ノリノリ


 日本帝国の行く末を決定する帝国議会。一応この国は民主主義なので、選ばれた種族の代表達が集まって、色々と議論をして決定をする。


 戦時中に限っては、迅速な対応をするために俺の意見が絶対となるが、今の日本は平和であった。


 第三次世界大戦から一足先に抜け出したからね。今はやることがないのである。


 と言うか、なぜ俺に最高決定権を持たせてるんだこれ。頭おかしいんじゃないの?


「さて、集まってもらったのは他でもない。悪いが、もう一度戦争を引き起こさせてもらう」

「ほう。また戦争か。まぁ、国が出来たての時は外部からの圧力や攻撃に晒されるのが常だ。仕方がないとも言えるな」

「レールガンでも設置してみようか?一応理論は出来上がっておるから作れるぞ」

「ふむ。我らタイタンの一族は役に立てそうか?」


 ........あれ?なんか思ってた反応と違うな。


 第三次世界大戦が終わってからまだ二ヶ月経ったぐらい。そんな中で、1番トップがまた戦争をやろうと言っているのだ。


 国力に問題は無いが、普通は反対するもんじゃないのか?


 俺はてっきりみんなに頭を下げてお願いする立場だと思ってたんだが........


「どことやるのだ?」

「いや、反対しないの?戦争が終わってまた直ぐにドンパチしようとしてんだよ?」

「ん?いや、だって第三次世界大戦の時は我々は何もしてないしな。急遽軍を編成して防衛に備えたものの、グレイ殿とその仲間たちで全て片付いてしまったし。私達の中では戦争なんてなかったというのが認識だ」

「ドンパチやってたのはアンタら9人だけだよ。残りは暇つぶしに机と紙で遊んでただけさ」

「兵器開発は日常だから、特に変化はないぞ」

「然り。暇であった」


 そっか。第三次世界大戦は、九芒星エニアグラムだけで暴れていたからこの国ではあまり戦争していた認識がないのか。


 と言うか、よくよく考えなくても9人だけで戦争して勝利してるのっておかしくね?


 コテージ作戦かよ。日本の軍用犬2匹がアメリカ軍人122名死亡191人行方不明、駆逐艦1隻大破させた伝説の軍事訓練。


 あれは日本軍が撤退していたと知らなかったアメリカ軍が同士討ちして起きた事例だが、戦果だけを見たら世界最強の軍用犬の爆誕である。


 そして、それを真正面から国家すら相手にしてぶっ飛ばしたのが俺達だ。


 俺達と言うか、ウチのおじいちゃんである。


 やっぱりたった一人で国に勝ったとかおかしいだろ。どないなっとんねんあの爺さん。


「そんなわけで、我々には準備がある。軍も一度はしっかりとした戦争を経験した方がいいだろうし、やるならば戦力を出すのは惜しまない。どうせグレイ殿達がいる時点で勝ちは揺るがないしな」

「あの邪神ニーズヘッグに勝つような人間様が着いてるんだ。相手が神でもない限りは勝てるだろうね。いや、神ですらお前さんには勝てん」

「大陸弾道ミサイル!!ワシら作ったからぶっ飛ばせるぞ!!」

「ふむ。タイタンの強さを全世界に見せつけるときですかな?」


 既に戦争しようぜムードのノリになってしまった会議室。大丈夫かこいつら。こんなヤツらが種族の代表なんだから、不安になってくる。


 俺はちゃんとした目的があって第三次世界大戦を始めたが、こいつらノリで第四次世界大戦を引き起こしたりしないよな?


