国際連合

国際連合


 その日、古代より存在するローマ及びITA(イタリア)という名の靴は滅びた。


 北では空を飛ぶイカロス軍によって街を焼かれ、更には陸軍によって運よく生き残ったもの達も滅びていく。


 南では空から降ってきた核にも匹敵するまりょくミサイルが降り注ぎ、大地を全て更地にした。


 その後、更地となった大地の中で運よく生き延びたものたちも、南下してきた軍隊によって滅ぼされている。


 そして中央では、シャークネードが発生し、人類の手によって作られた神が破壊された。


 壊れた機械仕掛けの神が二度と作られることは無い。神の領域に手を伸ばせば、その分だけ天から罰が下るのだ。


 蝋の翼を手に入れたイカロスが天へと向かい落ちたように、神へ手を伸ばしたバベルの塔に雷が落ちていく時のように。


 神は神の領域に手を伸ばすもの達を許さない。歴史は繰り返し、やはり人は神に至れない事を認識しただろう。


 ローマに奏でた鎮魂歌は華やかで、そして派手であった。全世界に響いたその音は、きっとルーベルトにも届いたはずである。


 たかが三日。されど三日。


 俺にとって、世界にとって、全てを変える三日間であった事には間違いない。


 ルーベルトもまさか、あの時生かしたガキンチョがここまでバカになるとは思ってなかったはずだ。


 ........あの時の魂の声、聞きたかったなぁ。


「........多すぎる。この国はなんだ?俺を過労死させたいのか?」

「これでも少ない方かと。主人マスターよりも王達の方が大変だと思いますよ」

「それはそうだが、それと比べちゃダメでしょ。言っておくけど、俺はなんの知識もないただの一般人よ?そんなやつに任せちゃダメでしょ........」


 全世界に鳴り響いた鎮魂歌。その歌を終えた俺達は、戦勝という土産を持って国に帰ってきた。


 誰一人として掛けること無く帰ってきた俺達を称える声や、戦勝に沸きあがった日本帝国。


 しかし、そんな喜びもつかの間、俺の机にはアホみたいな量の書類が並べられていた。


 あぁ、嫌になってくる。


 戦後処理の報告書に、通常業務のあれこれ。


 この国は俺を過労死させたいのか?労基に逃げ込みたい。


「ドワーフたちの報告書が多いぞ。実際に兵器運用をした際に直面した問題点と、その解決案。そして、戦果報告だな」

「やはり、ダンジョンの中から外へと引っ張ってくるのが大変なそうですね。国防の際にも使い勝手が悪いと言われてはいましたし。どういたしますか?」

「でもこれを許可しちゃうと、空から見られたり他国の奴らにも見られるからなぁ........」


 戦時中、ドワーフたちの作った大陸弾道ミサイルを移送していたのだが、やはりダンジョンの中から移送するのは馬鹿みたいに時間が掛かって大変らしい。


 ダンジョンの出入り口を占拠してしまうのも問題で、通行の妨げになることも多かったそうだ。


 今後、急な戦争勃発が起きた際、対処が難しくなるという事で日本帝国本土に軍備を設置したいというのがドワーフたちの主張である。


 確かに急な対応を迫られる時に困るだろう。移送して、設置して、ドカーンをするのにかなりの時間を要する。


 が、国土に設置をすると情報という面で問題が出てくる。


 空からの映像はもちろん、この国に来ているブリテンやPOL(ポーランド)の外交官に色々と見られるのはあまり好ましくない。


 日本帝国の軍事力は1国を滅ぼす。


 それは既に証明されたが、日本帝国の軍事力がどれほどのものなのかまで悟らせてはならないのだ。


 未知故に被害が予想できない。


 知られてない事こそが、この国において絶対的な防衛ともなり得る。


 一応、世界樹ちゃんが“この国を守ってあげるよ!!”と言ってくれているが、頼りすぎは良くないからね。


「折衷案が欲しいな。両方の要望を満たせる案........なんかあるか?」

「魔力によって見られないようにしますか?確か、魔力の結界。貼ることで中のものを封じる術を持つものがあったはずですが」

「出来れば低コストで抑えたい。それ、かなりコストが掛かってあまり作りたくないやつだっただろ」

「維持のコストが高いって話でしたよね」


 となると、ほかの術がいる。


 一応、周囲から身を隠せる方法はいくつかあるのだが、どれもコスト面でかなりの負担を強いられる。


 防衛に金を掛けるのは仕方が無いが、限度があるのだ。今の収益から出せる限界が存在している。


 そして、レミヤの案は予算オーバーをするのだ。


 月に10億近い維持費が掛かるのは宜しくない。


 うーん.......外から見られなくて尚且つ迅速な対応ができる設備........


