第五のラッパ
第三、第四のラッパが鳴り響き、川の水が飲めなくなって天が暗くなってから1週間が経過した。
また三日後に審判のラッパが鳴り響くかと思ったが、特にそんな様子もなく、俺とリィズは色々なゲームをやって暇を潰している。
食料を集める必要もなければ、苦い水を飲んで死に怯える事も無い。
ちょっと寒くなったなーぐらいで、ほかは特に変わったことは無かった。
でもこのダンジョン、普通に攻略しようとしたらとんでもなく難易度が高いよな。
四騎士を倒すのはまずアウト。正確には、ダンジョンの外で倒すのは絶対に辞めておいた方がいい。
予想が正しければ、騎士を倒す事に地球に厄災が降りかかることになる。
多分、第三のラッパが鳴り響いた辺りで人類の大半が亡びる。
未だにこの世界は船を使って物資の運搬をしている方が多い。船の三分の一が壊された挙句、海の三分の一が血に染って海の生物達の三分の一が消え去れば、その時点で何もかもがアウトになってしまうだろう。
海の生態系は間違いなく壊れるし、海が血となれば成分も変わる。飲み水の確保も、この時点でかなり難しくなるだろうし。何より、母なる海とは人間が生きる上で最も大切な基盤なのだ。
その土台が崩れれば、なし崩し的に上にいるもの達も死ぬ。
そして、川の水も飲めなくなる。
まぁ、多くの人達は対応できずに死ぬ事があるだろうが、まだ滅びることは無い。
この世界には水を自らの手で作り出す能力者や、ダンジョンがあるから。
多くの人は死ぬだろうが、これで絶滅することは無いだろう。
んで、問題は第四のラッパ。
これはヤバイ。
何がやばいって、月と太陽そして、空の星の三分の一が打たれ、その分だけ昼も夜も暗くなるのだ。
抽象的すぎて少し分かりづらいが、簡単に解釈すると“三分の一が消える”と言うこと。
もし破壊されて消滅した場合、これはとんでもなくやばいことが起こる。
絶妙なバランスで保っていた太陽系は破壊され、きっと地球は太陽の重力を振り切って旅に出るか、太陽に飲み込まれる事になってしまうだろう。
そんな事が起これば、人間どころか地球そのものが終わる。
きっと宇宙のどこかで惑星と衝突し、火星と木星の間にある小惑星郡のように粉々になってしまうに違いない。
「マジで赤騎士を倒さなかったのは正解だよな。人類史上最悪の戦犯になるところだった」
「外でラッパを吹かれたら本当にやばかっただろうね。むしろ、第一の騎士を殺した時によく南アジアが滅んだだけで済んだものだよ」
「全くだ。下手をしたらその騎士を倒したSランクハンターが戦犯になる所だったからな。よくもまぁ運良く生き延びたものだ」
俺はそう言いながら、PSPをポチポチと触る。
基本的に暇つぶしとしてやるゲームは某モンスターをハントする作品のナンバリング4が多いのだが、偶には違うゲームだってやりたくなる。
まぁ、狩りゲーな事に変わりはないんだけどさ。
そんな訳で今触っているゲームは、俺が最も好きなPSPゲームである神を喰らうゲームだ。
ちなみに、バーストの方である。
「お、終わった。相変わらずこのゲームは一狩りが早いね」
「NPCも連れて行けるから、ソロでも攻略が簡単なんだよ。基本的にゴリ押せば勝てるしな。死んでも仲間が生き返らせてくれるし、個人的にはこっちの方が好きだったりする。素材集めがそこまで難しくないんだよね」
「スタイリッシュで長い移動も必要ないし、マップロードもないからストレスも貯まらない。やり込み要素がちょっと薄いけど、全クエストSSSを狙おうとすると結構やり込みがいるよね」
「本当に神ゲーなんだよこれは。その続編は........うん。まぁ、その、イマイチな部分もあったけど」
バーストは神ゲーだった。でも、レイジバーストはストーリーがちょっとイマイチで、3はハッキリ言ってゴミだった。
