ミルラ、死す
日本にやってきた客人たち。いや、客人と言うか、これから国民になってくれる人達は、初めて訪れた日本帝国の街を眺めて感心していた。
何せこの国は建国してまだ一年も経っていない出来たてホヤホヤの赤ん坊。そんな赤ん坊が緑豊かな大都市を建設しているのだから、驚くのも無理はない。
我が国の建築力は馬鹿げてるからな。主に、ドワーフとかいう種族によって。
最近は徐々に他種族の職人も増えてきたが、当時は本当にドワーフに頼りっぱなしだった。
今でもこの国の中核をになってくれているので、助かっている。
力関係もそこまで上下がないように調整はしているし、おかげで上手く纏まっているのは有難い。
また内戦とか勘弁だからな。ニーズヘッグ戦争の時みたいな経験は懲り懲りだ。
「うちの娘がお世話になってます。それと、私達の受け入れを快く承諾してくださりありがとうございます。ミスターグレイ」
「お気になさらず、ミズシエル。ミルラは護衛として大変お世話になっておりますから」
「本当ですか?あのバカ娘がご迷惑をおかけしていると思うのですが........」
うん。まぁ、迷惑はかけてるよ。主にアリカに。
本当にストーカーのようにベタベタしてるからなミルラは。
最近じゃ、俺の護衛をほっぽり出してアリカ専属の護衛になっている気がする。
いいんだけどね。アリカは弱いし(それでも能力を使えば俺より強い)この組織の生命線にも近い存在だからかなりの重要人物だし。護衛の優先順位は俺に次いで2番目だから。
それに、俺には世界最強の護衛ピギーもいるし、ナーちゃんとスーちゃんもいる。
黙示録に飛ばされた時のようにピギーがお眠で転移させられたとかならともかく、それ以外なら何とかなるのだから。
で、アリカに迷惑をかけているのかという話だが、多分迷惑はかけてる。
実験中とかは手を出さないけど、それ以外の時間は大体アリカに触れてるし。
アリカは本気で嫌がってはないだろうが、ちょっとウザったいとは思っていると思うよ。
しかし、アリカの欲しいものは全部買ってあげるので許してもらってる感がすごい。
こいつ、駄目男とかにも全力で貢ぎそうだなとは思った。
ヒモの才能があるよ。金をもらう側じゃなくて、財布側の。
しかし、流石に親にそんなことは言えない。ミルラが苦しむ姿を見るのは楽しいが、それはあくまでも本人が見られたりして怒られているのを見るのが楽しいのだ。
「いえいえ。俺には迷惑をかけてませんよ。流石に俺が見てないところでどうなのかは知りませんが」
「なるほど。ミスターグレイ以外にはご迷惑をおかけしているかもしれないと言うことですね。後で皆様にもお話を聞かなくては........」
「どうしてうちの娘はこんな馬鹿な子に育ってしまったんだか。ミスターグレイ。あんな馬鹿な子ですが、よろしくお願いいたします」
「少なくとも五体満足で生涯を終えられるように努力は致しますよ。我々は仕事柄、危ない橋を多く渡るので保証はできかねますが」
「親としては安全に暮らして欲しいんねすがね........あの子が選んだ道ですから、これ以上は何も言えませんよ」
俺が正直にそう言うと、父親であるデルクは苦笑いしながらそう言う。
いいご両親だよほんとに。こんなマフィアみたいな組織に所属していることを許す親なんて、そうそういないんだから。
でも本当に、なんでこの親からあんな子が生まれたんだ?ダークヒーローに憧れてマフィアに喧嘩を売るような子に育つとは到底思えないんだけどなぁ。
そんなことをと思っていると、ふらっと俺の横にやってきたアリカが声をかける。
「この国でもカジノを経営するのか?」
「いえ。カジノは良くも悪くも面倒でして。次はアミューズメントパークでもやってみようかと。まだありませんよね?この国には」
「無いですね。娯楽の一環として欲しいとは思っていたので、助かりますよ」
「おー。それはいいな。ディズニーを超える素晴らしい遊園地を作ってくれると嬉しいよ。結局、USAでディズニーに行った時は苦い思い出が最後に残ったからな」
「あぁ、あのKKKの連中か。マジで今でも殺してやりたいよ。アリカとリィズの楽しみを奪いやがって」
マジでそれを理由にUSA(アメリカ)に宣戦布告しようかな。理由は“ディズニーのパレードを邪魔されたから”って理由で。
ひでぇ内容だとは思うが、これでもレミヤがやらかした宣戦布告よりもマシだと言う事実。
レミヤの宣戦布告はそんなレベルで酷いのだ。
「アリカ........さんでしたよね?私の娘がご迷惑をおかけしてないでしょうか?」
「ん?まぁ、偶にこっそり胸を揉もうとしてくるが、それ以外は別にかな。優しいし、良い奴だよ」
あっ........オワタ。
アリカもかなり気を使って話しているのは分かるのだが、思わず口が滑ってしまったのだろう。
それはダメだよアリカちゃん。ミルラが死んじゃう。
と言うか、ミルラもミルラだよ。リィズから“偶に胸を揉まれる”とは聞いていたが、お前相手は11歳だぞ。
さすがにアウトだよそれは。リィズはまだいいけども。
チラリとご両親を見ると、“ゴゴゴゴゴ”という効果音が聞こえてくるほどに何やらヤベー雰囲気が漂っていた。
「すいません。もう少し詳しいお話をお聞かせできますか?」
「あ、いや、じゃれて胸を揉むだけだぞ?別にいやらしい理由はないから。私の遊び相手をしてくれるだけで、そんなやましいことでは無い。それにほら、私は胸が大きいからな。仕方がないんだよ」
「アリカさん。本当は?」
「いや、だから────」
「本当の事を仰ってください」
「ぐ、グレイお兄ちゃん........タスケテ」
底知れない圧に押され、涙目ながらに俺に助けを求めるアリカ。
自分の娘の事になると本当にこの人たちは話が通じないな。娘への愛が重い。
俺はいい事だとは思うが、ミルラからしたらちょっと重すぎるのかもな。
ウチは放任主義みたいなところがあったしなぁ........何故か口出ししてきたのはイカサマとゲームだけとか言う狂った親だった。
そこだけはマジで頭がどうかしていると思う。でもそのお陰で助かっているのだから、文句も言えない。
もしかして、両親はこれを見越して俺に生き延びる力を与えていたのか........?
