやりやすかったよ」
「それは良かった。くれぐれも、三枚舌外交にはお気をつけて」
「ハッハッハ!!それがブリテンだよ!!」
このジジィ、俺が世界で暴れ回ってた裏で色々とやってたみたいだな。
レミヤからの情報では、ブリテンはモロッコの内戦を引き起こさせ、アフリカの支配を狙っているらしい。
EGY(エジプト)が今ハンター協会への対応で忙しくてアフリカの治安維持をやっている場合じゃないからね。
その隙を狙って好き勝手に暴れているのだ。
いいご身分だぜほんと。
「おいアーサー。コイツが世界で最もイカれたやつなのか?」
「そうだよランスロット。僕でも勝てないほどの強者にして、僕の唯一の友人さ」
「へぇ?そんなに強ぇのか?」
チャールと話していると、その後ろで控えていた騎士が興味深そうに俺を眺めてくる。
えーと、どなた?
「あ、紹介するよグレイ。彼はランスロット。円卓の中では二番目に強いとされている人だよ。ちなみに、女運が死ぬほど悪い可哀想な奴だね。あと伝説のランスロットと比べられるのを結構気にしてて、本人はイメージを崩さないように頑張って演じてたりする。オフだと普通にいい子なんだよ?ちょっと戦闘狂だけど」
「おい!!それを言うんじゃねぇ!!」
アーサーにあることないことバラされて、顔を赤くしながらアーサーの胸ぐらを掴むランスロット。
円卓と言えば、ブリテンが抱えていた強者達のことか。アーサーが頂点であり、次点でランスロットが来るという話(強さ)だったし、彼がランスロットの名を持っていてもおかしくはない。
「
「頂戴」
「彼はかの伝説“円卓の騎士”に沿ったキャラ作りをしているらしく、女癖が悪いことで有名です。しかし、その裏では事情を知る女性や友人にお願いをしてイメージを保とうと努力しているらしいですね。私が調べた限りでは、あのファッキンウルフ野郎の言う通り、私生活ではとても大人しく優しい人のようです。子供に剣を教えたりして、子供からの好感度はとても高いのですよ。後、2回ほど裁判を起こされています。主に女性関連で。どちらも主張が滅茶苦茶で、えーと、微笑みかけたらそれはもう結婚だろ!!とか言って不倫裁判を起こされていたとかありますね」
........なんというか、すごい苦労人なんだな。
最初はちょっとやな奴みたいな雰囲気がでてたのに、一気に可愛く見えてきたぞ。
イメージを壊さないためにエキストラを雇ったりとか、裏では子供たちと遊んでいるとか、そして意味不明な裁判を起こされたりとか。
おいお前も見習えよファッキンウルフ野郎。同僚はこんなにも苦労していると言うのに、なぜこいつは狼相手に腰振ってんだ。
「ランスロットと言えば、ブリテンの中でも二番目に強い騎士として君臨していますね。俺でも知ってるっすよ。確か、とあるダンジョンスタンピードを1人で沈めたとか」
「その程度で強いと言われてもって感じですがね。世の中にはたった二人で五大ダンジョンを攻略したり、全世界に喧嘩を売って五体満足で生きている真の強者もいるのですから。所詮、井の中の蛙ですよ」
「........アン?」
おい。聞こえてる聞こえてる。
ランスロット君に聞こえてるって。
彼は今オンの状態なの!!下手に刺激したらみんなが思い描くイメージ通りに動くだろ!!
「はぁー自分の身の程もま弁えないやつはこれだから........ボスの強さを見たら何も言えないくせして、ボスを下に見るんですよね。世界最強はボス一択なのに」
「あそこにいる英雄王でも
おいおいおーい!!お前らわざとやってるだろ。
ここ、国際の場。相手へのリスペクト。OK?
好き勝手言いまくる馬鹿な部下二人。
そしてこれだけ好き勝手に今れれば、ランスロットだって黙ってない。
「アーサー、あいつを殴ってもいいな?」
「どうぞ?君じゃ殴れないから」
アーサー!!お前も乗っかってんじゃねぇよ!!
ここ国際の場!!下手に暴れたらこっちが今後不利になるでしょーがー!!
ニィとランスロットが笑い、俺に向かって拳をつきだす。
相手はブリテンの2番手。
この距離で俺が反応できるわけもない。
ピギーが反応しそうになっていたが、ピギーには俺が呼ばない限りは勝手に出てくるのを禁止にしていたので動かなかった。
さすがにね。この場所で鳴くのはまずいからね。
よって、俺は迫り来る拳を眺めるだけ。
ブヲォ!!と拳によって巻き上がった風が俺の顔を襲うが、その拳が俺に届くことは無かった。
「........チッ、俺が拳を止めるとわかってたな?」
「........え?あーうんうん。そうだね?」
「おい爺さん。こいつは傑作だぜ。殺気まで向けて殴ろうとしたのに、一切動かなかった。俺が殴らないと分かっていてな。とんでもねぇ洞察力だ。それに目もいい。俺の拳から一切目を離してなかった」
「ほう。お前がそこまで人の強さに関して褒めるとは珍しいな」
「俺はちゃんと評価出来るやつは評価してんだろ。だから俺よりも強いアーサーを認めてるんだしな。えーと、ミスターグレイ。試すような真似をして悪かった。あんたは俺より強いよ」
「えーと、どうも?」
何が何だか分からないが、ボケっとたってたら評価が上がった。
出たよ。ご都合主義。
最近思うようになってきたのだが、実は俺の能力ってこっちじゃないか?
全てがなんか上手くいく。運だけの男。
そう呼ばれても仕方がない様な気がしてきた。
「あのランスロットに強さを認めさせるとは........さすがはボスっす!!」
「アーサー以外は認めないというような発言もあったかと思われますが、凄いですね。流石は
「はいはい。もうそういう事でいいよ。で?アーサー。お前は何か言うことは?」
「さすがはグレイだね!!あだっ!!」
アーサーは全てわかっている。俺が弱いことも、俺が何も考えてないことも。
つまり、分かった上で煽ったのだ。もし煽ったらどうなるかなという知的好奇心によって。
やっぱりお前は英雄王なんかじゃない。狼相手に腰を振るだけのファック野郎だ。
あー、なんか一気に疲れたな。こんな調子で国連に行けるのか?
俺は頭を抱えるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます