俺達は七月のジャックオーランタン
三合会の連中を月の裏側までぶっ飛ばしたりありつつも、俺達は目的地である研究所へとたどり着いた。
荒野の中にぽつんと浮かぶ研究所は、明らかに“何かを隠してますよ”と言わんばかりである。
寧ろ、よくこんな堂々としているなと思うほどに、怪しさ満点の施設だ。
「あの爺さん、一日で香港をぶっ壊したぞ。本当に同じ人間か怪しくなるぜ」
「500年生きているやつを人間として分類していいのか、些か疑問に思うけどな........それにしても派手に暴れすぎた。流石に正体がバレちまったぜ」
「裏社会じゃ爺さんの名前を知らない奴はいやしねぇ。それに、爺さんは再興した日本帝国の元住民となれば、俺達が攻勢に転じたのも分かったはず。今頃CHの連中は俺たちのことを死ぬ気で探しているだろうな」
「毎度毎度追われる見にもなって欲しいぜ。追われなかったことがない」
「俺のセリフだよそれは。どこにいても俺のケツを焼きたがるバカが多くて困る」
ネット記事を見ると、そこには廃墟となった香港のし衛星写真と防犯カメラに映っていたであろう爺さんの姿。
余程楽しい殺戮だったのか滅茶苦茶笑顔の爺さんと、隣で呆れた顔をしているミルラが乗っている。
生きた伝説、再び戦場に舞い戻る。
中々いい見出しを書くじゃないか
俺達が追いかけっこをしている間に、爺さんは香港を瓦礫の山に変えてしまった。推定されている死人は民間人含めて500万人以上。
たった一人でこれだけの数の人を殺したとなれば、ギネスブックにすら乗れるだろう。戦争に勝てば、名誉あるものになるかもしれん。
いや、世界最悪の殺人鬼として名前を残すだろうし名誉では無いか。
「ミルラから連絡が入りました。このまま北京を目指しつつ、全ての都市を片付けるそうです。バルカンだろうがCHだろうがお構い無しに暴れるそうなので、本格的にバルカン側からも狙われるかもしれませんね」
「ま、まぁ、ミスシュルカとの約束もあるし、バルカン側の戦力を潰してくれる分には問題ないか」
「寧ろ、殺しすぎて文句を言われそうねん」
「有り得そうだから困るな。今更何を言っても止まらんだろうから、諦めてるけど」
もうやりたい放題だな、このお爺さん。はっちゃけ過ぎて死なないように気を付けてね。
ミルラもあんなお爺さんについて行くなんて大変だな。それなりの時間バディをやっていたとしても、大変なものは大変なのである。
500歳近くになっても、刀振り回して笑うジジィが居たら連れてきて欲しいよ。まず、500歳まで生きている人間が存在しないだろうが。
「爺さん達の方は任せるとして、問題はこっちだ。こっそり忍び込むのとか無理かな?」
「パッと見無理だねぇ。相当厳重な警戒態勢を敷かれてるよ。機械に頼った警備だけじゃない。ちゃんと人の目も多くある」
「秘密の通路とかあれば別なんだろうが、あったらそこも監視されているはずだ。どう頑張っても見つかるだろうぜ」
「そうっすね。かなりしっかりとした警備体制です。しかも、対空施設までありますよ。空から侵入みたいなのも無理っすね」
「困ったな。正面突破以外手段が無いじゃないか」
俺はそう言いつつ、能力で具現化した双眼鏡を覗きながら施設を監視する。
うーん。何もわからん。なんか銃を持った怖い人たちが、ウロウロとしているのだけは分かる。
後、白衣を纏った人達がいるぐらいか。俺は別に軍の警備とかに詳しいわけじゃないから、どれだけ厳重な警備なのかとかは全然わかんないんだよな。
逆に、元軍人や郡に所属していた者達は正確にその警戒態勢の高さを理解している。
こういう時、元軍人と言うのは役に立つな。軍の知識が深い。
「どうする?今はかなり離れた場所から見ているから問題ないけど、これ以上近づくとバレるぜ」
「どうすると言われても、正面突破以外に方法がないならやるしかないだろ。技術はどうしても欲しいしな。主に、レイズの為にも。腱鞘炎で入院しましたとか、笑い話にもならん。神ですら鼻で笑うだろうぜ」
「ほんと、俺にとっては死活問題なのでお願いしたいです」
レイズ、この前契約書を書いていた時滅茶苦茶辛そうだったからな。
うちの組織はクリーンでホワイトな組織なのだ。部下を酷使する訳には行かない。
やっている事はブラックもブラックだが、それはそれ、これはこれである。
「正面突破か。私が足を引っ張るな。留守番していた方がいいか?」
「大丈夫だアリカ。1番足を引っ張るのは俺だから。それに、アリカ能力で色々とやってもらいたい事もあるから、弾丸飛び交う中に突っ込んで貰うぞ」
「本当か?やれることがあるなら頑張ろう。猛毒の霧でも出すか?それとも、もっとえぐいヤツをやるか?」
猛毒の霧ですらヤベーのに、それよりもさらにヤベー奴があるのか。
俺は軽くアリカの言っていることにに顔をひきつらせながらも、首を横に振る。
毒の霧と言うのは悪くないが、今回はその毒を無効化してしまう機械兵達もいる。
本当なら助けてピギー!!で全部終わらせたいのだが、研究所のデーターまでぶっ壊しそうで怖いので、それは出来ない。
