抵抗軍
鳥の糞が爆発したかと思ったら、砲撃だったでござる。
そんなにギャグ漫画みたいなことが起きつつも、俺は糞を投げてきた奴らの顔を拝むことにした。
リィズがあっという間に敵わとっ捕まえてくれたお陰で、その顔を見ることが出来る。
車よりも早く走れるような人種から、逃げられると思うなよ?
「で、コイツらが犯人か」
「現場に行ったら、二人しかいなかった。他は既に逃げたのか、そもそも二人しかいなかったのか分からないね」
「よくやったぞリィズ。偉いな」
「えへへ」
俺は頑張って仕事をしてくれたリィズの頭を撫でてやりながら、気絶した2人の男女を見る。
1人は如何にも筋肉ムキムキなでっかい男。そしてもう1人はそんなでかい男とは対照的に何もかもが小さい女であった。
流石に身長はアリカよりも大きいが、明らかに劣っている部分がある。
その、こう言うとすごく失礼なのだが、まな板だな。男装が似合いそう、
「ほら、おねむの時間は終わりですよ。起きろ」
「ん........はっ!!」
「ハロー。心地の良い夢の時間は終わりだ」
ぺちぺちと男の方の頬を叩き、気絶から復活させてやる。
さて、これで目が覚めてくれた訳だが........彼らは何者なのだろうか。
軍人にしては、あまりにも服装が一般的すぎる。
装備もほぼ無いし、能力で戦いますというのが丸分かりだ。
となると、傭兵?それにしては、顔の雰囲気が修羅場をくぐって来た感じには思えない。
俺はともかく、修羅場を何度もくぐってきた戦士の顔はそれなりに貫禄があるものだ。もしかしたら、なりたてホヤホヤの傭兵かもしれんな。
「だ、誰だ貴様らは........」
「それはこっちのセリフだ。人の頭に砲弾を落としやがって。一歩間違えたらあの世行きだったんだぞ?信じもしない神のお膝元に行かさせれるところだったんだ」
俺はそう言いながら、銃を頭に突きつける。
そう。男の方ではなく、女の方に。
「シャーリー!!」
「へぇ?シャーリーって言うのか。いい名前だな」
「シャーリーを離せ!!このFR(フランス)のファック野郎!!」
「........あん?何言ってんだ?俺達のどこがFR(フランス)人に見える?後、口の利き方には気をつけろ。この女の額に穴を作りたくなければな」
FR?俺達が?
笑わせてくれる。俺がFR人となったら、真っ先に警察に引っ張られて死刑ハンケツ待ったナシだ。
面白いほど簡単にあの世へ行けるだろう。あの国ほど俺を恨んでいる国はないだろうしな。
しかし、アジアかおの俺をFR人と見間違うということは、少なくともFR軍人では無いな。
CHE(スイス)ってことも無さそうだし、となるとアレか。こいつ、DEU(ドイツ)の抵抗勢力のひとつか。
「お前、DEU(ドイツ)の抵抗軍か?」
「そうだ!!国を返せ!!第二次世界大戦で負けたくせして、今更出張ってきやがって!!俺達が国を取り戻した暁には、FRでホロコーストを起こしてやる!!この世界に生きる全てのFR人をぶっ殺して、フランスパンの上に乗せてやるよ!!」
わぁ、思想が強い。そして馬鹿すぎる。
俺達はFRと全く関係ないから効かないが、相手がFRだったらどうするんだよ。
命は一つだぜ?賭けにするにはあまりにも無謀すぎるってもんだ。
賭けをやるなら勝てる勝負じゃなきゃ。命をドブに捨てたいなら止めやしないけど。
「グレイちゃん。このバカ殺す?」
「いや、別にこんな悪口何も効かないしどうでもいいわ。アリカに馬鹿とか言われた方がメンタルに来るね」
「........グレイお兄ちゃんのばか」
「グハッ........!!」
ノリが分かっているアリカが、早速俺を馬鹿と呼ぶ。
うん。めっちゃメンタルにくる。この世界に来て3番目ぐらいに心に来たかもしれん。
俺、アリカに嫌われたら生きていけないかも。うちの組織のアイドルは、いつの間にかボスを精神的に殺す術を身につけてしまったようだ。
アリカ、頼むから悪い女にならないでくれよ。そのまま可愛い純粋な子で育ってくれ。
「ミスターグレイ。茶番は程々に」
「悪い悪い。で、お前ら俺達に攻撃してきたけど、俺らがどこの軍隊が分かっているのか?」
「この国に軍隊が居るってことは、ファッキンFRに決まってる!!」
「ほう。お前、この腕につけた国旗がFRに見えるのか。低学歴は怖いな。POL(ポーランド)とFRの違いも分からないらしい。この調子じゃ、DEU(ドイツ)とBEL(ベルギー)の国旗の違いも分からなさそうだな」
POLの軍服には、右肩の所に小さく国旗のマークが写っている。
俺は軍服に詳しくないので分からないが、今どきの軍服のトレンドは国旗をワンポイントオシャレとして起用するらしい。
正直ダッサイが、まぁそれは国の自由だ。
そういえば、日本の軍服とか作らないとな。デザインは........あー、人間基準で作るとエルフ達と感覚が合わなさそうだから、全部あいつらに丸投げしよう。
「POL(ポーランド)........?」
「ようやく気がついたのか?酷い話だぜ。悪しきFRから国土を解放してやろうとしているPOL様に対して、よくもまぁそんな態度が取れたよな。やっぱり殺すか。頭を弾けば、少しは冷静になれるのか?」
俺はそう言いながら、眠ったままの女にグリグリと銃口を押し付ける。
俺は男女平等主義者なので、相手が女だろうが頭を弾きます。男女平等パンチならぬ、男女平等バレットや!!
