海軍戦力(サメ)
仲間達にピギーを慣れさせる訓練でも行おうかと本気で考えながらやってきましたは、クレーターレイク国立公園。
現在は立ち入り禁止区域に指定されており、ゴリアテ道場の関係者や特別な人ではないと入ることが出来ないとされている。
そんな五大ダンジョンの様に人の出入りを制限されているこの場所に足を踏み入れた俺は、そのあまりにも綺麗な湖に少しだけ興奮していた。
おぉ!!綺麗だなー!!
「クレーターって名前がついてんのに、隕石が落ちてきた訳では無いってのがなんと言うかな........どうせなら隕石でも落ちててくれりゃその跡地として見応えがあっただろうに」
「何を言ってやがるジルハード。こんなにも綺麗な湖を見られるのはそうそうないじゃないか。俺は意外と楽しいぞ」
「ボスって、こういう時割と純粋に楽しむよな........」
そりゃせっかく来たんだから、楽しまなきゃダメだろ?ぶっちゃけただの湖だったとしても、その景色を楽しんでこその観光である。
テンションを上げるんだよ。自分の中にある感情を強引に引き出して楽しむのさ!!でなければ、つまらない男になってしまうぞジルハード。人生は楽しんだもん勝ちなのである。
「ん、多くの気配がある。魔物だね。確かに一般人が入ったら危ないかも。私達なら余裕で殲滅できちゃいそうだけど」
「この湖の下にダンジョンがあるって言う話だな。しかも、この湖の中には魔物がわんさか湧いている。あぁ........毒を流し込んでぶち殺してみたいな。一滴垂らすだけで二度と人が近づけないような毒を流し込んでもいいかな?」
「ボスに迷惑がかかるので、やめた方がいいですよアリカ」
「わかっているさ。流石の私もそこら辺は弁えている」
サラッと俺の後ろでとんでもない事を口走るアリカは、そう言いながらも試験管の中に何やらヤベー色をした液体を流し込んでいる。
暇さえあれば毒やポーションを作る変人なので見慣れた光景ではあるのだが、今の発言の後だとどう見ても毒物にしか見えない。
大丈夫だよね?その真っ黒な液体は一滴雫を垂らすだけで世界を壊さないよね?
この組織の中で一番世界を滅ぼせる可能性を持っているのは、実はアリカなのではないかと言う事実に気づいてしまいながらも、俺達はゆっくりと歩きながら湖を一周していく。
クレーターレイクの湖の中には小さな島があり、そこには戦った跡などが残っていた。
多分、門下生はあそこに置き去りにされるんだろうな。湖の隅の方にあるから逃げることも出来るだろうが、逃げたら俺の隣でマリーと昔話をするシャールにぶん殴られそうである。
「昔と変わらないわねん。ダンジョンから魔物が溢れてきているとは言っても、大惨事になるほどでは無さそうだわん」
「毎年まびいているからね。懐かしいな。昔、父さんにあの島に投げ飛ばされて、一日中戦ってたっけ。今じゃ、僕がそれをやる側だから大変だよ。けが人は毎年でるわ、その手当もしなきゃならなわで、忙しいったらありゃしない」
「それも含めてお仕事よん。私は面倒で投げ出しちゃったけど」
「あはは。マリーは自由にすればいいんだよ。この道場は僕が自分の意思で引き継いだんだし、結局は僕の責任さ」
そんなことを話する兄弟の話を聞きながら歩いていると、ザパーン!!と大きな音が湖から聞こえてくる。
そちらに目を向けると、くっそデカいサメがシャチのような見た目をした魔物を口にくわえた宙を飛んでいた。
ジョーズだ!!ジョーズがいるぞ!!
