これは有能
どうやら俺はクソッタレの神にまだ見捨てられてないらしい。
いい天気だなーと思って空を見上げたら、鳥達が飛んでいて、その内の一匹がクソを垂れ流したように見えた。
それはちょうどジョンソン少尉の上に落ちそうだったので、心優しき俺は彼を守ってやろうとしたのである。
そしたら、砲弾が降ってきた。
何を言っているのか分からないって?俺もよくわからん。
毎回こんな感じで意図していない出来事が起こるものだから、俺はもう驚きを通り越して呆れている。
今どきの鳥の糞ってのは凄いんだな。爆発するんだ。
「まるで驚かないんだな........一歩間違えたらあの世に行っていたと言うのに」
「グダニスクって街を知ってるか?悪党共が集う大都会だ」
「軍人ならば知らないものなどいないだろう。あそこは、歴戦の軍人ですら近寄りたくない場所だ」
「あそこにいると、ありとあらゆる感覚が狂うんだよ。毎日血と硝煙の臭いを嗅ぐことになる。凄いぞ?あの街は。ちょっと歩くだけで銃弾がどこからともなく飛んでくるからな。ジョンソン少尉も行ってくるといい。あそこに慣れると、大抵の事には驚かなくなるぞ」
「ハハッ。驚く暇もなく死ぬだろうな。そして死んだら驚くもクソもない。なんだ?ミスターグレイは私を殺したいのか?」
「まさか。アンタが死んだら、この腐ったPOL(ポーランド)がさらに腐るぞ」
こんな空から砲弾が降ってくる程度、グダニスクじゃ日常に近いんだよ。
なんなら、機械兵器まで空から降ってきて、しらない間にマスターにされるからな。
どっかの国の特殊部隊員を連れて。
適当に歩いているだけで、流れ弾に当たって死ねる街。それがみんな大好きグダニスクである。
二度と行きたくないね。
そういえば、グダニスクから俺とシュルカが撤退してしまったいま、グダニスクはどんなことになっているのだろうか。
シュルカがダンジョンを手放すとは思えないが、確実に勢力は衰えているはず。
となれば、あの薬物協会辺りが力を持ってそうだな。あの神父のおっさん、元気にしているといいけど。
「
「見てのとおりピンピンだ。レミヤ。相手の砲撃はどこから来た?」
懐かしきグダニスクの記憶を思い出していると、レミヤが慌てて俺の元へとやってくる。
こういう時、いの一番に駆けつけてくれるのはいつもレミヤだ。
ポンコツポンコツとは言っているものの、なんやかんや俺に1番優しいまである。
リィズも俺に優しいけど、なんか俺は死なないと言う謎の信頼があるからな。
リィズに限らずほかの連中も。
これがアリカとかなら、全員血相を変えて飛び出してきただろう。しかし、被害者が俺となると“まぁ、ボスだからいっか”みたいになる。
いや良くねぇよ。むしろ、俺の時ほど心配しろよ。
この組織の中でいちばん弱いのは俺だぞ?我、最弱ぞ?
この変な信頼を無くしてくれ頼むから。なんど言えばわかる。俺はただの人間なんだよ。
「あぁ、良かったです。リーズヘルトさん達は“ボスだからどうせ死んでない”って言ってましたが、ケガがないとは限りませんからね」
「........レミヤも俺が死んでないと?」
「え?
訂正。どいつもこいつも俺をゾンビかなんかに思ってる。
俺はただの人間だって言ってるでしょーが。銃弾を食らったら死ぬの。ご飯食べなくても、毒を飲んでも神々の戦争に巻き込まれても死ぬの。
なんで当たり前のように生きていると思ってんの?アレか?ピギーか?
ピギーとか言う存在そのものがチートなやつが居るからそう思ってるのか?