マジで、オリジナルバレットにコスト上限を設けたの許さんからな。強すぎるのは分かるけど、あれじゃOPの意味ないじゃん。
このゲームのいいところは、ガンナーと剣士を両方組み合わせて戦えるところなのに、ほぼ剣士でしか戦ってないし。
ロマン砲をぶっぱなしまくるのが楽しいんだろあれは。なぜコスト上限を儲けたのか今でも理解できない。ゲームのいちばん楽しいところを潰していると気づけ馬鹿野郎。
ごめんね3が好きな人よ。俺はバーストこそ至高の民だから、ゲームの根幹を揺るがしかねない3はあまり好きでは無いのだ。
まぁ、文句を言いながらもやってはいたんだけどね。でも、やりこんだ時間はいちばん短い。
「続編があるの?」
「あるぞ。でも、続編をやったのが中学生の頃だったから、続きはできないな。ある意味幸せだぞ。この先絶望しなくていい」
「........なんというか、グレイちゃん顔が怖いよ」
おっと、それはいけないな。
俺は自分の顔をムニムニとして笑顔を作る。
過去のことは忘れるんだ。MMOなんてなかったんや。いや、割と楽しかったっちゃ楽しかったけども。
「それにしても、このダンジョンは嫌らしいね。耐久型ダンジョンなんて初めてかも」
「作ったやつは性格が悪いな。間違いなく」
「私達はグレイちゃんがいるから問題ないけどね」
このダンジョンの最も難しいポイントは、ダンジョンでの生存だ。
俺達も生物である以上、毎日の飲み食いが必要となる。そして、その飲み食いに必要な物資は全て俺の能力でしか作ってない。
この世界にある水は既に飲めないし、そもそも水よりコーラやスプライトの方が美味しいし。
「私達がこの世界に入ってきてから十日が経過している。グレイちゃん、ダンジョンの攻略に1番必要なものは何?」
「強さ?」
「それもそうだけど、1番必要なのは物資だよ。特に飲み水と食料。基本的にハンターは三日~四日分の物資だけ持ってダンジョンに潜ることが多いの。それでもかなりの量になるけどね」
「人が生きるのに必要な水の量が1日約2リットル。食事で補えるのが1リットル程度だから、大体4リットルぐらいは持ち込みが必要なのか」
「そうだね。大切に使えば1週間ぐらいは耐えられるけど、限界はあるよ」
飲まなきゃ生きられないし、食べなきゃ力が出ない。そして、このダンジョンは無駄に物資を消耗させ、挙句の果てには生命の水すらも死の毒に変えてくる。
あれ?俺の能力が無かったらかなりやばい事になってたな?最悪、人としてのラインを超える事になってしまってたのか。
「よくもまぁ、何も持たずにダンジョンに飛び込んだな。俺の能力が無かったら今頃2人して死んでたわけだ」
「そういう事だね。本当に性格が悪いよこのダンジョン。物資が残り少なくなれば、次に待っているのは醜い奪い合いだけ。天の裁きが下されるよりも先に、自らの手によって滅びを呼ぶことになるんだから」
「なるほど。奪い合うか、仲良く支え合いながら共倒れするか、どちらか選べるわけか。天使様も慈悲深いな」
「全くだね。ファッキンエンジェルだよ」
俺は、改めてこのダンジョンの恐ろしさを身に染みて理解しながら、リィズとゲームを続けるのであった。
あー、放射バレットで脳死討伐楽しいー。やっぱりバーストは神ゲーや。
【ゴッドイーター】
日本で2010年2月4日、バンダイナムコゲームス(当時)によって発売されたゲーム、そのシリーズ、またはそのシリーズに登場する架空の特殊部隊を指す言葉。通称は「GE」。
リィズと狩りをしたり、狩りに疲れてのんびりできるゲームをやったりと、到底五大ダンジョンの攻略とは思えない日々を過ごす事更に三日。
遂に第五の審判が下される。
