大成功


 急な祭りということで、一日だけ開催された俺の誕生日パーティー。


 子供のようにはしゃぐアーサーと一緒に回ってみたが、急ごしらえにしてはかなり成功していたと言えるだろう。


 少なくとも、俺が見た限りではみんな楽しそうだったし、悪くなかった。


 サラッとカルマちゃんとレイズがデートしていたところを見付け、後をつけていたらみんなと合流しカルマちゃんを応援したりとかもあって面白いイベントとなっただろう。


 日が沈み、祭りもそろそろ終わりを迎えることになる頃。


 俺は1人で海辺に来ていた。


 まぁ、1人と言っても、ナーちゃん達がいるので1人では無いのだが。


「疲れた........大きなトラブルも何とか乗り越えたし、これはこれで良かったのかもな」

「フゴー」

「ごめんな。サメちゃん達にも祭りを楽しんで欲しかったんだけど、流石に陸に上がって街中を歩ける訳でもないからな。今度から祭りは海辺でもやるように言っておくよ」

「フゴー」


“気にしてないよ”と言いたげなサメちゃん。


 サメちゃん達は魔物であり、このような祭りという概念を知らない。なのであまり気にはしてないのは本当だろうが、折角ならサメちゃん達にも雰囲気を楽しんで欲しかった。


 来年は海辺でも祭りをやらせようと心に決めると、俺は身体を擦り付けて慰めてくれるサメちゃんを優しく撫でる。


 サメ肌が少し痛いが、この痛みは愛情なので受け入れるほかなかった。


「─────?」


 サメちゃん達と仲良く話していると、緑色に光る小さな点がフラフラとやってくる。


 世界樹の精霊。世界樹の意志を持ち、この国の守護者として君臨する絶対的な神。


 今回はとてもお世話になったよ。世界樹がいなかったら、放送事故を起こすところだったし。


 俺は手のひらの上に精霊を載せると、人差し指で光を撫でる。


 光っているだけでどこが頭なのかは分からないが、とりあえずそれっぽいところを撫ればいいだろう。


「助かったよ世界樹。助けてくれなかったら、今頃この祭りは放送事故で酷いことになってた。というか、動けたんだな」

「────!!」

「へぇ、動いたのは初めてなんだ。あの邪神ニーズヘッグがお前を食ってた時も何もしなかったのか?」

「────」

「何も出来なかったんだ。世界樹に何もさせなかったって考えると、やっぱりあの邪神強すぎないか?よく倒せたな」


 どうやら世界樹は初めて自分の意思で植物を動かしたらしい。


 あれだけ大きな木が動くとなれば、それだけで脅威と言える。ニーズヘッグはその動きを封じる術を持っていたと考えると邪神と呼ばれる理由も納得だ。


 このユグドラシルでは神として扱われている世界樹を相手に、動きを封じられるだけの力を持っている。ニーズヘッグもいわば神と言えるわけだ。


「そうえば、あの祭りの邪魔をした空気の読めない奴らはどうなったの?」

「─────」

「えぇ........拷問した後ニブルヘイムとムスペルヘイムに放り込んだ?絶対死んでるじゃんそれ」

「─────!!─────!!」

「あはは。そんなに感謝されてるとはね」


 世界樹ちゃん、想像以上にえぐいことやってるわ。


 空気の読めない悲しい大人たちは、世界樹によって拷問された。


 詳しい内容を聞く気は無いが、おそらく世界樹の拷問はびっくりするぐらいえげつない拷問をしたのだろう。


 何せ、この加護の領域内ならば全ての生命の神とすら言われるような奴の拷問だ。


 植物で目をえぐったり、動物だって操れるだろう。


 あのクソデカイノシシとかが突っ込んできてフルボッコにされると考えると、やばすぎて笑えない。


 うん。世界樹ちゃんを怒らせるのはやめよう。絶対死んだ方がマシだと思うような拷問をされるに違いない。


「─────!!」

「ありがと。お陰で助かったよ。これからもよろしくな」

「────」


 もう一度頭を撫でると、精霊ちゃんは嬉しそうにクネクネと光が揺れる。


 まぁ、下手なことをしなければ世界樹に嫌われることは無いか。一応命の恩人みたいになってるしな。


「あ、いたいた。グレイちゃーん!!バーベキューしよー!!」

「エンシェントドラゴンの解体が終わったらしいぜ。この肉で豪華にパーティーしようじゃねぇか」

「花火の準備も終えましたよ。いやーアリカちゃんのお陰で花火を作るのが早くて助かりました」

「昔、趣味で花火を作っては打ち上げていたしな。2回ぐらいポリ公の世話になったが」

「何やってるんですかアリカちゃん........でもそこが可愛い!!」

「祭りは今からが本番よん。ほら、みんな準備準備!!」

「フォッフォッフォ!!いくつになっても、こういう祭りごとは楽しいのぉ!!」

「カルマさんもやります?」

「もちろんだ。というか、私はキミがいればそれで────(ゴニョゴニョ)」

「ハッハッハ!!人の誕生日を祝うのはよくあることだが、こうして気楽な誕生日パーティーと言うのは初めてかもしれんな!!」

「ワシも来たぞ。ぶっちゃけエンシェントドラゴンの素材で研究がしたい」

「ぶっちゃけすぎだな。今日ぐらい我慢せい」

「グレイ!!僕も参加するよ!!エンシェントドラゴンの肉をたかりに来た!!」


 世界樹やサメちゃんとのんびり過ごしていると、うるさい輩が次から次へとやってきて手際良くバーベキューの準備を始める。


 俺の意見は聞いてる?別にいいけども。