 ノリノリでドンパチしようぜ!!となっている王達を見て、若干不安になる俺はそれでも手を借りるべきだと判断する。


 ITA(イタリア)にはSランクハンターが2人いるのだ。それを相手にしながら、国を滅ぼすのはちょいと難しいと考えている。


 好き勝手にバカスカできるほど俺達も戦力があるわけじゃない。1部のおかしい奴が強すぎるだけなのだ。


「なぁグレイ殿、私も行っていいか?」

「な、それなら私も行きたいぞ。体が訛って仕方がないからな」

「ワシは兵器開発があるから残るぞ。ミサイルをバカスカ撃ち込んでやるのだ」

「私も乗り込ませて頂きたいものだ。戦争において、タイタンの右に出るものは無いからな」


 そして、暇を持て余していた王達は戦争に出たいと言い始める。


 こいつら、実は自分達が暴れたいだけなのでは?私利私欲の為の戦争について俺がとやかく言う権利は無いが、王たちも大分性格とか倫理観が終わってるな。


 まぁ、カルマ王だけは多分レイズにいい所を見せたいだけだと思うが。だってなんか既にトリップして妄想の中に入り浸ってるし。


 おーい。戻ってこーい。


「思ったよりもすんなりと決まってしまった........んじゃ、戦争をやる方向で準備しよう。正義は俺たちにある。かの熾天使が大義名分を作ってくれだだからな」


 今のITA(イタリア)は大混乱だ。


 政府とローマ教皇庁が隠蔽していた非合法の実験が全世界に暴かれ、とんでもない量のバッシングを受けている。


 同じキリスト教徒からもバッシングを受けているレベルなので、あの世界に出現した熾天使はかなりの影響を世界に残した。


 SNSでは熾天使の動画が拡散され、“神の怒りだ”の“神は存在した”だのと騒がれているが。


 そいつ、一応ダンジョンの魔物ですよ。分類的には人類の敵ですよ。


 なぜ人はこうも都合のいい解釈ばかりをしてしまうのだろうか。


 人間って恐ろしいな。俺も気をつけないと。


 こうして、その日から日本は仮想敵国をITA(イタリア)として、動き始めるのであった。


 とりあえず陸軍と空軍と海軍に話をつけに行くか。サメちゃんたちは多分二つ返事でOKしてくれるから、まずは今回の主役たるは空軍からだな。




【コテージ作戦】

 太平洋戦争中の1943年8月に行われた、アメリカ軍などによるアリューシャン諸島のキスカ島への上陸作戦である。本作戦は、日本海軍によりキスカ島守備隊が撤退した後に実行された。

 戦後、『史上最大の最も実戦的な上陸演習であった』『米国史上最悪の軍事訓練』と皮肉られるほど上陸作戦は計画通り進められ、日本軍が既に撤退していたために敵勢力との戦闘は起きなかったものの、同士討ち、仕掛けられていた地雷や罠、交通事故や暴発などによって死傷者が生じた。また8月18日には、島の北西で哨戒中であった駆逐艦「アブナー・リード」が触雷して死傷者を出した。

 主に同士討ちによる死者数100人余り、負傷者が数十名であった。




 日本帝国軍の空軍は少し特殊だ。


 ドワーフが開発した航空兵器“イカロス”を背中に装着して、アイアンマンのように人型の状態で空を飛ぶ。


 機動力はかなり優れている変わりに、耐久力が少し脆い。


 そりゃ生身の人間が銃弾に打たれて生きているわけが無いのだから、当たり前だ。


 ........まぁ、この世界だと普通に生きているやつも多いのだが。


「グレイ王に敬礼!!おはようございます!!」

「はいおはよう。空軍元帥バラガード君。楽にしていいよ」


 軍人ということで、硬っ苦しい挨拶をしてきたのは空軍元帥のバラガード君。彼は、作戦立案やイカロスによる戦闘があまりにも優れすぎており、気がつけば元帥になった成り上がりの兵士である。


 俺が募集した空軍兵試験の中にもいたらしく、そこでも首席の成績を収めたんだとか。


 凄いね。才能と仕事が噛み合った瞬間か。


 あとは死なない才能があれば完璧だぞ。目指せ、ハンス・ウルリッヒ・ルーデル!!


 君も空の英雄にしてリアルチートになるんや!!


「さっき上から指示が出たと思うけど、今回は全戦力を使っての戦争を起こす。準備は大丈夫そう?」

「はっ!!何時いかなる時でも出撃できるように備えてあります」

「お、それは期待できるね。兵力はどのぐらい?」

「現在、イカロスの支給が追い抜き、3万の兵士と5万台のイカロスがあります。それと、輸送機などの制作も終了しておりまして、陸軍を空から運ぶことも可能です」


 あー、そういえばそんな資料を見た覚えがあるな。


 軍事に関しては完全に素人なので、俺は基本口出しをしない。


 しかし、報告書だけは飽きもせずにやってくるので全部に目を通していた。


 覚えてないのもあるけど。


 その中に陸軍を輸送する兵器の開発があったな。100人ぐらいは送り込めるとか何とか言ってた気がする。


 今回の戦争における課題は、どうやって敵国に兵士を送り込むのかだ。


 通行証はツテを使えば多分取れるが、空から兵士を送り込むだけじゃ足りない。


 海も使うつもりだけど、サメちゃんの上で生活出来るのかなぁ.......


 俺たち離れてるけど、他が不安だ。


「とりあえず半分ぐらい動かすか。残りは防衛で。選別は任せるから、あとは好きにしちゃって」

「はっ........ところで、グレイ王。不躾な質問なのですが、どこと戦争をなさるのですか?アバート王からは“戦争するから、準備よろ”としか言われておりませんでして........」


 アバート。お前さすがに戦争相手ぐらいは教えよろ。


 俺はちゃんと言ったぞ?どこと戦争するのかを。


 俺は頭が痛くなりながらも、クソ国家の名前を告げる。神の怒りだの神の加護だのにかまけた、怠惰で強欲な国家だよ。


「ITA(イタリア)だ。俺の恩人を殺しただけじゃ飽き足らず、神になり変わろうとしたクソ野郎どもだよ。これは神に手を伸ばそうとしたやつらに対する制裁だ。安心しろ。神から許可は貰ってる」

「ITA(イタリア)........なるほど。では、それを念頭に人員を選びます。期限はありますか?」

「無理のない程度でできる限り早く頼む。俺は今すぐにでもあの十字架にヤツらを張りつけてやりたいんだ」

「かしこまりました。それでは、失礼いたします」


 ぺこりと頭を下げるバラガード君。期待してるよ。


 こうして、着々と戦争の準備が進んでいく。もうすぐ、クソでかい鎮魂歌が流れ出す。耳の穴をかっぽじってよく聞いておけよルーベルト。

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