そんな馬鹿なことを思いながら、俺はこの状況をどうしようかと考える。
まぁ、ミルラは死んだ。良い奴だったよ。
で、その死に方を選ばせてやると言うのが今の状況だ。ここでお宅の娘さん、ペドレズですよなんて言った日には、冗談抜きにミルラが東京湾に沈められる。
確かにミルラはどうしようもない変態だが、結構気の利く良い奴なのだ。こんな馬鹿な死に方はして欲しくない。
できる限り楽に殺される方法........えーと........やべぇ何も思いつかねぇ。
しかしらここで黙るのはもっとまずい。俺は何とか言葉を捻り出した。
「あ、アリカも本当に嫌がっている訳では無いので........」
「そ、そうだぞ。本当に嫌なら実験体にして殺してるからな!!」
「そうですか。それなら良かったです。では、私は少し用事が出来たので、失礼いたします」
あっ、ミルラ死んだなこれ。
静かに消えていくシエルさんの後ろ姿を見送った俺は、両手を合わせることしか出来なかった。
アーメンミルラ。その魂は天国に導かれる事になるだろう。
「グレイお兄ちゃん。どうしたらいい?」
「正直、自業自得感はあるよ。っていうか、胸を揉まれたのか?」
「んー階段から落ちかけた時に揉まれたな。わざとじゃないのは分かってたから何も言わなかったが、その後息が荒くて流石に引いたのは事実だぞ」
「それを先に言ってくれよ。そしてらミルラは死なずに済んだのに」
「いや、シエルさんが怖くて........」
「気持ちはわかるけども」
「あ、でも普通に揉まれた時もあるぞ。どうしてもやる気ができないから、お願いします!!って土下座までされたから、実験に付き合ってもらう条件で揉ませてやったな」
やっぱりだめじゃねぇーか!!
終わってるよアイツ。マジで。
このロリっ子に土下座してまで“胸を揉ませてください!!”ってお願いするバカがどこにいるんだ。
いや、本人同士がそれでいいなら何も言わないけども、それでいいのかアリカよ。
「アリカはいいのか?」
「ん?別に揉まれても減るもんじゃないだろ?人間での実験サンプルは取りづらいからな。自分でやるのもいいかど、態々録画して見直したりする必要があるから面倒なんだよ。その点、ミルラはいい実験体になってくれる。胸を揉ませるだけでいいなら安いぐらいさ。ちょっとキモイのは事実だけどな」
君も君で終わってんね。
人間の実験サンプルが欲しいから胸を揉ませるとか、聞いたことねぇよ。
ギブアンドテイクって言えばいいのか?これ。いや、言っちゃダメな気がする。
人として大切な何かを失ってるよ絶対。
「アリカ、自分の体はもっと大切にしろよ。その調子じゃ悪い大人に犯されるぞ」
「大丈夫さ。そうなったら皮膚や体内に毒を生成して殺すから。本当に嫌だったらちゃんと抵抗するし、私の純血はくれてやるつもりは無いさ。グレイお兄ちゃんならくれてやってもいいぞ?」
「俺が人の形じゃ興奮しないのを知ってて言ってんだろ。人の形を捨ててから誘ってどうぞ」
「あはは!!グレイお兄ちゃんも大概じゃないか!!」
それはそう。俺も俺で終わってる。
やっぱりこの組織って終わってるやつしかいねぇな?
今一番まともに恋愛してんのレイズだけだからな。上司の頭を弾いて逃亡したやつが1番まともって終わりだよこの組織。
「みんな人のことは言えねぇな」
「全くさ。ところで、あれミルラが死にかけているように見えるんだが........」
「見てない見てない。俺達は何も見てないんだ。アリカ、十字を切って祈っておけ。アーメンってな」
その後、ミルラの顔はマジで死んでいた。アリカが後でこっそり慰めて(普通になでなで)あげるぐらいには。
母は強し。世界最悪の組織すら怯ませるとは、恐るべしだ。
後書き。
ミルラ、ちゃんと終わってる。
どうもG3ハンターです。もうすぐソロクリアできそうで頑張ってる。何気にモンハンソロクリアしたことないから、頑張りたいぜ。ちなみに、私はff14の戦士では無いので悪しからず。私は今ドクターでありハンターです。ffシリーズは一個もやったことはない。
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