ピギーだって絶対じゃないんだぞ。ほら、此の前黙示録に飛ばされた時とか、ウトウトしてたらしいし。
ピギーにも眠いとか言う概念があった事には驚いたけどね。
おれは頬をペタペタと冷たい手で触りながら、まるでわが子を可愛がるかのようにしてくるレミヤに一切抵抗はせず話を続ける。
お前はおれのオカンか。
「砲撃してきた場所は?」
「既に特定し、反撃いたしました。私の能力はご存知でしょう?その気になれば大陸弾道ミサイルぐらいまで吹っ飛ばせますから」
「相変わらず滅茶苦茶な能力だな........早めにCHをぶっ潰して正解だったと心の底から思うよ」
「一人、天才がいましたからね。まぁ、死にましたが」
「それで、砲撃はどこから?」
「ここから10km離れた場所にある小さめの山ですね。あぁ、ちょうど見えます。あそこの山頂辺りかと。しかし、砲撃音が聞こえ出来ませんでしたので今現在リーズヘルトさんが索敵に向かっています。生き残りが何名がいるでしょうから、生け捕りにしてきてくれるはずです」
これは有能AI。
レミヤが指を指した方を見ると、既にミサイルを打ち込んだ跡が残っているのか煙が上がっていた。
あそこから砲撃が来たのか。
俺は砲弾の音で耳がちょっとイカれてたから聞こえなかったが、どうやら反撃をしっかりとしていたらしい。
しかも、砲撃音が聞こえなかったことを怪しみ、索敵を既に送っているとは有能だ。
やれば出来るじゃん。なんでお前はやればできる子なのに、ポンコツ具合の方が多いんだ。
未だにバルカン半島への宣戦布告内容は忘れられないからな。歴史上、あれほど酷い宣戦布告もそうはない。
まだ“お前ら気に入らないから殺す”の方が納得できるよ。
「と、言うことらしい。勝手に動いて悪かった。ジョンソン少尉」
「気にしてない。むしろ、ここで素早い対応ができるのかと驚いでいる。私は、戦争というものを知らないのだな。今もまだ頭がぼーっとして何も考えられない。本当なら混乱する兵士達を........あれ?混乱してない?」
砲撃があったと言うのに、兵士達は平然としている。
戦争をろくに経験していない兵士たちが奇襲に会った際、基本的には取り乱す。
それが砲撃となれば尚更だ。
しかし、俺の目には誰一人として慌てている兵士が見えなかった。むしろ、どこかリラックスしているようにすら見える。
唯一少し取り乱しているのはジョンソン少尉のみ。彼は死にかけたのだから、気持ちはわからなくもない。
慣れると何も感じなくなるぞ。ジョンソン少尉も修行のためにグダニスクに行くといい。
あそこで一ヶ月も暮らせば、大抵の事はマシに思えるようになる。
その一ヶ月を生き抜くのが超大変だが。
「砲撃の直後、兵士たちが取り乱すことを危惧したアリカちゃんが、ちょっとした催眠薬を即座に作ってばら蒔いたんです。恐怖を一時的に落ち着かせ、リラックスさせる薬ですね。ほら、ピギーさんを見る前に飲んでいたヤツをさらにマイルドにした感じのやつです」
「えっぐい効果してんな。それだけで億万長者になれるぞ。強引に死の恐怖を抑え込めるとか凄すぎないか?」
「ジョンソン少尉のように、真横に死が迫っている時は効き目がないみたいですけどね。なので、最後列の方の中には少し取り乱す方もいますが........まぁ、それでも薬が効いているかと」
「アリカってすごいんだな。そりゃカルテルが狙ってたわけだ」
アリカの薬、想像以上に応用が効く上にやばい。
毒物や回復など、人の身体に効く薬を作ることは知っていたが、精神に作用する薬まで作れるとは驚きだ。
しかも、それを空気中に放って三個師団全ての心を安定させるとか最早神の領域にすらおもえる。
あれ?アリカもクソ強くね?
うちの組織、まじでボス以外有能しかいないじゃん。たまに大きなやらかしはするけど、滅茶苦茶凄いじゃん。
でも何故だろう。純粋に褒めてあげられない。
アリカは後でいっぱい褒めてやるとして、レミヤはどうしても素直に褒められない。
お前、有能な時よりもポンコツの方が多いし酷いんだよ。
「私からすれば、その薬を服用してもなお死の恐怖に支配されるしかないピギーさんの方がやばいと思いますけどね。あれ、未だに耐えられるのってお2人だけじゃないですか」
「ピギーを引き合いに出したらダメだろ。ピギーはあの英雄王ですら全く歯が立たなかった真の強者だからな」
『ピギー!!』
“えへん!!”と言いたげに鳴くピギー。
可愛い。
今は仲間以外に多くの他人がいるから呼び出せないが、これが終わったらまた遊んであげるからね。
「それにしても、あんな山から砲撃してくるような部隊があるのか?CHE(スイス)軍の残党とか?それともFR(フランス)軍か?」
「どちらの可用性もありますが........可能性として高いのは後者ですかね。残党なんて1人もいませんし」
「捕虜一名だったなそういえば。となるとFR軍の可能性の方が高いのか........あーいや、もしかしたらDEU(ドイツ)の抵抗軍の可能性もありそうだな。確か、ハンターと市民による構成だっただろ?あれ。俺達がPOL軍だと分からず、攻撃を仕掛けてきた可能性は否めない」
「それもありえそうですね。もくしは、これら以外の第三者か。どちらにせよ、リーズヘルトさんが帰ってくればわかることです。あの一撃で皆殺しにできるほど、私の一撃は大きくありませんから」
いや、ミサイルぶっぱなしている時点でかなりヤバいんだけどね?
その気になれば大陸弾道ミサイルまで飛ばせるらしいし。
もう滅茶苦茶だよその能力。俺と交換してほしい。
........いや、ゲームとかできなくなるからこのままでいいかな。なんやかんや、この能力のお陰で生き残っている訳だし。
食料とかの確保が楽だから、餓死とかもないしな。
俺は、昔とは違い何気にこの能力が気に入っていることに驚きつつも“せめて前世に遊んだ玩具全部だったらなぁ”と思うのであった。
そしたら、もっと多くの手札が用意できたし、もっと別のゲームもできたのに。
ソロでも簡単なサンブレやりたいよ。毎回極限ラージャンしばくのはさすがに疲れる。
後書き。
ようやく村下位のキークエを終えて星七突入(ダブルクロス)。
でも、交易増やしたいから集会所行くね.....(白目
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます