第三、第四のラッパ


 黙示録のダンジョンのクリア条件、もしかしなくても七つのラッパが引き起こす災害に耐えなければならない説。


 なんてこった。このダンジョンはキリスト教に人を改宗させようとする悪魔のようなダンジョンだったのか。


 強制的に人に信仰心を植え付けたとしても、人はその神を信じるとは限らない。


 KKKの連中にでも攻略させろよ。そしたら被害なしで攻略できるだろ。


 第二のラッパが鳴り響き、丘に見える海が真っ赤に染まってから三日が経過した。


 今の所、俺たちの生活には何も問題なはい。だって海に住んでいるわけじゃないからね。


 塩が取れなくなっても別に困らないし、そもそも塩は能力で具現化できてしまう。


「第三、第四のラッパは多分問題ないだろうけど、問題はその後だよな。このダンジョンがヨハネの黙示録通りに進んでいるとしたら、対策はしなきゃならん」

「ラッパを吹かせない方法を取るというのも一つの手だけど、私の本能が言ってるよ。あのラッパを止めたらもっとやばい事になるって」

「奇遇だな。俺もだ。ピギーを使ってラッパを止めさせる方法も考えたけど、絶対やばいことが起こる。それこそ、この世界が急に滅んでもおかしくは無い程のやつがな」


 ダンジョンのクリア条件が何となくわかったのならば、次はダンジョンクリアに向けて何かしらの対策をする必要がある。


 第三、第四のラッパは正直なんとでもなるだろう。


 水の確保は問題ないし、昼と夜が暗くなるだけならどうとでもなる。


 問題は第五以降のラッパ。


 第五は事前に準備しておけば何とかなりそうな気もするが、第六と第七はどうしたらいいのかすら分からない。


 あぁヨハネよ。お前はなんでこんなにも頭の悪い小説を作ったんだ。お陰様で、お前の子孫は苦労してるんだぞ。


 対策としては、ラッパを吹かせないと言う対策がある。


 しかし、本能的に感じてしまった。


 あれは止めたらダメだと。止めたら、さらなる厄災が降りかかると。


 ピギーも“やめた方がいい”と言ってるぐらいだ。世界を三度滅ぼした存在の言葉は素直に聞いておいた方がいい。


 ちなみに、封印を解除したらなんとでもなると胸を張っていたな。


 でもそれをやったら、この世界どころか地球そのものが終わるので却下で。君、前科三犯なの忘れないでね。


「まぁ、なるようになれとしか言えないよな。とりあえず、神の裁きを大人しく受けるしかない」

「そうなっちゃうよね。第六、第七のラッパはもうどうにでもなれって感じ。大人しくその時を待つしかないよ」

「第三のラッパは川の水が飲めなくなるんだったよな。俺の具現化した水は大丈夫だと思うか?」

「多分大丈夫だよ。魔力から生成される水と、川に存在する水は同じ水だけど分類が違うとされているからね」

「そうなの?」

「私も詳しくは知らないけど、簡単に言うなら魔力の籠った水と魔力の無い水の違いだよ。第三のラッパでは川の水がダメになるだけで、能力によって生成された水がダメになるわけじゃない。グレイちゃんの能力で作りだした水が飲めなくなるなんてことは無いよ」


 へぇ、それは知らなかった。


 まぁ、水にも淡水や海水といった違いがあるしな。そりゃ、能力で生成した水と川の水も別の扱いになるか。


「にしても暇だな........早く帰りたいよ」

「外の世界とは完全に隔離されちゃってるからねぇ。もうゲームでもする?」

「そうしようかな。考えてもどうしようもないのはわかってるし、久々に140クエを回すか。ゴール武器と神おまを堀りに行こう」

「お、いいね。ゴール麻痺双剣が欲しいんだよね」

「それは俺も欲しい。覚醒必須ならあるんだけど、スキル枠取られるのがマジで困るんだよなぁ」

「覚醒スキル本当に邪魔だよね。準ゴールみたいな性能している武器でも、正直覚醒必須なら使いたくないよ。スキルビルドの幅がかなり狭くなるし」


 結局、俺とリィズはやることが無いということで、暇つぶしに廃人ゲーマーの道へと進むのであった。


 尚、その日は運が悪かったのか、丸一日クエを回してもカスしか出てこなかった。


 やはりこのゲームは沼である。沼りすぎて、人生を捨てられるぐらいには沼だよこれ。




【第一のラッパ】

 血の混じった雹と火が地上に降り注ぎ、地上の三分の一と木々の三分の一と、すべての青草が焼けてしまう。

 地球で起こった災害。実際に血の混じった雹と炎が地上に降り注ぎ、南アジアは崩壊した。ただし、本当に地上の三分の一が消え去った訳では無い。




 カス武器しか集まらず、それでも最強を求めてクエストを回し続けた翌日。


 まだやることが無い俺達は普通にクエストを回して遊んでいた。


 五大ダンジョンの中でゲームをやってるのって俺たちぐらいなんだろうな。そもそも常人は五大ダンジョンに潜ろうともしないだろうし。


 いや、今回に関しては俺も被害者なんだけどね?攻略するならもっとしっかりと調べて、色々と準備をしてから来るし。


 たった2人+一匹で難攻不落のダンジョンを攻略しようだなんで思いもしない。


 ちゃんと仲間もつれてくるよ。三人寄れば文殊の知恵とは言うが、人は多い方が何かと便利になるのだから。


「あ、位置ミスった」

「あ、1乙しちゃったね。珍しい」


 某モンスターをハントするゲームのエンドコンテンツで遊ぶ俺とリィズ。


 珍しく、俺が大剣を構える位置をミスって一撃で死んでしまった。


 ラグだな。ホストがリィズだから、偶にこういうのがあるんだよ。いきなりワープされると流石に対応できない。


 まぁ、これもマルチゲームの醍醐味だ。こういうラグやバグも楽しんでこそのゲームである。


「もう討伐しちゃうよ?」

「いいぞ。クリア出来ればそれでいいさ」


 もう終わりかけだったクエストなので、そのまま俺がキャンプに送られると同時にクエストクリア。


 1分ほどクリア画面を眺めた後、お待ちかねの報酬タイムに移る。


 素材は腐るほどあるから全部売り飛ばして、鎧玉だけ貰っておくか。後、結晶も。


「お?これはグレイちゃんどう?」

「ん?おぉ、中々いい武器じゃん。水属性ってのがイマイチだけど、結構強いぞ。刀匠三詰まりシロナガスだしな。最悪真打運用しなくても問題ない」

「真打入れたら火力出るかな?」

「紫ゲージが短いから倍率補正が短いけど、攻撃大が付くからありかも。と言うか、刀匠の護石持ってるの?」

「刀匠4達人9スロ3あるよ」


 エッグイの持ってんな。普通にそのお守り欲しいんだけど。


 欲を言えば達人14が欲しいけど、それは理論値だからな。でもほぼ理論値だよそれ。俺も持ってないぞ。


 刀匠4スロ3は持ってるんだけどね。第2スキルでいい感じのやつが出てきてくれないのだ。


「属性強化もつけられそうだな。あとは見切りも付けて火力が出る装備にしたら?」

「水双剣って何に使えるのかな?あまり使った記憶が無いんだけど........」

「グラビとかそこら辺かな。でもぶっちゃけ貫通弾でしばいた方が早いし、チャアクの方が楽しい。強走薬グレートとか使うから、物資の面で優しくないんだよなぁ双剣は」

「それは確かに。あのゴム怪獣をシバくの面倒なんだよねぇ」


 そんな事を話しながら、せっかく手に入れた準々ゴール武器なので使ってみようと装備をリィズと考えていると、ピタリとリィズの動きが止まる。


 あ、これは第三のラッパが来るかな?


「グレイちゃん、来たよ。見に行く?」

「せっかくだし見に行こう。観光気分で見に行っていいもんじゃないけども」


 俺はそう言うと、サランラップテントを出て空を見上げる。


 お、天使おるやんけ。おーい、お前も沼にハマらないか?


「天使ってもっとこう、かっこよかったり可愛いものだと思ってたのにね。ミルラが見たら起こりそうだよ」

「おっさんだもんな。もっと美人な女の人か、イケメンにしてくれればもう少し楽しめるのに」


 今から天罰を下す天使に向かって何を言ってるんだと、俺は心の中で思いつつプヲォォォォォォ!!と鳴り響くラッパの音を耳にする。


 第三のラッパは、”苦よもぎ”という名の巨大な星がすべての川の三分の一とその水源の上に落ち、水の三分の一が苦くなって多くの人が死ぬ。


 というもの。


 空を見ていると、確かになんかでっかい星が落ちてきている。


 もうその星で全てを押し潰した方が早いんじゃないか?なんでそんなに質量がありそうな星のくせして、やることが水を苦くする事なんだよ。


 星を降らせることができるのなら、隕石でも落とせ。あ、いや、俺が死ぬからやっぱりそのままでいいです。


「あれがニガヨモギだね。なんというか、でっかいコケみたい」

「あれが入った水を飲みたくは無いな。衛生面の問題で」

「グレイちゃんの水は綺麗だからね。と言うか、水じゃなくてジュースでも飲めばいいし」

「それを言ったらおしまいだよ。普通、ダンジョンに炭酸飲料を持ち込むアホは居ない。動きまくって炭酸が抜けるからな」

「確かに。開けた瞬間、火山の爆発みたいになりそう」


 ニガヨモギが空から落ちてきて、川の水が苦くなる。


 実際に飲むと死ぬと思うので、俺は近づくことすらせずに落ちてきた星を眺めるだけだった。


 そして第三のラッパは終わりを迎える。


 今日はこれで終わりかーと思っていると、続けざまにもう1人の天使が空から現れた。


「ん?」

「え?もしかして、また笛が鳴る?」

「あらま。第四のラッパも吹かれるのか。暫くは暗くなりそうだな」

「まぁ、暗くなったからなんだって話ではあるけどね。これが地球なら話は別だけど」


 プヲォォォォォォ!!と、第四のラッパも吹かれる。


 次の瞬間、この世界は確かに暗くなった。


 うん。暗くなっただけなんだけだね。それだけで特にほかが変わることは無いや。


 第四のラッパは、太陽の三分の一、月の三分の一、空の星の三分の一が打たれ、その分だけ昼も夜も暗くなってしまう。


 というもの。


 これが地球の世界で起こったら大変だ。重力とかそういうのが全部滅茶苦茶になって、地球は終わりを迎えることになる。


 あれ?そう考えるとこのダンジョンって結構やばいな?


 地球以外にも被害を齎して、人類を破壊するダンジョン。


 マジで赤騎士を倒してたら、地球が終わっていたかもしれないと思うと、このダンジョンの恐ろしさがよくわかる。


 だがしかし、残念なことにこの世界ではなんの意味も持たない。


 ただ、暗くなるだけだ。


「続きしよっか」

「そうだな。見たいもんは見れたし。あ、一応次のやつに備えてテントをブルーシートで覆っておこう」

「はーい」


 こうして、第三、第四のラッパも特に何事もなく終わるのであった。





 後書き。

 第四のラッパだけで地球が終わる可能性大。

 あと、趣味小説なので好きなゲームも布教するぞ‼︎4gこそ神ゲー‼︎(ソロでは集会所クリアできないけど)。

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