 後、カルマ王ちゃんは頑張ってね。異種族の結婚は結構大事な要素だから。


 まだこの国がひとつになって1年も経っていない今では、異種族間の結婚などは行われていない。


 この国の王が率先して結婚してくれれば、下のもの達の背中を押してくれることになると俺は思っている。


 でも、レイズは幽霊が性癖なんだよなぁ........カルマちゃん、幽霊になれたりしないかな。


「ボス!!肉が焼けたら争奪戦だぞ!!早く来ないと全部食われちまう!!」

「いや、あの量をこの人数で食い切れるわけねぇだろ。全員がモーリー・スカイラーでもあるまいし」


 俺はそう言いながら、サメちゃんがいたわとも思い出すと笑いながらかられの元へと向かうのであった。




【モーリー・スカイラー】

 アメリカ合衆国のプロフードファイター集団「オール・プロ・イーティング」に所属する女性フードファイター。

 アメリカでは2013年にネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権に出場し、10分で31本を食べた。小林尊(69個)やパット・バルトレッティ(55個)の記録には及ばないが、女性としてはトップの成績をおさめた。

 アメリカの餃子大会2015では、2分で93個を食べて優勝。同大会にゲスト出演した小林尊がその実力を評価している(小林尊は半分の時間の試技を行い、63個食べている)。    

 アメリカで2013年に開催されたかぼちゃパイ大会に出場し、8分で39個を食べて準優勝(優勝者は40個)。

 タコス早食い世界大会2017(早食い)に出場、小林尊に次ぐ準優勝。約3.4キロを食べるのに要した時間は、わずか2分24秒であった(小林1分45秒)。

 世界最大のタコス大会では、2017年に139個を、2018年に136個を食べてどちらも準優勝。159個で8連覇の小林尊と共に表彰台に上がった。

 あれ?小林尊やばくね?




 1.名無しの神

【現人神降臨】グレイ君、遂に神と同格となる。


 2.名無しの神

 グレイ君はこの世界に来てから神をも超えている定期。


 3.名無しの神

 グレイ君、世界樹と同格の存在になっちゃった........


 4.名無しの神

 今までの功績だけを見たらグレイは普通に神様扱いされてもおかしくないんだよなぁ。


 5.名無しの神

 犯罪よりも世界に齎した貢献の方が圧倒的だからな。五大ダンジョンを2つ攻略した時点で既に後世の歴史に名を残すレベルだから。


 6.名無しの神

 テロの時点で名を残すんだよなぁ。それはそれとして、世界樹って俺達とはまた違った神様なのか?


 7.名無しの神

 教えて!!有能神!!


 8.名無しの有能神

 厳密には神と同義ではないけど、ひとつの世界を作り出した亜神かな。神は私たちのように世界には干渉できないからね。

 神の定義は、世界を管理し世界に干渉しない高次元体。その点世界樹は干渉をする低次元体。

 でも、限りなく高次元体に近いから亜神。って考えられると思うよ。


 9.名無しの神

 なるほどよくわからん。つまり、世界樹はひとつの世界においては神だけど、それ以外は神ではないってこと?


 10.名無しの有能神

 まぁ、そう考えてくれればいいかな。


 11.名無しの神

 先生!!ちなみにピギーはどうなんですか?


 12.名無しの有能神

 あれは例外中の例外。多分私達よりも格が高いだろうし、本当に訳が分からない存在だよ。私達とも比べちゃいけないヤベー奴。


 13.名無しの神

 神よりヤベー奴がグレイ君の手の中にあるって訳か........本当にピギーって謎しかないな。


 14.名無しの有能神

 あの世界を管理する神が死ぬ気で情報を探しても何も出てこなかったからね。頭を抱えてたよ。


 15.名無しの神

 世界樹の情報はあるんやな。


 16.名無しの神

 まぁ、神話の世界のお話を再現しているだけだし、調べれば簡単に出てくるでしょ。


 17.名無しの神

 それにしても、今回は平和だったな。何も無かった。


 18.名無しの神

 何も無かった(100名以上死亡)


 19.名無しの神

 グレイ君が毎回毎回ヤベーことやらかすから、感覚が狂ってて草。普通に国家反逆起こされて鎮圧しているんだよなぁ。


 20.名無しの神

 確かに。グレイ君は異端分子をあぶりだして殺しているだけなんだよな。しかも、グレイ君に不満を持つ人達にも釘を指してる。

 俺、世界樹と友達なんだけどそれでも喧嘩売る?って感じで。


 21.名無しの神

 そうか。国の引き締めに使ったって考えられるのか。さすがグレイくん。統治の仕方が上手い。


 22.名無しの神

 グレイはきっとここまで見越していたんだな。さすがは俺たちのグレイ君だぜ!!


 23.名無しの神

 バカにしてて草。絶対思ってないやろ。


 24.名無しの神

 それにしても今回は平和だったなぁ........(死者100名以上)





 後書き。

 ね、平和だったでしょ?(死者100名以上)。

 と言うわけで、この章はここまで。いつも沢山のコメントありがとうございます。全部読んでるよ。

 グレイ君、世界樹と同格の神になる。コイツもう現人神だろ。

 お次もチル回のつもりです。今度も平和だよやったねグレイ君‼︎

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