グダニスクに帰還
世界樹に存在する国々が一つに纏まり、新たな国を形成する事が決まった。
そして、その中には世界樹の加護を新たに授けられた日本の大陸も存在し、その全てをひっくるめて“日本帝国”と呼ぶ事になったのである。
エルフの国もダークエルフの国も、ドワーフの国もタイタンの国も。
全ての国が“街”として生まれ変わり、日本帝国の一部となる事が決まったのだ。
やったね。人口が九人から何十万人に膨れ上がったよ。
あまりにも動きが早すぎて正直困惑しかないが、俺達にとってはメリットしか無いので断る理由はない。
日本の発展の為に皆が力を合わせ、働いてくれるのだ。これを機に税率や種族間での法律なんかも一気に制定し、大きな変化を生み出すという。
そして、日本の領土は様々な種族が溢れる街にするという事が決まり、早速領土の発展の為にドワーフ達がやって来ていた。
彼らが俺達に力を貸したのは“技術の進歩”の為。新たな世界を見られるとなれば、皆行きたがるのだろう。
これは早めにこの世界の技術を教えないと反乱が起きそうだな。一応、自身が超高性能機械であるレミヤがある程度の知識を持っているため、色々と教えていたのだが、それだけでは足りない。
とにかく多くの技術提供をすれば、この国の発展にも繋がる。俺も持ってきたは言いものの、全く使わなかった軍用のアサルトライフルはをドワーフ達にくれてやった。
みんなびっくりするぐらいテンションが上がっててちょっと怖かったな。一旦俺達はこの国を離れるが、戻ってきた時にどんな発展を遂げているのか楽しみだ。
ちなみに、建前上日本の領土は俺の管轄になっているが、政治やらなんやらはサッパリなので王達に任せてある。
先ずはこの国を世界中の人々に認めさせなければならないという旨の話を伝えたら、快く了承してくれた。
話が分かる人はいいね。グダニスクとは大違いだ。あっちは頭がマリファナで埋め尽くされた
そして、そんなイカれた街へと今から帰る。
あぁ、なんか急にお腹が痛くなってきた。この平和な国でスローライフしてたらダメですかね?ダメですか。そうですか。
「それじゃ、俺達がいない間この国を頼んだよ。言葉についてはこれで勉強してくれ」
「ふむ。公用語も二つにしないとダメそうだな。ま、この世界のもの達は皆賢い。このぐらいはどうと言うことも無いだろう。それと、防衛については気にせんでいいぞ。何せ、世界樹様が直々に加護を与えた土地なのだからな。ニーズヘッグ程の強大な者でない限り、僅かでも邪悪な考えを持つものは入ることすらできん」
「そうなのか?ともかく頼んだよ」
金色に輝くダンジョンゲートの前で、俺と王達が話し合う。
一旦お別れか。まだ1ヶ月ちょっとしか過ごしてないと言うのに、濃厚過ぎて軽く10年は居た気分になるな。
というか、世界樹の加護ってそんなに強力なものなのか。なんで世界樹はそんなに強いのにニーズヘッグに食われてたんだ?
アレか。ニーズヘッグは世界樹特攻でも持ってたのか。随分とピンポイントな能力を持ってんな。
「ダークエルフ達もこの土地の開発に尽力しよう。お前達が帰ってくる頃には、面白いものが見られるはずだ」
「儂らも頑張るとしよう。レミヤ殿から教わった知識と、グレイ殿がくれた模型で色々と再現出来そうなのでな!!技術的革新が起こるぞ!!この世界はさらに豊かになるはずだ!!」
「念の為、防衛は我らがやるとしよう。なに、ニーズヘッグよりも強くなければ早々負けるとこは無い」
見送りに来た王たちも次々にそう口にすると、笑顔で手を振る。
最初にあった頃はあれ程警戒していたと言うのに、凄まじい手のひら返しだ。
人ってたった1ヶ月ちょっとでこんなにも変われるもんなんやなって。
「じゃ、俺達はこの国の為に外で戦ってくるよ。中は任せた。また内輪もめして内戦でも起こそうものなら、俺達がお前らを潰すからな」
「フハハハハ!!それは恐ろしすぎて身が震えるな!!グレイ殿の持つあの力を前に、逆らう気などない!!」
「あんなん食らったら誰も逆らえんだろ。なんなんだアレ」
「技術の為ならば大人しくするさ。というか、ドワーフは割と温厚だから問題ないの」
「力あるべきものに従うのが世の常。それは無い」
本当か?つい1か月前までまともな交流もしてこなかった奴らがよく言うぜ。
俺はそう思いながらも、ジルハードが手配してくれた飛行機に乗り込む。
この飛行機とその運転手は、俺達がこのエルフの森に来た時にもお世話になった運び屋だ。
エルフどころか、見たこともない種族達に囲まれて物凄く居心地が悪そうだが、それでも仕事なので我慢してくれているのがよく分かる。
君、うちの国で働く?今なら給料とかも沢山あげられるよ?福利厚生だって付けちゃう。
これから有能そうなやつはうちの国に引き抜きでもしてみるか、そんな事を思いながら空へと旅立つ。
どうせまたすぐに帰ってくるけど、一旦お別れだ。
故郷は取り戻したし、次はこの国を世界に認めさせなければならないわけなのだが........どうやってやるんだろう?
アーサーにでも聞いてみるか?
「なぁ、運転手さんよ。外の世界は今どうなってるんだ?第三次世界大戦でも起こってるんかね?」
「まさか。相変わらず代わり映えのない世界でしたよ。1週間ほど前までは」
「やっぱりバレてる?」
「五大ダンジョンは各国が常に監視をして異変がないかを詳しく調べています。そして、ダンジョンのゲートが金色になった。政府も忙しく動けば、マスコミが聞きつける。情報規制を敷く前に速報を流された為、今や世界は大混乱ですよ。事実確認すらも取れてないのですからね」
「........あぁ、なるほど。つまり、あんたはこのダンジョンが本当にクリアされたのかを確認する役目も担っていた訳か。どこの国からだ?POL(ポーランド)か?」
「........鋭いですね。正しくそのPOLから貴方々の回収及びダンジョンがクリアされたかの確認をお願いされましたよ。マジで死ぬか覚悟しましたよ。まだハンス・ウルリッヒ・ルーデルに飛行機で追われた方がマシだと思ってましたね」
「アッハッハッハッハッ!!そいつは難儀だったな!!それで、確認してみてどうだった?」
「バカでかい巨人に小人のような人。御伽噺で読んだことのある耳の尖った人に褐色肌の美人。そして、そんな中で楽しそうに笑う世界最悪のテロリスト。ここは地獄ですかね?タチの悪いジョークですら、もう少しマシなことを言いますよ」
首を横に振りながら、呆れたように呟く運転手。
こいつ、かなりメンタル強いよな。
普通クリアされたかどうかも怪しいダンジョンに飛行機で飛んでくるか?しかも、相手は五大ダンジョンだぞ。
「こいつ、凄まじい精神をしてるな。俺じゃ無理だ」
「俺もっす。仕事を受けるフリして高跳びしますね」
「あんた、ウチで働く?この国専属の運びやとして雇おうか?」
「いや、いいっすわ。俺は何かに縛られながら空を飛ぶのが好きじゃないんで」
「あ"?グレイちゃんの提案を何断ってんだコラ」
「リィズ、ストップ。ここで運転手をぶっ殺したら俺達までパラシュートの無いスカイダイビングをする羽目になる。それに、俺はこいつが気に入った。面白いじゃないか」
「........むう。グレイちゃんがそう言うなら」