 あ、あるじゃないか。


 ドワーフや王たちと話し合う必要があるが、おそらく低コストでそれなりにしっかりとした設備を作れるものが。


 ドワーフ達の技術力なら問題ないだろうし、管理も比較的簡単になるはずである。


「地中に埋め込んだら良くね?」

「地中ですか?」

「そう。地面の中なら空からは見られないし、態々地中を掘り返さなきゃバレない。維持費に関してはちょっと分からんが、それでも少しはマシになるだろ。少なくとも透明化を持った道具を起動させるよりかは」

「なるほど。一度予算を組んでみる必要がありますが、確かにいいかもしれませんね。技術の面でもドワーフ達が何とかしてくれるでしょうし」


 某ゲリオンのNERVみたいに、都市の下に兵器を設置してしまうのだ。もしくは地中に。


 更に街全体を地中に入れる方式を使えれば、シェルターの代わりにもなる。


 少なくとも維持費は向こうより抑えられるだろう。


 必要ない時は起動しなければいいのだから。


 兵器制作はダンジョンの中で行って、その後地下へと移送、設置。


 そして、来る日が来たら防衛設備を起動して守る。


 ついでにダンジョンまでの地下道でも作っておけば完璧だ。


「議会に案を持ってくか。レミヤ、ちょっと報告書をまとめて置いて」

「了解いたしました」

「とりあえずこれはよし。んで次は........」


 こうして俺はレミヤと共に書類を一つ一つ片付けていく。


 正直適当にやりたいが、ここで手を抜いてしまってはダメだ。仮にも俺はこの国において人類の代表として立っているのだから。


 俺があまりにもポンコツすぎるところを披露すると、信頼を失う。そして、結果として人類の立場がこの国で弱くなる。


 俺は砦なのだ。エルフ達のようなダンジョンに住むもの達と、人々が対等に暮らせるようにするための砦なのである。


 俺が死んだあとは知らん。あとを引き継ぐやつが頑張ってくれ。


 そんな事を思いつつ、嫌な顔ひとつ浮かべ泣いで手伝ってくれるレミヤに感謝していると、ピタリとレミヤの動きが止まった。


 ん?どうしたんだ?


「どうしたレミヤ。バグでも発生したか?それともウイルスが検知されたか?」

「いえ、その程度ならば全て除去できますので。それよりも、重大な問題です」

「........なんだ?」

「国連から主人マスターへの参加要請が来ています。日本帝国を国として認めるのかという議題かと」


 それは、この国が世界から国として認められるのかどうかと言う、最も重要な要素の話であった。




【国際連合】

 第二次世界大戦の勃発を防げなかった国際連盟の様々な反省を踏まえ、1945年10月24日に51ヵ国の加盟国で設立された。主たる活動目的は、国際平和と安全の維持(安全保障)、経済・社会・文化などに関する国際協力の実現である。2024年3月の加盟国は193か国であり、現在国際社会に存在する国際組織の中では最も広範・一般的な権限と、普遍性を有する組織である。

 こちらの世界でも存在しており、多くの問題を解決してきたが常任理事国の顔ぶれなんかがかなりかわっている。

 国際連盟と国際連合、どちらが先か覚えられないって?そんな時は世界大戦の陣営を思い出そう!!

 第一次世界大戦では協商国(連合国)と中央同盟国の戦争。中央同国があるからその後発足されたのは世界連

 第二次世界大戦では連合国と枢軸国の戦争。国があるかその後発足されたのは国際連合と覚えると分かりやすいぞ!!




 USA(アメリカ)、ニューヨーク・マンハッタン島にある国際連合本部。


 そこには第三次世界大戦を終えた現大統領の姿があった。


 グレイに助けられ、その姿をカメラに収めた配信者大統領アーリ。彼女は彼女なりにがんばり、今の所それなりの支持率を持って国を収めている。


 なんの後ろ盾もない状況でいきなり大統領となった彼女だったが、元々は超人気配信者であったため、若い議員を中心に彼女の支持者は多くなっている。


 また、年配に対する配慮もしていたことで、老害を除けばかなり好かれる大統領となっていた。


 歴代で最も美しい大統領とまで言われ、今ではファッション誌の表紙すらも飾っている。


 ちなみに、その時は歴代最高峰の売上を達成し、今や配信者大統領は国内で知らないものは存在しないのだ。


 スラムに生まれた子供だって、彼女の二つ名は知っている。


「ようやく、ようやく彼に会えるんですね........楽しみです」

「大統領。お時間です」

「はい。分かってますよ。きっと来てくれることを祈ってます。我々USA(アメリカ)は、あなたの味方となりましょう。こんな馬鹿げた人生を歩むこととなってしまった私の唯一の光。あぁ、早く会いたい!!」


 彼女はそう言うと車に戻る。


 その手は、いつもよりも強く握られていた。

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