ピギーは強いのだが、強すぎるのがマジで問題だよな。特に魔力関連の機械や道具に対してあまりにも強すぎる。世界を破壊するなら、ピギー一人で十分だ。
「今回は生物だけが相手じゃないからな。レミヤ、お前のお仲間もここにいるはずなんだろ?」
「恐らくは。そして、私達が襲撃をすれば間違いなく姿を現すと思います」
「現状、それに確実に勝てるのはリィズとローズぐらいか。後は、ジルハードが盾役になれるぐらいか?なら、3人には派手に暴れてもらおう」
「いいわよん。全部
「全員殺せばいいんだね?余裕だよ」
「俺の扱い、酷くねぇか?」
能力が盾役なんだから仕方がないだろ。ジルハードは、最前線で敵の攻撃を受け続けているのが1番お似合いなのだ。
能力名だって“アイアンマン”なんだぜ?ちょっと手からビームとか出してくれよ。それが出来なきゃ鉄の盾だ。
「3人が敵の排除。残りはサポートだな。それじゃ行くとするか」
「了解。何気に正面からカチコミとか言う捻りのない方法を取るのは珍しいな。大抵ボスが搦手を使うんだが」
「搦手を使う価値もないってことでしょ。いいじゃん、分かりやすくて」
「そうねん。殴って殺すだけ。実に単純明快だわん」
「俺はボスの護衛に回るっす。アサルトを用意しないと........」
「回復ポーションの用意は終わってるから、死ななきゃ直せるぞ。後は、好き勝手に暴れてくれ」
「私は皆さんのサポートに回ります。銃弾が後ろから飛んでくるので、くれぐれも射線上には入らないようにして下さいね」
なんともまぁ頼もしい仲間たちだ事。
やれることが正面突破しかないからという事でこのなんの捻りもない作戦を立てたのに、反対意見がまるででない。
仲間たちが優秀すぎると、ボスがマヌケでも組織って保たれるんだな。
今までもそれで何とかなっていたし、今回も何とかなるでしょ。知らんけど。
俺はそう思いながらタバコに火をつけると、レミヤに話しかけた。
今回は爆音で音楽を奏ながら殴り込みしてみよう。どうせバレるなら、ノリノリで行こうぜ。
「なぁレミヤThe Phoenixって曲知ってるか?」
「沢山ありすぎてどれだか分かりませんよ。バンド名を言ってもらわないと」
「fall out boyってロックバンドだ」
「........お、検索に引っ掛かりましたね」
あるんだ。相変わらずこの平行世界の摩訶不思議は分からんな。
あのバンド2001年に結成されているから、思いっきりダンジョン戦争の後の話なのに。
まぁ、あるなら丁度いい。戦争の、そして俺達にぴったりな曲をガンガン鳴らしてテンション上げていこうぜ。
俺ら最近悟ったのだ。
どうせやるなら楽しまなきゃ損。毎回頭を抱えるよりも、この世界と同じく狂っちまった方が楽しいんだと。
1年足らずで俺も染ったもんだ。だが、人とはなれる生き物。
俺はくよくよ悩むよりも、その流れに従った方がメンタル的に楽である。慣れちまえば、問題ない。
親父も言ってた。“慣れればそれが日常になる。早く慣れろ”と。
やはり、親の教えとは偉大だな。現に俺はこの腐れ切った世界になれている。そして、そのお陰で生きている。
人の死体を見てアブノーマルになる事が無くなっているのだ。
レミヤと会話をしていると、ジルハードが会話に入ってきた。
「その曲知ってるぜ。確か、USAのバンドが歌ってた曲だろ」
「そうだ。ロックな時代を忘れた奴らに向けて、不死鳥の如く甦れって歌った曲だな。だが、歌詞の内容は皮肉にも俺たちに合っている。どうせなら、ノリノリでカチコミに行こうぜ」
「いいね。俺もそっちのノリの方が好きだ。やるからには狂って楽しまなきゃな。ましてや、今回は真正面から堂々と行くんだ。格好つけた方が、様になるってもんだぜ」
「だろ?|put on your war point《戦の準備をしろ》!!いい歌い出しじゃないか」
「ハッハッハ!!確かにそうだな!!」
この世界は狂っている。
そんな世界で生きる為にはどうしたらいいのか。
一つ、その狂気に抗うか。
一つ、流れに身を置いて神に祈るか。
「俺達は七月のジャックオーランタン。時代遅れの
一つ、同じく狂気に落ちるのか。
戦の準備は整った。不死鳥の如く蘇る日本帝国の首を取れるもんなら、取ってみやがれ。
【fall out boy】
当初はバンド名が決まっていなかったが、2回目のライブの終わりにファンにバンド名を尋ねたところ、誰かが「フォール・アウト・ボーイ!」と叫んだため、現在に至る。それは、アメリカのアニメ『ザ・シンプソンズ』の登場人物の子供達が夢中のマンガ「フォールアウト・ボーイ」(Fall out Boy)に由来する。ザ・シンプソンズの作者マット・グレイニングに訴えられると恐れていたそうであるが、名付け親もファンの1人だった。
有名な曲としてはCenturiesやSugar We’re Going Down、The Phoenixなど。余談だが、完全に私の趣味で出したバンド名。かなり好き。The Phoenixだけでも聞いて欲しい。
後書き。
趣味全開小説だから、布教もします。ぜひ聞いてみよう‼︎
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