「アハハハハ!!死なずに済んだっすね!!儲け儲け」
こいつ、リィズの殺気を受けてもなお笑ってやがる。メンタル化け物かよ。まじですげぇな。
俺は、この運転手の底知れないメンタルの強さに驚きながら、久々の空の旅をゆったりと過ごすの出会った。
暇つぶしの為にと映画を見ようとしたら、何故かトランスフォーマーがあってびっくりしたけど。
あ、好きなの?いいセンスしてるね。
【シーランド公国】
北海の南端、イギリス南東部のサフォーク州の10 km沖合いに浮かぶ構造物を領土とする立憲君主制の国家(ミクロネーション)。創設以降、シーランド公国の国家承認を明示的に行った国は2023年12月現在、存在しない。
国際法上、国家形成の大きな要因として領土が挙げられており、大陸の一部ではなく建造物であるこの国は国として認められていない。ちなみに、こちらの世界にも存在してはいるがやはり未承認国家である。
映画トランスフォーマーの鑑賞会をしながら空の旅をする事7時間。
今回も無事にフライトを終えた俺達は懐かしき故郷(1ヶ月ちょっとしか経っていない)、グダニスクの街へと帰ってきた。
自然に満ちた爽やかな空気とは違い、血と硝煙の匂いが混じるこの匂い。
あぁ、懐かしいねぇ。帰ってきても全く安心できないどころかむしろ命の危険すらあるという点が。
今この瞬間、どこからか狙撃されてもおかしくない。
それが、このクソイカれた街なのだ。もう国に帰りたいんだけど。
「........まさか本当に成し遂げてくるとはな。私が乗った船は泥船ではなく金の船だったという訳か」
「よぉ、ミスシュルカ。随分と疲れた顔をしているな。それはそうと、金の船も沈むだろ」
呆れてものが言えない顔をしながら、シュルカは葉巻をふかす。
正直、生きて帰ってくるとは思ってなかったのだろう。だが、なんかうまく行って帰ってきたのである。
目の上のたんこぶが死ななくて残念だったなぁ!!見ての通り五体満足所か、かすり傷すら着くことなく帰ってきましたよー!!
「死ななくて残念だったか?」
「まさか。人類が500年という歳月を掛けてもなお、成し得ることが出来なかった功績を称えずして“死ねばよかった”とは思わんよ。自らの力で国を取り戻したと言う点においては、尊敬の念すら覚える。我々も目指した場所だからな」
「そうか?その割には喜んでいるように見えないけどな」
「あぁ。貴様に尊敬の念を覚えるのは間違いないが、
あぁ、なるほど。POLは俺達から利益をしゃぶり上げたいという訳か。
うーんでも、今からUSAに行きたいんだよね俺たち。
となると、交渉事が得意な誰かに任せた方が早いか?
「レイズ、お前、
「いや?別にこっちに残ってもいいっすよ。でも、出来れば護衛の方を誰か残して欲しいっす。具体的にはPOLへの牽制になるような人物が」
これだけで意図が伝わるとは話が早い。
やはり持つべきは優秀な部下だな。
「なら爺さんかな?頼めるか?」
「フォッフォッフォ!!我が国の利益を不当に吸いあげようとする奴らを皆殺しにすればいいのじゃろう?おまかせあれ。この国を塵の大地にしてやろうぞ」
いや、しなくていいから。
何かと毎回面倒事を起こすレイズだが、エルフの森の攻略時はとても活躍してくれたしな。
今回もそれに期待しよう。
「そうだな.......この世界の技術や資源をできる限り引っ張り出しつつ、こちらからは世界樹の世界でしか取れないものを高く売りつけてやれ。POLには借りがあるから、少しだけ良心を加えてもいいよ」
「わかったっす。とりあえず、今国に必要なものを優先して引き出せるようにしてみるっす。こちらから出せるものが何か分かるっすかね?」
「私が採取したものがある。それを使って上手く交渉してくれ。効力や名前、その他もろもろの情報がのったデータもくれてやるから、頑張れよ」
「了解っす。アリカも楽しんで」
「........楽しめるもんなのかねぇ?」
こうして、レイズと爺さんは今回の旅では居残りということになるのであった。
ちょっと不安だが、まぁ、爺さんがいれば死ぬことは無い。最悪POLを潰してもいいよ。
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