苛烈する戦争
レミヤに回収された俺達は、二ヶ月ぶりに仲間達と顔を合わせることになった。
ちょっと匂いとか大丈夫かと心配になったが、洗濯は二日に一回はしていたし、石鹸を具現化できてきたので体もそこまで汚れている訳では無い。
血の匂いがこびりついてしまっているぐらいで、ほかの面々と顔を合わせても何も言われなかった。
と言うか、全員で来たのかよ。どれだけ俺達の事が心配だったんだ。
「........は?三日?まだ三日してたってないのか?」
「そうですよ?この三日間ほぼ休み無しで探していたので疲れました。でも、こうして元気に帰ってきてくれて嬉しいです」
「........どうやら、あのダンジョンの中と地球じゃかなり時間の流れに違いがあるみたいだね。全く気づかなかった」
「
レミヤに連れられて飛行機に乗り込んだ俺とリィズ。
この二ヶ月間で何があったのかを聞こうと思ったのだが、どうやらこの世界はまだ三日程度しか経っていないらしい。
これはさすがに予想外。あのダンジョンの中だけ異様に時間な早く流れていたとは、さすがに分からないよ。
俺はある意味まだ三日しか経っていないことに安堵しつつ、俺の膝の上で嬉しそうに足をパタパタとさせるアリカの頭を撫でる。
この飛行機はかなり小さく九人も乗り込める席がないので、体の小さいアリカは誰かの上に座ることになったのだ。
今は俺の膝の上で可愛らしく座っているが、俺の膝に限界がきたらリィズの膝に乗るだろう。
それまでは、この可愛いウチのアイドルちゃんの頭でも撫でて癒されようかな。
「で、俺達が居なかったその三日間で何か大きな動きはあったか?」
「どこもかしこも戦争状態で、大きな動きとがありますよ。まず、我が国はCHに完全な勝利を手にし、既に奴らは国としての形を保っていません。街に
まぁ、俺が飛ばされる前から主要都市がほぼ全部壊滅してたし、政府の連中も皆殺しにしてたからな。これは順当と言える。
爺さんが強すぎた上に暴れすぎなんだよ。国家相手にほぼ一人で勝ったようなものだからな。
一騎当千ではなく一騎当国とか、最早人のなせる領域では無い。
そして、既に死んだのに死体蹴りが確定しているCHさんぇ........ちょっと同情したくなるが、俺を五大ダンジョンにぶっ飛ばしたのは間違いなく中国人なので連帯責任でよろしくお願いします。
「CHが完全に消滅してしまったことから、バルカン諸国は攻撃を停止しました。しかし、欧州の中にはCHと仲の良い国がそれなりにありまして、現在はGRC(ギリシャ)及びTUR(トルコ)との戦争が勃発しています」
「GRCはバルカンじゃないのか?」
「時と場合によりますよ。通常、バルカン諸国と言われる国にGRCは含まれませんから。議会の時によばれるのはあるそうですけどね。どうも、CHとの関係がそれなりに深かったので、元より仲はそこまで良くないそうです」
世界ってメンドクセェな。
みんな仲良く手を繋ぐことが出来ないとは知っているが、お隣の国ぐらいは仲良くしようよ。
まぁ、残念なことに、それが出来たら人の歴史の中で戦争と言うものは起こらないのだが。
今こそ世界平和を解いて戦場の中で神の愛でも叫べよ平和主義者共。口だけじゃなくて、行動を見せろ。
俺なんで五大ダンジョンのひとつを攻略して世界をまたひとつ平和にしたんだぞ。感謝しやがれファッキン人類。
俺自分で言うのもなんだが、ノーベル平和賞ぐらい貰えてもいい気がするんだよ。
500年もの間世界に脅威を齎した五大ダンジョンの内、2つも攻略をして安全な場所にしたんだぞ?
