いっぱい来た


 学校訪問に行ったら俺のファンが生徒を洗脳していたでござる。


 勘弁してくれとは思うが、別に嘘の歴史を教えている訳では無いので俺も口を出せないというのが悲しいな。


 ちなみに、あのニーズヘッグ討伐戦に行った兵士達の殆どは、俺の事を本当に神だと思っているらしい。


 ピギーの圧を間近で見たもの達だ。その人ならざる力を神の力だと思ってしまうのは仕方がないだろう。


 すごいのは俺じゃなくてピギー定期。


 でも、そんなピギーに懐かれ、従えている俺はすごいよねと言う理論が彼らの考えである。


 正直勘弁して欲しいが、思想自体は自由で侵害されるべきものでは無い。


 俺はこの1年間で理解したのだ。どいつもこいつも俺の話を聞きやしないし、勝手な勘違いによって俺を祭り上げると。


 流石にもう慣れたよね。そのしわ寄せがどこからともなくやって来て、俺が苦労する点を除けば。


 本当に勘弁してくれよ。なんで大人になった奴らのケツを俺が拭いてんだ。


 そんなこんなありつつも2週間後、俺は久々に木偶情報屋ことおばちゃんと連絡を取っていた。


 こうして話すのは、戦争が終わる前の話だからかなり前だな。


『やぁやぁ久しいね。元気にしてたかい?』

「おかげさまでね。未承認国家でありながら、第三次世界大戦に参戦した上に戦勝国に名を連ねるレベルにまでなったんだ。おばちゃんのお陰だよ」

『まさかエンシェントドラゴンを呼び出してFR(フランス)を吹っ飛ばすとは思ってなかったよ。色男も随分とぶっ飛んだことをしてくれたねぇ』

「言っておくが、エンシェントドラゴンを呼び出したわけじゃねぇからな?偶々なんか出てきただけだ」

『はいはいそういう事にしておこう』


 絶対俺の言葉を理解してないだろこいつ。


 子供の戯れ言を聞き流す大人のような対応をしてやがる。


 確かにエンシェントドラゴンを使ってFRを吹っ飛ばしたが、別に俺はエンシェントドラゴンを呼び出した訳じゃないんだぞ。


 そもそも、どこから出てきたのかも俺は全く知らんし。


 ダンジョンのボスだったのかな?でも、ボスが外に出てきた事例はないらしいから、単純にダンジョンに住んでたヤベー奴が出てきただけなのか?


『これで三大大国は崩れ去り、二大大国となってしまったわけだ。この歴史は、後世に永遠に語り継がれるだろうね。もちろん、色男の名前とともに』

「歴史の教科書に乗りたくてやってる訳じゃないんだがな。世界のパワーバランスが完全に壊れた今、EGY(エジプト)辺りは両手を上げて喜んでいるだろうよ」

『アッハッハッハッハッ!!素直に喜べたらいいけどねぇ。あそこにはハンター協会の本部があるし、今ハンター協会と国はバチバチにやり合ってる最中さ。どっかの誰かさんが次から次へとハンター協会の不正を世に出すせいで、あの国ではハンターに対する心象がものすごく悪くなっているんだぞ?』


 へぇ。そうなんだ。


 あのパン屋のおっちゃんとレミヤにハンター協会への対応は全部任せているのだが、どうやら次から次へと過去の悪事が暴かれてハンター協会はつらい立ち位置にいるらしい。


 俺が知っているだけでもかなり悪どい事をやってるからな。国家に準ずる権力を持っている組織ってのは、実質的なマフィアと同じだし。


 日本も国家ヤクザなんて言葉があるぐらいだ。全世界のハンター達を纏めるハンター協会は、日本政府よりもヤクザをやっている事だろう。


 そして、そんなヤクザを国が抱えるにも限界がある。今回の場合はその限界を超えてしまったという訳だ。


 奴らは権力という力を手にして、やりすぎたのだ。過去の過ちを精算する時が来た言えるわけだな。


「デモとか起きてるのか?」

『むしろ起きない方がおかしい。それに、政府も完全にハンター協会を見放しているから、下手をするとこのままハンター協会内部が崩れ去る可能性もあるだろうね。凄いじゃないか。情報戦だけで天下のハンター協会様をボッコボコにするだなんて。一昔前じゃ考えられなかったよ』

「情報戦っていうか、明らかに火消しが下手なだけだろ。ケツに着いた火すら消せずに水の代わりに油を注いでるようなヤツなんじゃないか?」

『よくわかってるじゃないか。今のトップがなんて言ったと思う?“過去のことであり、今のハンター協会には関係ない”だってさ。笑えるだろ?悪い事をした犬っころだって反省する素振りを見せるってのに』

「それ、その後に今の職員不正を出されたらもっと酷いことになるだろ」


 すごいな。“昔のことだろ?今は違うから黙ってろ”なんて言ったら、間違いなく反感を買うに決まってるってのに。


 実はそのトップ、ハンター協会を潰そうとか思ってないよな?


 そんな赤子でもわかるような対応をしてたら、間違いなく反感を買うだろ。


 そいつスパイだよ。こっち側のスパイだよ。


『その通り。その後、現トップの資金横領やら何やらがどこからともなく湧いてきて、今や全身に火が回っている状態さ。火消し水の代わりに油を注いでるんだから当たり前だわな』

「熱すぎて近づきたかねぇな。そんな調子じゃ、俺達に構っている暇も無さそうだ」

『あったらびっくりだ。そんなわけで、今ハンター協会は世界中から批判の的にされている。特に本部を抱えるEGY(エジプト)は大変だろうね。本部があるってことは、それだけ繋がりが強いって事だ』

「この調子じゃEGYも動けなさそうだな」

『暫くは安全になるはずさ。第三次世界大戦もヨーロッパを除けばかなり平和になってきたし、そろそろ終わりが近づいているかもねぇ。半年もしない内に終わる世界大戦ってのは初めてかもしれん』

「それはそうだな。この先の時代、戦争の加速化が進むかもしれん」

『原因の一旦はお前さんだが........まぁいい。あ、そうそう。全然関係の無い話だが、そろそろお客さんこっちに越してくるらしいぞ。フューチャーカンパニーの連中と、カジノのパパママだな。それと、光の戦士もやってくる』


 あぁ、そういえばそんなこと言ってたな。


 アリカは喜ぶだろうが、ミルラはマジで死にそうな顔しそう。


 と言うか、カジノ捨ててこっちに来るんか。そんなに娘が可愛いのかね?


 いや、どちらかと言えば、今のUSAの現状を見てこれ以上は無理だと判断した可能性が高いか。


 会社の引き継ぎだけはやってそうだし、少し早めの隠居生活でもやるつもりかな。


「こっちに来るなら歓迎パーティーを開かないとな」

『アッハッハ。わざわざブリテンを経由して、やってくるんだ。盛大に歓迎してやりな』


 これは、人間の国民が増えそうだな。


 俺はそう思いながら、おばちゃんと何気ない会話を楽しむのであった。




【デモ活動】

 ある特定の意思・主張をもった人々が集まり、集団でその意思・主張を他に示す行為である。「デモ」とはデモンストレーションの略であり、示威運動、示威行為、あるいは単にデモとも呼ばれる。その活動内容によってデモ行進、デモ集会ともいう。

 日本で有名なデモとなると、安保闘争や日本の学生運動などがある。




 おばちゃんから電話を受け取った翌日、日本に新たな国民がやってきた。


 ブリテンの飛行機に乗ってやってきた、団体様達は日本の地に降り立つと自然豊かなこの国を見て呆然とする。


 いい国だろ?飛行場すら緑豊かだからな。この国は。


「トーマスとレニー、それと彼らに着いてきた研究者達。そして、ミルラの両親シエルとデルクか。懐かしい顔が勢揃いだな」

「アリカの元同僚もいるのが若干不安なんだが........大丈夫か?これ」

「安心しろグレイお兄ちゃん。あの顔には見覚えがあるが、私と同じで研究以外に興味が無い奴らばかりだ。ロクに話したこともないが、少なくとも私になにかすることは無い。と言うか、トーマスやレニーがそんな人選はしない」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ........なんで本当に来ちゃったんですかぁ........お父様もお母様も........」

「ミルラ、体が変な方向に曲がってる」

「ふふっ、親の前では皆子供ですからね。ミルラが生涯をかけても勝てない相手ですから」


 ミルラ、楽しそうでなによりだ。


 親子関係がこじれている訳ではなく、単純にミルラが気まづいだけとか言うメシウマ状況。


 お宅の娘さん、ロリっ子に興奮するぺドな上に、女の子なら誰でも行けるようなレズですよ。


 大抵リィズやアリカと一緒にいるし、大抵ベタベタしてる。


 そんな姿を親に見られたら多分自殺してしまうのではないだろうか。


 やったねミルラ!!これで少しは真人間に戻れるよ!!


「ようこそ黄金の国ジパングへ。空の旅は楽しかったかい?」

「久しぶりだなミスターグレイ。いや、大統領プレジデントとでも言うべきかな?色々と聞いてみた感じ、君がこの国のトップなのだろう?機長達が言っていたよ。この国で彼に逆らうことは死を意味するが、話してみると意外と気さくで面白い人だってな」

「別に喧嘩するような仲じゃないしな。仲がいい事は素晴らしいことだろ?」

「それもそうだな........アリカも元気そうだな。だが、身長は伸びてないか?」

「仮にもレディに身長の話をするとは、やはりトーマスはデリカシーがないな。身長が伸びなければ、薬で伸ばせばいいさ。それに、今はこのままの方が都合がいい」

「........?よく分からんが、アリカが元気そうで良かったよ。レニーが早くお前に会いたい会いたい煩くてな........」

「アリカちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

「わっ!!」


 トーマスの秘書を務めるレニーは、アリカに抱きつくとそれはもうすごい勢いで頭を撫でたり頬擦りしたりと好き勝手やっている。


 アリカは特に嫌そうな顔をせずになされるがままであった。


 これはもしかしてミルラの敵、出現か?


 そんなことを思ってチラリとミルラの方を見る。


「なんで来たんですかお父様もお母様も!!」

「あら、両親が来たというのにこの態度。まだ叱り足りなかったかしら?」

「ミルラ、グレイさんに迷惑はかけてないか?お前は昔からヤンチャで色々なことをやらかしてたからな。せっかく拾ってくれた恩人に迷惑をかけちゃいけないぞ」

「問題ないです!!と言うか、カジノはどうしたんですか!!」

「売り払ったわ。私達、今日から日本国民になるからよろしく」

「ハッハッハ!!これで毎日ミルラを見れるな!!」


 うん。ミルラはそれどころじゃなさそうだな。


 やはり、ミルラは親に弱い。困ったらシエルさんとデルクさんに相談すれば、一発で解決しそうだ。






 後書き。

 次回、ミルラ死す‼︎デュエルスタンバイ‼︎

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る