「見ろよジルハード。今の時代、サメも湖に進出するらしいぜ。ジョーズが本格的に人を狩りに来たんだ。いつの日か、そこら辺のプールにサメが出没してもおかしくないな!!」
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ。B級映画だってもう少しマシなシナリオを考えるぜボス。つーか、あのクソでかいサメを見てよく盛り上がれるな。肝が冷えないのか?」
「ニーズヘッグの方が怖い」
「ボス。それを言ったらおしまいだ。神の敵とされた邪神と、湖の中でしか生きられないサメを比べちゃいけねぇ。そいつは、アリとゾウ、どっちが強いのか議論しているようなものだ」
そんなこと言ったってニーズヘッグの方がヤベーじゃん。もっと言えば、俺の右手に宿るやつの方がやべぇ。
世界を滅ぼしかねない邪神と、世界を三度滅ぼした存在を見てきた俺からすればらあのサメはUSJに出てくるジョーズのアトラクションのサメに等しい。
違う点は、場を盛り上げてくれるクルーが居ないぐらいだ。
どうせなら襲ってきてくれないかな。20メートル近くもあるサメに人類の英智たる銃は効くのか?
で、そう思った時に限って本当に奴は襲ってくる。
ふと、海面に視線を向けると、湖の中から目が合った。
........ハローシャーク。お前はいい子だからそこで見てるだけにしましょうねー。
「ボス。見られてね?」
「見られてるね。熱烈な視線を感じるよ。握手でもしてあげた方が喜ぶかな?」
「バカ言ってねぇで隠れろよ。食われるぞ?アレックス・キントナーの様に」
「そいつは勘弁願いたいねぇ。懸賞金をかけてくれる母親もいないってのに、誰が敵討ちをしてくれるってんだよ」
俺がそう言った瞬間、サメは湖から飛び出して俺たちを食い殺そうと大口を開けながら宙を舞う。
迫力満点の4DXだ。匂いも音も本物だし、本当に食われちまいそうだな。
俺はそんな呑気なことを思いながら能力を行使。
サメとは、所詮海の生き物であり地上で動くことはほとんど出来ない。そして、空を飛ぶサメなんざいい的でしかない。
口を大きく開けてくれているならば、そこにありったけの火薬をプレゼントしてやろう。お礼?そんなの要らないさ。
俺はワイヤーを使ってサメの体を空中で縛り付けると、まずはヒレの動きを封じる。
そして、尻尾に向かってワイヤーを巻き付けて地面に突き刺すと同時に、手作りパイプ爆弾を口の中に向かって放り込んだ。
更に、大量の石を口の中に詰め込めばその重さによってサメは狙った場所より手前に落ちてくれる。
口が大きくて助かるね。たくさんの石を詰められるから、それだけで地面に落とせる。
ドシーンと地面に落ちたサメ。
さて爆発でもするかと思ったら、サメがつぶらな瞳でこちらを見ていた気がした。
「グレイちゃん、殺す?」
「いや、ちょっと待て。なんかプルプルと震えて泣いてない?」
「........俺にはわからんぞ。普通のサメにしか見えん」
「........マリー、彼はすごいね。この状況の中で凄まじく冷静だ。と言うか、あのサメの口は鉄でも噛みちぎれる程に強靭で、軍用魔弾ですら弾くほどの皮のはずなんだけど........」
「物を噛む時と言うのは、それに適した口の大きさがあるでしょう?あのサメは、多分大口を開けすぎた所に石を詰め込まれて、噛み砕けなくなってしまったのよん。お茶目ねん」
「それを分かっていて彼は石を詰めたのか。こんな無力化の方法もあるんだな........なるほど。たしかにマリーが自分より強いという理由がわかった気がするよ」
へー、そんなんだ。このサメ、鉄とかもバリバリ行けちゃうタイプのサメなんだ。
大口を開けすぎて、そこに石を詰められたから力が出ない?知らないよそんなの。
そもそも狙ってないし。
基本的に、口とは噛むよりも開ける時の方が力が必要となる。だから、石が噛み砕かれたらワイヤーとテープでぐるぐる巻きにしてやろうかと思ったのだが、その必要すら要らなかったようだ。
で、このつぶらな瞳で俺を見つめてくるサメはどうしようかね。
殺す?いやでも、なんかこのサメとは仲良くなれそうなんだよなぁ。ほら、魔物の中にも話がわかるやつとか居るじゃん。
俺はサメの近くに立つと、目線を合わせる。
うーん。話が分かりそうな顔をしてる。防弾チョッキ代わりになってくれているスーちゃんと護衛のナーちゃんも心做しか“こいつ話がわかるよ!!”と言った感じの雰囲気が出ているので、少し話してみようかな。
「もう俺達を食べない?」
「フゴ........」
「食べないならこの石と、飲み込んだ爆弾は解除してあげる。食べるならここで殺す。どうする?」
「ふごご........」
多分食べないって言ってますね。なら、解放してあげようか。
俺は石だけを解除すると、口が開放されたサメは俺をじっと見て身体をモジモジとさせていた。
何この子、可愛いじゃん。そう言えば、日本に海軍とか居なかったよな。戦艦とか作るぐらないから、海にいる魔物とかを雇った方が早くね?