ぶっちゃけ、英雄王アーサーよりも世界に貢献している気がする。口だけで平和を唱え、人々を救うだのなんだの言うような詐欺師ではなく、歴史的快挙をしていると思うんだけどなぁ。
「その他の国は。ソ連の残骸とかあそこら辺はどうなってる?」
「最初こそ動きが見られましたが、どうも私達が暴れすぎたがために動きを停めています。下手に行動して殺されるよりも、大人しくして生きる道を選んだらしいですね。賢い選択だとは思います。それと、東南アジア諸国が連合を組んで日本帝国をその頭にしようとする動きが見られますね。未承認国家にしっぽを振る姿は滑稽ですよ」
レミヤはそう言いながら、鼻で笑って首を横に振る。
どうやら俺が思っている以上に、アジアではCHの力が強かったらしい。
たった一ヶ国が滅んだだけでここまで動きが変わってくるとは、手のひらドリルかな?たぶん地球の中心まで掘れるぞそのドリル。
いつの時代だって強いやつが偉いのは変わらないらしいな。今回の場合は国が強いというか、おじいちゃんが強いだけなんだけどさ。
しかも、国を守るのはそんなおじいちゃんですら撤退を余儀なくされたエルフ達。プラスアルファでダークエルフとドワーフ、そしてタイタンも付いてくるというおまけ付き。
多分、全世界で一番の軍事国家になってるよ。その気になれば世界征服も夢じゃなさそう。
「他は?」
「USAとMEX(メキシコ)が本格的に衝突を始めました。国を文字ど通り真っ二つに割られ、かなり国力を落としたとは言えど超大国です。戦争をおっ始められるぐらいの余力は残っていたそうですね」
「戦況は?」
「ややUSA側が有利となっています。能力者の質や軍の質で勝っているUSA側がこのまま押し切れるかと。どうも国民がメキシコ人に対する憎悪が大きくなっているらしく、メキシコ人狩りが流行り始めているそうです。この戦争も、USAが正義と考える人が多いそうですね」
「ご苦労なこった。戦争に正義もクソもありゃしないのに。頭の中はお花畑か?殺し合いを始めた時点で、お互いに同じ土俵に上がった“クズ”だよ」
「ボスの言う通りだ。正義なんて所詮は後付けの言い訳。気に食わないから、嫌いだから殺す。それだけなのにな。どうして人はこうも綺麗事が好きなのかね」
「人は醜い花よりかはきれいな花になりたいものなのさ。それよりいいのかジルハード。お前の娘はまだUSAにいるんだろ」
元ギャングのジルハードだが、こいつは2人の娘を持つ子持ちだ。
どうやっているのかは知らないが、娘に金をこっそり送っているという話も聞く。
“将来はパパと結婚する!!”という子供の可愛い言葉を真に受けるような親バカが、戦争の中に巻き込まれた子供を心配しないはずもない。
一応身内なのだ。最悪の場合は、連れ去って安全を確保してあげることだって考えている。
「問題ないさ。うちの子達はそこまで強い能力者じゃないし、何よりニューヨークに住んでいるからな。あそこの防空網は凄まじいんだぜ?ぶった切られて混乱している今でもしっかりと民衆を守ってくれるだろうさ」
「ジルハードがそう言うならいいが........もし娘が心配なら言えよ。保護してやる」
「顔も忘れたであろう親ガ出しゃばるのはあまり良くないさ。気持ちだけでいいぞ」
ちょっとスカしたように言うジルハード。
なんだろう。そのドヤ顔ムカつくから殴り飛ばしたいな。
殴っていい?その鼻っ面に拳を叩き込んでいい?
「何言ってんだこいつ。自分の娘に彼氏が出来たらその男をぶっ殺すとか言ってたくせに」
「カッコつけてんじゃねーよ。何もかっこよくないから」
「ダッサ。ダサすぎて吐き気がしてきたっす。娘さん達はこんなおっさんに育てられたとか、可哀想過ぎますよ」
「おうお前ら、ここぞとばかりに殴ってくるな。あんまり過ぎないか?」
あまりのダサさに思わず暴言が飛び出る皆。
あのアリカですら、呆れ返って物が言えない顔をしている。
でもダサいよ。ジルハード。そんなにダサいと娘さんに嫌われるぞ。
「そういえば、ミスシュルカ達の方はどうなってるんだ?こっちが終わったから、手を貸せるには貸せるだろ」
「今は彼女達のボスを救出しているところらしいですね。あちらはあちらで上手くやっているようですし、連絡が来るまでは放置でいい気がしますよ」
「あまり人様の革命にあれこれ言うのも違うしな。あいつらのやり方でやればいいのさ。一応、俺たちの仕事は果たした。主に、このイカれた爺さんが、だけどな」
「フォッフォッフォ。目に映ったものは全てぶった切ったのでのぉ........バルカンの兵士を切り飛ばしたのかどうかなんぞ、覚えておらぬわ!!」
そう言ってケラケラと笑う吾郎おじいちゃん。
そりゃ何千万、下手したら億以上の人を殺してきた爺さんからすれば覚える価値もない雑兵だったのだろう。
戦場に送られた人達は可愛そうに。英雄になることを夢みて戦場にたった瞬間、その首を切り落とされるのだから。
舞台に上がったら、そこは処刑台だった気分だろうな。知らんけど。
「その他の国で目立った動きはあるか?」
「そのほかで言いますと、FRがDEU(ドイツ)とドンパチを始めましたね。第二次世界大戦の再来ですよ。しかも今度はベルリンに向けてのタイムアタックです。立場が逆転しましたね」
「ボスがマルセイユをぶっ殺したから随分と戦力は落ちたが、それでもなお奴らの閉寮は健在だからな。POL(ポーランド)はこの間に何らかの対策を打つだろうよ。じゃないとDEUが滅んだあとは自分達だ」
なるほど。DEUとFRが戦争を始めたのか。そして、今回はFRの方が優勢になっているらしい。
お前ら仲良いね。パリまでマラソンしていたかと思えば、次はベルリンか。
ちなみに
........今回は大丈夫か。DEUがベルギーを通って道路にしたのは、マジノ線を嫌っての事だしな。
なお、その後調べてわかったが、どうやら今回も道路国家君は道路にされていたらしい。
どうも、DEUと強いつながりがあったみたいで、滅茶苦茶邪魔になっていたらしいな。
毎度毎度運がない国だ。毎回2択を外しまくってやがる。
後書き。
毎回ベルギーされる道路君。今回も無事死亡。
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