グレネードもオマケで付けますよ。
「ま、待ってくれ!!それだけは!!この子だけは見逃してくれ!!」
「えー、どうしよっかな。ジャクソン少尉。こういう場合の捕虜の扱いってどうなるんだ?」
「........さぁ?彼らが捕虜かどうかすらも怪しいしな。だが、先に攻撃を仕掛けてきたのはそちらだ。私は死にかけたわけだし、殺してもいいんじゃないか?」
俺のフリに100点満点の回答をくれるジャクソン少尉。
今から情報を聞き出したいから、人質として使うけど手が滑って凝らしちゃうかもと言うのを汲み取ってくれた。
よし、許可が出たし情報交換のお時間だよ。
「話がわかるね。おい、デカブツ。今からする質問に正直に答えろよ。この女の頭が吹き飛ぶか、口を開くかの2択だ。いいな?」
「........わ、わかった........」
どう足掻いても助かりようのないこの状況をようやく認めたデカブツは、急に小さく見えるのであった。
【ベルギーとドイツの国旗】
使われている色が同じで間違えやすい。道路にされた蹂躙(縦躙)ベルギー(縦に色が入ってる)、ベルリンマラソン横断ドイツ(横に色が入ってる)と覚えよう。
ちなみに、国旗に使われている色が似ているのは偶然らしい。紛らわしいからって理由でドイツかベルギーが統一とかしてくれないかな(テストで敗北した者の心の声)。
シャーリー言う女を人質に取り、頭に銃口を突きつけながら質問したが大体予想通りの回答ばかりが帰ってきた。
彼らはドイツ抵抗軍という名前で活動するレジスタンスであり、第二次世界大戦中ナチス・ドイツと戦ったフランス市民と同じようなことをしている。
占領された地域をと返すために愛国心の強い者たちが集まり、様々な方法でFR軍にダメージを与えていた。
例えば、今回みたいに砲撃を行ったり、FR軍が来そうな場所に地雷をしかけたり。
戦争をすれば、商人は儲かる。
なけなしの金すらも吸い上げる彼らは、金を払うなら誰にだって武器を売る。
そんな訳で、各地で見られる市民による抵抗はFR軍にわずかながら打撃を与えていた。
ほんのわずかだが。
「FR軍は、割と人道的な占領を行っていると聞いたが、なぜ大人しくせずに暴れるんだ?」
「ハッ!!あれのどこが人道的な占領だ!!反発した市民を銃で撃ち殺すのが人道的と言うなら、どんな戦争でも人道的だろうよ!!」
「まぁ、軍としても反発されないようにある程度の見せしめは必要だからな。ミスターグレイ、彼の言っている事はおそらく間違ってないぞ」
「その反発がどの程度かによって意見が別れそうだな。武器を持って軍を殺そうとしたら、それは正当防衛だ。言葉だけの場合は非人道的とも言えるかもな。こいつの話だけじゃなんとも言えん」
「そうだねぇ。実際に、私たちの耳に入ってきている情報じゃ“治安が良くなった”って聞いてるし。実際に現場を見ないと判断できないかもね」
「だが、この状況を使わない訳にも行かないそうだろう?ジョンソン少尉」
これは、味方を増やすチャンスだ。しかも、POL(ポーランド)軍人じゃないから、捨て駒のように気楽に使える。
ちょっと耳障りのいい言葉を適当に並べてやれば、彼らは簡単に踊ってくれるだろう。
そして、踊ってくれたらこちらも少しは楽になる。間違って砲弾が飛んでくるのは困るけどね。
「抵抗軍は何人ほどいるんだ?」
「大体1師団ほど。コミュニティはあるが、各地に広がりすぎててあまり機能してない」
「そっか。彼らを纏める者は?」
「居ない。リーダーを作れば派閥ができるという事でそう言うのは作らないように取り決めたんだ」
正しいかどうかはともかく、人のあり方を分かってんな。
人間、三人集まれば派閥ができるもんだ。うちの組織は個性が強すぎて個人主義みたいなところがあるから派閥がないけど。強いて言うなら、一人派閥かな?
それでも、男は男で、女は女で集まることが多い。性別がおなじと言うのは、それだけで仲間意識が芽生えるものだ。
そして、志同じくしてもそれは同じ。おそらくリーダー的な人物はいるが、明確にリーダーとされている訳ではなさそうだな。
ふむ。なら、頭の足りない駒を適当に誘導して補給路を潰すとか出来そうだな。彼らが人道的な占領を行っているのは、物資に余裕があるからだ。そこを叩いて余裕をなくしてやれば、徐々に人間の本性が現れる。
「なぁ、FR軍に一死報いなくないか?」
俺はそう言うと、ニヤッと笑って捨て駒にちょっとしたお使いを頼むのであった。
多分惨敗する可能性の方が高いけど、俺からしたらどうでもいい話だしな。
おばちゃんがくれた情報を有効活用させてもらうとしよう。
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