これだけ大きな姿をしているなら、背中にも乗れそうだし泳ぐ速度も戦艦よりも断然に早そう。
砲撃は........まぁ、人力で頑張るか、ドワーフに設計してもえばいいもんな。
よし決めた。この子、日本の海軍大将に任命して日本国の海の平和を守ってもらおう!!
俺はワイヤーも全て外すと、サメに手をおく。
サメは抵抗することも無く、特になにか暴れる訳でも無く俺をじっと見ていた。
「君さ、うちの国来ない?ご飯の面倒とか見てあげられるよ」
「フゴ........?」
「俺、最近国を作ってさ。海軍とかないわけよ。そこで閃いたんだ。もういっその事海の魔物に守ってもらった方が早くね?って。で、ご飯の面倒とかは見てあげられるだろうから、うちに来なよ。多分、そっちの方が楽しいぜ?」
「フゴー?」
「ん?1人だけじゃないのか?いいよいいよ。仲間たちを読んできてくれたら、全部面倒を見てやろう。俺が居ない時も守ってくれると嬉しいな」
「フゴ」
でっかいサメは物分りがいいのか“ちょっとまってて”と言いたげにのそのそ動いて湖に戻ろうとする。
手伝ってあげるか。
「おい、ジルハード。ちょっと手伝ってやれ」
「........俺は何故ボスがこんなにも平然としているのか理解ができないぞ。つい30秒前に殺しに来てた魔物と仲良くなってんだ?いや、もう慣れたけども」
「グレイちゃん、魔物と仲良くなるの上手だよねぇ。スーちゃんもナーちゃんも仲間にした時はこんな感じだったっけ?いや、さすがに殺しには来てなかったか」
「なんというか、話が通じそうなやつだったからな。ほら、最大の護身術は、殺しに来た相手と仲良くなることって言うじゃん?」
「どの口が言ってんだ?たいていの場合は弾く癖して」
俺が魔物と仲良くなる場面を見ているジルハードとリィズは“もう慣れた”と言いながら、サメが湖に戻る手助けをしてあげる。
サメはジルハードとリィズに礼を言うかのように、軽くゴツゴツとした肌を2人にこすり付けながらウンショウンショと、ヒレを使って後ろへバックしていた。
「以前、ナーちゃんを仲間にした時も思いましたが、ボスって一流のテイマーだったりします?」
「いや?そもそもテイマーですらないし。なんというか、仲良くなれそうだったから仲良くなっただけだしな」
「バグってますよ距離感が。どう考えてもおかしいでしょ。つい数秒前まで私たちを食い殺しに来てたんですよ?」
「そう言われてもね........仲良くなれそうなものは仲良くなれそうなだけだし。ナーちゃんとかそういうかんで仲良くなったし」
「ナー」
「ま、まぁ。ボスの奇行は今に始まったことでは無いですし、諦めますか。と言うか、本当に戦力とするのですか?」
「え、当たり前じゃん」
サメ艦隊とか作ったらかっこよさそうじゃね?しかも、こんなジョーズの倍近い艦隊ならその姿は壮観だと思うよ。
しかも、ちゃんと人の言葉を理解しているし。
何より、ちょっと可愛い。アレだ。IK〇Aのサメのぬいぐるみみたいな感じがして。
俺は、どうせならもっと色んな種類の魔物でも集めて、国防を任せるか。と頭の悪いことを考えながらサメを湖に戻すのを手伝うのであった。
後書き。
コミュ強すぎるグレイ君。ちなみに、私はIKE○のサメが好きなのでサメちゃんに酷いことはできません。抱き枕(130センチ)も持ってるからね‼︎毎日抱き枕にして寝てるからね‼︎
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