今日も140クエストを回そうかなと、ゲーム機を開いたその時リィズが天を見上げたのだ。
「来るよ。グレイちゃん」
「流石に今回は外に出れねぇな。第五のラッパ。星が天から地に落ち、底知れぬ所まで通じる穴を開け、底知れぬ所の使(アバドン)を王としているイナゴ達が大きな煙とともに飛び出し、額に神の印のない人達を襲い、さそりにさされる時のような苦痛を五カ月間与える........だったか?もしかして、ここから五ヶ月も耐久レースするのか。流石にキツイぞ」
「半年近くも拘束されるのは困るかもね。でも、私達はこれをやらないといけないよ」
第五のラッパ吹き。
先程俺が言ったとおり、第五のラッパは五ヶ月間イナゴの群れに襲われるというクソみたいな試練だったはずだ。
額に神の印があれば特に問題ないのだが、流石に無理がありすぎる。
なんだよ額に神の印って。抽象的すぎてわかんねぇよ。
黙示録通りに事が進むのであれば、今から五ヶ月間地獄を味わうはずだ。
生き残ることはできるだろう。しかし、5ヶ月間はあまりにも長すぎる。
下手をしたら世界大戦が終わってますよ。おじいちゃんが大暴しまくって全世界をその下に置いている可能性すらある。
滅ぶことは先ず無いだろうしな。エルフとかあそこら辺があまりにも強いし。
そんなことを思っていると、プヲォォォォォォ!!と、聞きなれたラッパの音が鳴り響く。
俺は一応この時のために何重にも作っておいたブルーシートのテント+鉄パイプの柵に向かって能力を使用するとそのブルーシートや鉄パイプ達に油をかけていく。
範囲内ならば見えずとも具現化できるのは便利だな。おかげで油をの雨を振らせられる。
「よくもまぁ、イナゴ相手に油で対抗しようだなんて思いつくね」
「昔、蝗害の対策を太古の人達はどうしていたのか調べたことがあってな。その時に、油を田んぼの水に敷いて呼吸出来なくさせていたってのを読んだ。水の雨はダメらしいけどな」
「粘度の違いなのかな?」
「さぁ?分からんけど、とりあえず100m圏内は立ち入り禁止だ。俺達の生活区域に入ってくるんじゃねぇよ」
イナゴは油に弱い。油で覆われると、呼吸ができなくなるそうで死んでしまうらしい。
昔使われた蝗害対策なのだが、昔は油が貴重で流行らなかったそうな。
しかし、俺は無限に油を出すことが出来るので、全くもって関係の無い話である。
おら、かかってこいよ虫畜生。お前らをカラッと揚げて食ってやってもいいんだぞ。
イナゴ達がブルーシートに突っ込んでくる音が聞こえるが、所詮はイナゴなので突破はできない。
滅茶苦茶厳重に作ったブルーシートの要塞にイナゴ達が入れる区域は存在せず、例え入れる場所があっても、その前に油の雨が呼吸を塞ぐ。
今1番やられてやばいのは火をつけられることだが、生憎イナゴが火を起こす手段を持っているわけもなかった。
ピギーに出てきてもらうという方法もあったんだけど、この子能力はほぼ全て掻き消しちゃうから出せないんだよ。
強すぎる力ってのも考えものだよね。
「........問題なさそうだし、ゲームをやるか」
「そうだね。今日こそゴール武器を引く」
こうして、第五のラッパの審判も、俺たちからすればどうってことないただの雑音でしかないのであった。
後書き。
バーストこそが至高(過激派)。
私、2及びレイジバーストとリザレクションはやったことが無いので、もしかしたらバーストよりも面白いのかもしれない。(リザレクはほぼバーストらしいが)
Vitaとプレ4持ってないんですよね。3はpcで出来るから買ったんだけど。いつかはやりたい。
ただし3。オメーはダメだ。バレットにコストの概念持ち出すな。
みんなは、どれが好きかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます